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「黒い画集 あるサラリーマンの証言」 [映画]

kuroigashuarusalaryman.jpg
〔1960年/日本〕


サラリーマンの小林桂樹は、
仕事も順調、
妻と2人の子供にも恵まれ、
順風満帆の人生だ。
しかし、彼には秘密がある。
同じ会社の事務員・原知佐子と不倫の関係なのだ。


仕事が終わると小林は、
新大久保の原のアパートに行き、情事を重ねる。
その夜も、全てがいつも通りのはずだった。
ところが、原のアパートを出て少し行った所で、
自分の家の近所の男・織田政雄とバッタリ会ってしまい、
思わず会釈してしまう。


「なぜ知らん顔しなかったんだ」
小林は悔やむ。
そして数日後、会社に刑事が訪ねてきた。
なんと、織田が殺人事件の容疑者として逮捕されたが、
その日、小林と会ったと供述している。
本当に織田と会ったのか?と。


自分が証言しなければ、
織田は死刑になってしまう。
しかし、証言すれば、
原との関係が晒される事なる。


保身のため、小林は、
「織田には会っていない」、と証言する。
誰に何度聞かれても、
「会っていない」と・・・。





松本清張さんの短編小説の映画化。


原作からして、大変に面白く、
何度も読んでしまうので、
映画もつまらないはずがない。


不倫をしているサラリーマンが、
不倫相手のアパート近くで、
顔見知りの男に会うという、
絶妙な設定。
こういった、時間や場所の微妙な差で、
主人公が窮地に追い込まれるのが、
松本清張さんらしく、
素晴らしい。


具体的な地名もリアル。
不倫相手のアパートが新大久保。
殺人事件が起こったのが向島。
そして、彼が嘘の証言をした、
その日は映画を観ていたという渋谷。
(さらに原作では、
 主人公の住まいは大森、
 会社は丸の内)。


向島で起こった殺人事件の容疑者が、
犯行時刻に、本当に新大久保にいたとするなら、
絶対に犯人ではない。
この距離感が何とも言えず良い。


それにしても、
主人公が咄嗟に、
容疑者に会わなかったと言ってしまった事が悔やまれる。
たしかに、大森に住んでいて、
丸の内に勤めている人が、
会社帰りに新大久保などは、
よほどの用事がない限り行くことはないだろうが、
何か、適当な事が言えなかったのだろうか。
「韓流ショップに行こうとして近くまで行ったけど、やめた」とか(笑)。


現在、不倫をしている方は、
こういった時の為にも、
愛人の家の近くにあるお店の名前でも、
何軒か覚えておいたほうがいいですな(笑)。


これ、今だったら、
街中にあるカメラのおかげで、
すぐに容疑が晴れるのに、とも思う。
容疑者が新大久保にいたと供述したなら、
駅でも、コンビニでも、パチンコ店でも、ガソリンスタンドでも、
それらに設置されたカメラの一つにきっと、
姿が映っていると思うし。


その後も、色々あるのだけれど、
主人公はいつも「映画を観ていた」と言って、
刑事に怒鳴られる。
「あんた、いつも映画映画って」と。


それには笑ってしまった。
私も同じ事を言われそうで。
でも私の場合、
本当に映画館にいる確率が圧倒的に多いのだから、
仕方がない(笑)。


評価 ★★★★☆

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裏・市長

あぁ、これは素晴らしいレビューだ・・・。

失礼ながら、あまり大きな声では書けませんが、
青山実花さんの記事なんていつも、
読んでるフリして流し見ですよ!。
人生はそんなに長くないもの!。

ところが今日のはすばらしい!。
思わず二度見!エスカレーターで偶然、
女子高生のパンツが見えてしまったぐらいに二度見!。

すごいな!原作小説も読んでるのな!。
映像作品と原作との比較レビューしてる!。
ひとつの作品を様々な角度の視点から
見てやがる!すばらしい!。

伊達に人生において、トイレに入る時間より、
映画館の暗闇にいる時間のほうが長いだけの
ことはある!。

ただ、人を殺したくなったらアリバイだけは
しっかり作っておいてくださいね。
「あんた、いつもいつも映画だ、試写会だと・・・」。

刑事じゃなくても怒鳴りたくなります。

by 裏・市長 (2018-12-18 22:16) 

青山実花

裏・市長さん
コメントありがとうございます。

まぁ、裏・市長さん、
一体どうなされたのですか?

突然、わたくしのブログを
そんなに褒め出すなんて。

もしかして、
直球の嫌がらせは飽きたので、
ほめ殺しという作戦ですか?

それとも、裏・市長さんのブログのコメント欄に、
褒め返しをしてほしいという
お気持ちの表れなのでしょうか。

分かった、分かりましたわ。
今後は、思いっ切り褒めコメントを書きます。
それでよろしいかしら。


わたくしも、殺人の際は、
アリバイだけはしっかりしておこうと思っております。
大和高田市で起こった殺人事件を
わたくしのせいにされないように、
常に、新宿の映画館のチケットを、
持ち歩くようにしております。

by 青山実花 (2018-12-22 16:29) 

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