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「麒麟の翼 劇場版・新参者」 [映画]

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〔2012年/日本〕


東京・日本橋の翼のある麒麟像の下で、
サラリーマン・中井貴一の刺殺体が発見される。
中井は、別の場所で腹を刺され、
そこから8分間も歩いて、麒麟像の下で力尽きたのだ。


緊急配備の結果、
現場近くに潜んでいた不審な男・三浦貴大が発見されるが、
三浦は警察官との格闘の末、道路に飛び出し、
トラックにはねられ、意識不明の重体となってしまう。


三浦は数か月前、中井が部長を務める工場で派遣切りにあっており、
さらに、中井のバッグを所持していた所から、
犯人に間違いないと思われた。


しかし、事件にもっと奥深い物を感じた刑事・阿部寛は、
コンビを組んだ溝端淳平を引き連れ、
他の刑事たちとは全く別の視点で、
捜査を進めてゆく。


結果、次第に分かってくる、
中井の会社の労災隠しと格差社会、
そして、中井の息子の中学時代の出来事。
それらが絡み合い、
事件は全く別の様相を呈するようになる・・・。





原作未読。
「読んでから観るか」
「観てから読むか」
それはどちらでも全く気にならないが、
この本に関しては、図書館の予約が出遅れてしまって、
まだまだ、あと80人待ち(笑)。


真犯人が誰なのかというのも、もちろん気になったが、
それより、色々辛い場面が多い。


一番辛いのは、
中井貴一の息子の、中学時代の出来事。
もう、ここに書くのも嫌だ。
溜息しか出てこない。


その事を知った中井の苦しむ気持ちと、
その後の行動が胸に沁みる。
息子を思う父の気持ちが、
こちらにも痛いくらい伝わってくる。


それから、
同棲する三浦貴大と新垣結衣の若いカップル。
2人は施設出身という設定だが、
現代の格差社会を象徴するような生活をしている。


派遣切りにあった工場での三浦の扱いも酷いが、
その後、仕事を探しても、
中々思うようにいかない焦り。
愛し合う2人だけれど、
新垣は三浦を追い詰めるような事を言ってしまい、
事件を誘発したのは自分かと悩む。


ただ、2人は確かに金には困っていそうだが、
部屋には結構、雑多な物が置かれ、
(家具などは手作りらしいが)
アクセサリーを身に付け、
ケータイは必ず持っている。
なんだかんだ言っても、
まだまだ日本は裕福な国なのではないかと、
ちょっと思ったりもする。


犯人の動機が弱い気がする。
何も人を殺さなくたって、って。
ああなってしまった以上、
腹をくくって、
関係者全員を集めて、
話し合って、今後の対応を考えれば、
なんとかなりそうなのに。


もちろん、それを言ってたら、
世の中に犯罪なんて一つも起こらないんだろうけど。


評価 ★★★☆☆

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「自由学校」 [映画]

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〔1951年/日本〕


佐分利信は、現在の生活に疑問を持ち、
「自由がほしい」と考え、
妻・高峰美枝子に内緒で会社を辞めてしまう。


それを知った高峰は激怒、
大喧嘩の挙句、佐分利は家を出てしまう。


佐分利は、偶然知り合ったホームレス・東野英治郎の、
橋の下の住処に連れていかれ、
そこで生活するようになる。


帰ってこなくなった夫に不安を覚えた高峰は、
夫の伯父の家に相談に行くが、
高峰が夫に出て行かれたと知ると、
伯父の友人・清水将夫や、夫の甥・佐田啓二や、
近所の男・笠智衆などが、
盛んに彼女を誘惑しようとする。


佐分利は無事に帰ってくるのか。
夫婦は元に戻るのか。
自由とは何なのか・・・。





タイトルだけだと、学校物か何かと勘違いしそうだが、
当時の思想や風俗を描いた、
ちょっと変わったコメディ。


一番強烈なのは、佐分利信の甥を演じる佐田啓二。
彼が話すのは、なぜか女言葉。
今流行りのオネエみたいだが、
ゲイではないようで、
ナヨナヨした態度で、
「おばさまぁ、おばさまぁ、ボク、おばさまが大好きなんですぅ」と、
ずっと高峰美枝子の後を追ってくる。


そういえば、小津安二郎監督の「東京暮色」でも、
有馬稲子を妊娠させる男が、
こんなタイプだったと記憶している。
現代にはちょっといない男の子だが、
当時は、こんなのが流行っていたのだろうか。


