「眼下の敵」 [映画]
〔1955年/アメリカ・ドイツ〕
第二次世界大戦の真っ只中。
アメリカの駆逐艦・ヘインズ号は、
ドイツの潜水艦・Uボートを探すべく、
南大西洋を進んでいた。
艦長のロバート・ミッチャムは、
船が出て以来、艦長室に閉じ籠りで、
乗組員たちは、「船酔いでもしてるんだろう」と、
半ば馬鹿にしたように噂し合う。
ある日、レーダーがUボートをキャッチする。
部屋から出てきたミッチャムは、
全員に的確な指示を出し、
追跡を始める。
リーダーとしての彼は、大変に頼もしい男だった。
一方、Uボートの艦長、クルト・ユルゲンスも、
冷静で力強く、乗組員からの絶大な信頼を受けている。
彼はヘインズ号の存在に気付き、攻撃を仕掛ける。
南大西洋の海上と海中とで、
駆逐艦とUボートが睨み合い、
息の詰まるような攻防が続く。
果たして勝つのはどちらなのか・・・。
観る前は、タイトルの「眼下」という言葉から、
勝手に空軍の話なのかと思っていたが、
海の下にいる敵の事だっとは、
なるほど、という感じ。
駆逐艦のロバート・ミッチャムも、
Uボートのクルト・ユルゲンスも、
内心で、戦争の下らなさを知っている、
2人とも大変に男気のある、
頼れる艦長だ。
二つの船は海水を挟んで睨み合うが、
互いに駆け引きをするうちに、
会った事のない相手の艦長に、
何やら友情のような、不思議な気持ちが湧いてくる過程が、
大変に素晴らしい。
「お前、なかなかなやるな」といった感じで。
両方の船が互いに息を潜めて、
自分たちが去ったかのように見せかける場面で、
ユルゲンスが、
何を思ったか、突然レコードをかけ、
乗組員たちに歌えと命じる場面がある。
その歌声を傍受したヘインズ号の通信士は驚き、
ミッチャムに報告。
ミッチャムは動じる事なく、
ニヤリと笑う。
観ているこちらは、
もうどちらに肩入れする事もなく、
殺し合いはやめてほしいと本気で思う。
そんな内容だから尚更、ラストが気になるが、
これがまた、上手くできてるんだな。
戦争中に映画のような事が本当にあったのは分からないけれど、
ものすごく納得できるオチ。
(原作は少し違うらしいが、絶対こちらの方がいい)
話は全て、駆逐艦とUボートの中だけで進み、
当然の事ながら女は一人も出てこないが、
ここで変な色気話で惑わされては、
せっかくの緊迫感が薄れてしまう。
これはもう、男だけの世界で正解ね(笑)。
評価 ★★★★☆