SSブログ

「怪談 蚊喰鳥」 [映画]

kaidankakuidori.jpg
〔1961年/日本〕


東京の下町で常磐津の師匠をする菊治(中田康子)は、
年若い情夫・孝次郎(小林勝彦)に惚れ抜いていたが、
彼は菊治を金づるとしか思っておらず
金の無心に来る時だけは優しいが、
どうも他の女との結婚話が持ち上がっているらしかった。


ある日、菊治の家に、ここのところ姿を見せなかった、
盲目の按摩・辰の市(船越英二)がやって来る。
久し振りに彼に体を揉んでもらった菊治は、
彼の冷たい手に驚く。


翌日また菊治の家に、辰の市に瓜二つの盲目の按摩が訪ねてきて、
驚くべき事実を告げる。
自分は徳の市(船越英二・二役)という名で、辰の市の弟。
兄は3日前に菊治に恋焦がれながら死んだ、と。
では、昨日来たのは幽霊だったのかと、
菊治は背筋が凍る思いがする。


以来、徳の市はしょっちゅう菊次の家にやって来るようになる。
追い払っても追い払っても、自分の家のように、
いつの間にか入り込んでいる徳の市の図々しさに、
菊治は辟易する。


しかし、徳の市が金を持っていると知った菊治と孝次郎は、
それを何とか自分たちのものにしようと企む。
徳の市に身をまかせた菊治は、
彼を愛しているフリをしながら、機会を窺うが・・・。





タイトルは「怪談」となっているが、
オカルト的な場面は、最初に辰の市の幽霊が出てきたくらいで、
あとは、菊治・孝次郎・徳の市の心理戦で、
それがめちゃくちゃ面白い。


特に船越英二の演技には感心してしまった。
彼ってこんなに上手かったっけと思うくらい、
盲目の按摩の役が素晴らしく板についている。


目が見えないという、
弱者の立場を装ってはいるが、
3人の中で一番強かなのは間違いなく彼である。
その図々しさ、しつこさ、
そして、妙に口が達者で、
また、盲目ゆえの冴えた勘にはゾッとするくらいの
怖さを感じる。


彼は手に入れた菊治を絶対他の男に取られまいと、
必死になる。
常磐津の生徒だと偽って、
菊治の家にやって来る孝次郎にも、
今後は出入り禁止だと言い渡す。


その言い方は、多分に人の神経を逆撫でするものがあり、
金を手に入れるまでの辛抱だと我慢していた孝次郎も、
仕舞いには怒り出す。


オチも、オカルト的ではなく、
ちゃんと筋の通った、私の好きな終わり方。
「幽霊より、生きている人間の方が怖い」という、
ラストのセリフには、大きく肯ける。


評価 ★★★★☆

nice!(21)  コメント(4)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画