自由を求めて家を出た佐分利だけど、
そういう意味では佐田が一番自由。
「男は男らしく」の枠にとらわれず、
まだ大学生という身の上もあって、
好き勝手している。
まぁ、卒業したらどうなるか分からないけど、
選ぶ職業にもよるだろうし。


笠智衆にも驚きだ。
彼は高峰を力で自分のものにしようとするが逃げられる。
そんな笠さんを見るのもショックなのに、
キレて、その辺にある椅子なんかを
ぶん投げたりしている。
今まで観た笠さんのイメージが変わってしまう(笑)。


16日に亡くなられた淡島千景さんが、
佐田の婚約者の役で出ている。
別に狙って借りたわけではなく、
偶然なので驚いた。
とにかく元気な女の子で、
やっぱりちょっと変わっている役(笑)。
若くて可愛かった。


評価 ★★★☆☆

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「J・エドガー」 [映画]

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〔2011年/アメリカ〕


ジョン・エドガー・フーバー(レオナルド・ディカプリオ)は、
FBIを創設した男として名を馳せ、
50年間もトップに君臨してきた。


彼は回想録を作るべく、
部下を呼び、タイプライターを打たせながら、
自分の人生を語り出す。


1900年代、米国内の共産主義たちがテロ行為を繰り返す中、
打倒共産党を目的に新組織FBIが設立され、
その初代長官となったフーバー。


彼は有能な秘書・ギャンディ(ナオミ・ワッツ)と、
面接で選び、
その後死ぬまで良き“友人”として彼として共に生きた、
トルソン(アーミー・ハマー)との3人で、
FBIをより強固な組織へとのし上げてゆく・・・。





クリント・イーストウッド監督の最近の映画は、
結構ハマれるもの多かったが、
これは私には今一つかなぁ。


私が不勉強なのだろうが、
そもそも、J・エドガーって誰?という、
基本中の基本が分かっていない。
アメリカ人なら誰もが知っているのだろうか。
いや、日本人でも、知らないほうが変なのだろうか。


けれど、たとえ今まで知らなかった人物でも、
映画がとても面白くて、深い興味が湧けば、
帰ってからすぐにネットで調べ、
図書館でその人についての本を借りようと思うくらいの
行動力は持ち合わせているつもりだけれど、
特にそんな気にもなれなかった。


ただ、彼がとても能力のある人だというのは、
2つのエピソードで理解できた。


まずは図書館での蔵書の分類。
それまで、おそらくはめちゃくちゃに棚に置かれていたであろう本を、
タイトルや出版年で、すぐに探し出せる方法を考え付いたのが、
彼であるという。
映画館と同じくらい図書館が好きでたまらない私には、
その場面がとても感動で。
しかし、それまではどうやって本を探していたのかと、
そちらの方が気になってくる。
映画でも言っていたけれど、
「何日もかかる作業」だと。
気が遠くなりそうだ。


それから、指紋のデータをまとめる作業。
今は当然の事として警察などでしている事も、
この人が考え出したんだなぁと思うと、
やっぱり尊敬の目で見てしまう。
何でも初めに思い付くというのは凄い事だもの。


そして忘れちゃならないのが
フーバーとトルソンとの“関係”。
二人はゲイであり、一般の男同士とは違う情で結ばれていたと描かれている。
ベッドのシーンはないので、
そこまで露骨ではないが。


ある、世界的著名人の息子の誘拐事件を
劇中で扱っているのだが、
それがとても興味深くて、
そこだけ切り取って、映画を作ったら、
とても面白い物が出来そうな気がした。


評価 ★★★☆☆

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「黒蜥蜴」 [映画]

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〔1968年/日本〕


宝石商・岩瀬庄兵衛(宇佐美淳也)は、
愛娘・早苗(松岡きっこ)を誘拐するとの脅迫状を、
“黒蜥蜴”なる人物から受け取り、
名探偵・明智小五郎(木村功)に身辺警護を依頼する。


