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「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」 [映画]

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〔2011年/アメリカ〕


試写会で観た。


2001年9月11日。
マンハッタンに住む小学生、オスカー・シェル(トーマス・ホーン)は、
学校から急遽、集団下校させられる。
家に帰り、留守電をチェックすると、
お父さんからのメッセージが沢山録音されており、
テレビでは、煙のあがったワールド・トレード・センタービルの様子が、
繰り返し映し出されていた。


オスカーはお父さんが大好きだった。
知能は高いが、人と上手くコミュニケーションの取れないオスカーに、
お父さんは様々な楽しみを教えてくれた。
言葉遊びやゲームを通して、
オスカーの個性を伸ばそうとしてくれた。
あの日お父さんは、飛行機に激突されたビルに閉じ込められて、死んだ。


1年後、オスカーは事件以来始めて、
お父さんの部屋に入った。
納戸に置かれているカメラを取ろうとした彼は、
誤って花瓶を割ってしまう。
するとその中に、小さな封筒に入った鍵がある事に気付く。


この鍵に合う鍵穴が見つかれば、
そこにお父さんからのメッセージがあるはず。
そう信じたオスカーは、
封筒に書かれたいた「BLACK」という文字から、
電話帳を頼りに、マンハッタン中のBLACKさんを訪ね歩く・・・。





同時多発テロで父親を失った少年オスカーの、
悲しみと再生の物語。


あくまでもオスカーの目線で語られた内容であり、
父親役のトム・ハンクスも、
母親役のサンドラ・ブロックも、
登場シーンは意外なほど少ない。


劇中、オスカーは、
「僕はアスペルガーの検査を受けたが、不確定だった」と語る。
そのせいなのかは分からないけれど、
彼は、マンションの管理人のおじさんなどに、
普通では考えられないような言葉を投げつける。
知らない人が聞いたら、
「なんて躾のなっていない子だろう」と勘違いされても
仕方のないような言葉を。


母親に向かっても、
一番言ってはいけない言葉をぶつける。
母親はオスカーの個性を理解してはいるだろうが、
あの言葉は辛いだろうなと想像する。


人とは上手く接する事のできないオスカーだが、
細かい作業がとても綺麗。
彼の作った仕掛けのあるノートなどは、
大変に上手く出来ているし、
時間の計算など、
瞬時に秒単位まで計れる才能もある。


BLACKさんを探す途中で、
オスカーは祖母のマンションの間借り人の老人と親しくなり、
行動を共にする事になる。
その老人を演じる、マックス・フォン・シドーが
大変に良かった。
口がきけないという設定なので、セリフは一つもないのだが、
彼がオスカーをとても大切に思っている事は、
その態度からすぐに分かる。


オスカーも老人が自分にとってどんな存在なのかに気付き、
彼が去る時は怒りながら車を追いかける。
それはオスカーの淋しい気持ちを表す、
最大限の方法。


これを観ながら、
人災と天災の違いはあるけれど、
昨年の津波でご家族を失った方々を思い出さずにはいられなかった。
突然の出来事で命が失われ、
そして、その瞬間の映像をテレビで繰り返し見せ付けられる苦しみは、
想像を絶する。


劇中の、父親とオスカーの言葉遊びが楽しいが、
友人と私の間でも、
この映画のタイトルを文字って会話するのが、
ちょっと流行っている(笑)。
何かにつけて、
「ものすごく○○で、ありえないほど××だ」って。
逆に、「ものすごくうるさくて、ありえないほど近い」ものって何だろうと
考えるのも楽しい。
飛行場の近くにいる人、とか(笑)。


評価 ★★★☆☆

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