SSブログ

「金色夜叉」 [映画]

konjikiyasha.jpg
〔1954年/日本〕


明治時代。
間貫一(根上淳)と鴫沢宮(山本富士子)は許婚同士で、
大変に仲の良いカップル。
貫一の父親は、宮の父親の恩人だったが、今は亡くなり、
貫一は宮の家で学資を出してもらい高校に通っている。


正月、2人は揃って宮の級友の家で催されたかるた会に出席する。
そこには、富豪の男・富山唯継(船越英二)も参加していたが、
男には不似合いなくらい大きなダイヤの指輪をつけ、
香水をプンプンさせた彼の評判は悪かった。


ところが、その富山がかるた会の席で、
美しい宮を見初め、嫁に欲しいと言ってくる。
貫一を深く愛する宮は、固く拒否するが、
金に目が眩んだ宮の両親は、
「富山家の財産があれば、
貫一を大学にもやってやれる、洋行もさせてやれる、
全ては貫一の為」と宮を説得、
宮は泣く泣く富山との結婚を承諾する。


4年後。
宮は最悪の結婚生活を送っていた。
富山は、いつも上の空の宮に苛立ち、
彼女が何をしても気に入らず、
嫌味と嫌がらせの毎日。
実家で涙を流す宮に、
母親は、「一時の気の迷いで結婚させた自分が悪かった」と後悔し、
泣いて詫びるのだった。


一方、貫一は、
あれほど愛し合っていた宮に裏切られたショックから、
冷酷な高利貸しになっていた。
人間を誰も信用しない貫一は、
取立ても容赦がなく、
人の恨みを買う。


2人の運命はどうなるのか・・・。





尾崎紅葉原作の本作で、
私が知っている事といえば、
かるた会の場面と、
熱海の海岸で、貫一が宮を足蹴にしながら放つ、
あの名ゼリフだけであったが、
いやはや、これほど面白いストーリーだったとは。
やっぱり後世に残るものには、
ちゃんと理由があるのね、と思った次第。
映画化も20回以上されているようで驚いた。


まず、私はこれを観るまで、宮という女性を誤解していた。
富山の金に目が眩んで、貫一を裏切ったのは、
宮の意思だと思っていたのよ。
でも、全然違ってた。
宮は、熱海の海岸で、
貫一に激しく詰られるのだけれど、
「富山の金で、あなたを大学にやれる」とは、
言えるはずもなく、ただ泣くばかり。
宮の本心を知らない貫一が怒るのは当然で、
宮自身が金に目が眩んだと思われても仕方ない展開。


女に裏切られたくらいで、そこまで激昂するかと
思われそうだが、
結婚話が持ち上がる前の2人の仲の良さったら、
もう、所かまわずイチャイチャイチャイチャ、
路上でキスまでしてる(笑)。
明治時代にこんなカップルがいたのかと思うくらいで、
現代の高校生と大して変わらない(笑)。


でも、見ていて不快感はなく、
とても可愛いカップルだと思える。
あんなに仲良しだったのに、
いきなり別の男と一緒になると聞かされた日には、
そりゃあ、ショックも大きかろう。


その後の2人の不幸、
特に宮の結婚生活は、
こちらまで辛くなるくらいだが、
富山の気持ちを分からなくはないよ。


妻がいつまでも、他の男を思って泣いてるんじゃ、
面白くないに決まってる。
富山が冷酷になる原因の殆どは、
宮が作っていると言える。
かといって、宮にしても、
自分の気持ちをどうする事もできないし、
全てが八方塞。


映画は一応、綺麗に終わるが、
小説は、尾崎紅葉が創作途中で亡くなった為、
未完だそうだ。
どんな終わりを考えていたのだろう。





観終わったあと、ネットで色々調べていたら、
熱海の海岸に実際にあるという、
「貫一と宮の銅像」を見て、吹き出してしまった。
貫一が宮を足蹴にしている場面が、
そのまま銅像になっている。
私も今まで生きてきて、
あんな平和的でない像を見たのは初めてだ(笑)。
もし、物語を何も知らない外国人があれを見たら、
日本がDVを容認している国、
女性蔑視の国だと思われても仕方ない感じ(笑)。
そう想像すると、逆に可笑しくて笑える。


評価 ★★★★☆

nice!(16)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画