岩瀬父娘は大阪のホテルに身を隠すが、
そこには岩瀬の店の上顧客・緑川夫人(美輪明宏)も投宿していた。


明智は、黒蜥蜴の本当の目的は、
早苗ではなく、
岩瀬が持つ1億2千万円のダイヤ“エジプトの星”ではないかと、
推測する。


黒蜥蜴から、「今夜12時に娘をいただく」との電報が届き、
明智は、眠っている早苗を守る為に、
隣室で緑川夫人と待機する。


しかし気付いた時は、早苗は誘拐された後だった。
しかも、緑川夫人が正体を表す。
実は彼女こそが黒蜥蜴だったのだ。


逃亡した黒蜥蜴だが、
その後も、執拗にダイヤを狙う彼女と明智の攻防が続く・・・。





江戸川乱歩の原作を三島由紀夫が戯曲化、
さらにそれを映画化したという作品。


黒蜥蜴を演じる、まだ若かった頃の美輪明宏さんが、
とても綺麗で、そして妖艶。


そして一つ、気が付いた事。
美輪さんは女装より、男装の時の方がより美しさが際立つ!
全編、女として演技している美輪さんだけど、
一度だけ、逃亡の手段として、
男装するシーンがあって、
それがもう、美しいのなんのって。


男であれだけの美貌の人は、
あまりいないからなのでしょうね。


黒蜥蜴は、宝石だけでなく、
美しい人間もコレクションしている。
(ちょっと気持ち悪いけど)
これぞと思った完璧な容姿の人間を剥製にして、
彼女が言うところの「美術館」に展示してあるのよ。


そして、その剥製の中の一体を、
美輪さんも懇意だったという、
三島由紀夫が演じているものだから、
可笑しくなってしまう。
自分で自分を、
完璧な容姿の人間群に入れるかぁ(笑)。


黒蜥蜴は明智を憎みながらも、
恋している自分に気付く。
明智もまた、黒蜥蜴を憎からず思っている自分に気付く。
そんなやりとりもまた、面白い。


評価 ★★★☆☆

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「ライフ・オブ・デビッド・ゲイル」 [映画]

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〔2003年/アメリカ〕


雑誌記者ビッツィー(ケイト・ウィンスレット)は、
3日後に死刑執行を控えた囚人・デビッド・ゲイルから指名を受け、
ゲイルが収監されている刑務所に赴く。
多額の報酬で、
彼にインタビューし、それを綴るのが依頼内容だった。


ゲイルはビッツィーに自分の人生を語り始める。
元大学教授だった彼は、
同僚女性・コンスタンス(ローラ・リニー)をレイプした上、
殺害した罪で死刑判決を受けたのだ。
ゲイルも殺された女性も、
皮肉にも死刑廃止論者で、
熱心に活動するメンバー同士だった。


ゲイルは事件の前にも、彼にとって不利となる出来事があった。
成績の事で女子学生から逆恨みされた彼は、
その学生に嵌められ、
レイプと思われても仕方ないような状況で性行為に及び、
乱暴されたと訴えられ、
大学を追放されたのだ。


3日間に渡るゲイルへのインタビューを行ううちに、
ベッツィーは、彼の無罪を確信するようになる。
彼女はコンスタンスが殺されたという家で、
自ら事件と同じ状況を作り出し、検証する。


時間は残り少ない。
果たしてゲイルは無罪なのか・・・。





途中までは面白い。
事件の真相が明らかになるまでは。


死刑廃止を訴える方々の理由の一つに、
「冤罪の可能性」がよく挙げられる。
確かにそれを言われてしまうと、
反論する言葉が出ないが、
私はそれでも死刑を廃止にしろとは思えないし、言えない。


「冤罪の可能性」は別として、
本人が、「間違いなく自分が犯人です」と言っている場合や、
現行犯で捕まった場合、
そしてその犯罪が残虐性を極め、
犯人の更生が見込まれず、
犠牲者の遺族に多大なる苦痛を負わせ、
尚且つ、遺族が死刑を望んでいるとするなら、
それでもその犯人を「死刑にするな」とは、
心情的に私は言えない。


私の能力ではこれが限界。
死刑を廃止したくない理由はこれくらいしか書けないし、
考えに、矛盾や破綻があるかもしれないけれど、
これが精一杯。


もちろん、身近に死刑廃止論者がいたら、
その方の意見を真剣に聞くつもりはあるし、
聞けば、納得できる部分が出てくる可能性もないとは言えない。


ただ、この映画で描かれる死刑廃止論者の行動は、
私からすると、「そこまでするか?」と言いたくなるような内容で、
この映画のような事は、
私の狭い思考回路の人間には、
到底理解できない。


うーん、なんだか真面目になってしまった(笑)。
普通に犯罪物として楽しめばいいんだけどね。


評価 ★★★☆☆

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