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「ウルトラ I LOVE YOU!」 [映画]

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〔2009年/アメリカ〕


地元の新聞社でクロスワード作りを生業にしている
サンドラ・ブロックは、
独身で、恋人もいない、冴えない女。


クロスワードを作っているだけあって、
知識だけは無駄に豊富だが、
それが実生活に役立っている様子は見えない。


ある日、彼女は、両親から男性を紹介すると言われる。
どうせ親の連れてくる男、
ロクな者ではあるまいと期待ゼロであったが、
家にやって来たブラッドリー・クーパーを見た瞬間、
彼のあまりのハンサムぶりに恋に落ちてしまう。


ローカルテレビのカメラマンをしているクーパーは、
ニュースを追いかけて、
全米を駆け回る日々だが、
彼を追いかけ、行く先々で姿を現すブロック。


彼女のストーカーっぷりに、
ホトホト困り果てたクーパーだったが、
そんなある日、全米が注目するような大事件が起こってしまう・・・。





第30回ラズベリー賞で、
最悪女優賞と、最悪カップル賞を獲得したという本作品。
でも、馬鹿馬鹿しさを覚悟で観れば、
それほど悪い映画とも思わなかった。


なんといっても、
ブラッドリー・クーパーの登場シーンが可笑しい。
自宅の階段から降りてきたサンドラ・ブロックに対して、
クーパーは最初、背中を向けている。


ブロックに気付いた彼が振り返った瞬間は、
少女漫画でいえば、バックに薔薇の花が描き込まれたような感じ。
さらに、彼の動きはスローになる。


クーパー命の友人に言わせると、
この場面は映画史に残る名シーンだそうだ(笑)。


サンドラ・ブロックが演じる主人公は、本当に“ヘン”。
走り方から立ち居振る舞いまで、
全てが変わっていて、
その変人っぷりが板に付いている。


けれど、観る者にそう思わせるという事は、
それだけ彼女の演技が凄いという事で、
その演技でラズベリー賞を受賞したのなら、
それは何ら不名誉な事ではなく、
むしろ誇らしい事ではないかと、私は思う。


評価 ★★★☆☆

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「花実のない森」 [映画]

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〔1965年/日本〕


神保町シアターの現在のテーマは、
「監督と女優とエロスの風景」。


この映画館で上映される作品は、
どれもこれも、毎回観たいものばかりであるが、
時間的にも、経済的にも、そう何度もは行けず、
どうしても、若尾文子さんや川口浩様の出演作を中心に
選ばざるを得ない。
あー、神保町シアターの隣に住みたい(笑)。

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セールスマン・園井啓介は、
山道を運転中、
車が故障して困っている女・若尾文子に助けを求められ、
彼女を宿泊先のホテルまで送り届ける。


翌日、若尾から、
車内に大切な手帳を忘れたと連絡をもらった園井は、
若尾のホテルに手帳を届け、食事をする。
美しい彼女に園井は夢中になるが、
若尾は自分の事を話したがらない。
そんな謎めいた部分に、
園井の気持ちは更にかき立てられるのだった。


さらに園井は、ホテルで見知らぬ男・船越英二から
声を掛けられる。
船越は、自分を若尾の崇拝者だと言い、
園井を自分のライバルだと位置づける。


ある日、園井は若尾がファッション雑誌に載っているのを発見する。
それを手がかりに、
彼女の身元を調べた結果、
彼女は旧華族の妾の娘で、
山口県の金持ちの家に嫁いでおり、
夫が車椅子生活な為、
時々、東京で遊んでいる事などを知る。


彼女の家を訪ねた園井は、
彼女の兄の田村高廣に会う。
田村はどこか薄気味の悪い男で、
彼にも何か秘密がありそうだった。


ある日、園井は、山口に帰っているはずの若尾が、
都内の薄汚いアパートに入っていくのを、
偶然見かけ・・・。





以前、松本清張の原作を読んだ時、
「なんてくだらないストーリーなんだ」と思った記憶がある。
(偉そうにごめんなさい。
 大作家先生も、数ある作品の中にはそういう物もあるって事で)


けれど、そんな感想しか持てなかった小説でも、
若尾文子さんで映画化されている事を知り、
ぜひ観てみたいと思っていたが、
ビデオ化もDVD化もされていないらしく、
諦めていたので、今回願いが叶って嬉しい。


で、映画はどうなのかといえば、
やっぱり2時間ドラマのような展開(笑)。
しかも、園井啓介と船越英二が、
断崖絶壁で対峙する場面まである。
この手のストーリーに断崖絶壁は不可欠なのか(笑)。


ちょっと感慨深いのは、
現在、2時間ドラマのキングと呼ばれているらしい船越英一郎が
船越英二の息子だという事。
親子で断崖が似合うって、凄いと思う(笑)。
(と言っても、私は船越英一郎が断崖に立っている場面を
 観た事はないので、あくまでもイメージなのだけれど(笑))


残念だったのは、
若尾さんの兄役が田村高廣だというのを、
観終わるまで気付かなかった事。


「兵隊やくざ」シリーズで、
あれだけ見てきたのになぁ。
あんなに素敵だった「兵隊~」の有田上等兵役に対して、
こちらの役は変態そのもので、
まるで別人。
分かっていれば、「これは有田と同じ人」という目で、
見る事ができたのに(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「大菩薩峠 竜神の巻」 [映画]

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〔1960年/日本〕


前作のラストで相対した、机竜之介(市川雷蔵)と兵間(本郷功次郎)だったが、
霧の中で互いの姿を見失い、
決着がつかずに勝負は終わる。


竜之介は偶然知り合った植田丹後守(石黒達也)の家で世話になるが、
そこで会ったのが、
元妻と瓜二つの女・お豊(中村玉緒)であった。
お豊は竜之介を慕うが、
しつこく言い寄ってくる男・金蔵(片山明彦)に手籠めにされ、
そのまま夫婦のように暮らす事を強いられる。


竜之介はある事件から盲目となってしまい、
竜神の森へ逃げ込み、
そこでお豊と再会する。


竜之介を忘れられないお豊は、
金蔵の目を盗んで、竜之介の元へ逃げ出そうとするが失敗、
怒り狂った金蔵は村に火を放ち、
お豊のあとを追う。


一方、兵馬も竜之介をの居場所を突き止め、
ついに崖の上で一騎打ちとなる・・・。





全3作のうちの2作目。


1作目では、なんとも嫌な奴だった机竜之介だが、
今回は、クールなだけで、
特に性格の悪さは現れてはいない。


そうなると、どうしても「眠狂四郎」とキャラがかぶってしまうような気がして、
ちょっとハラハラした(笑)。
同じ市川雷蔵が演じているのだから、
仕方ないといえばそうなのだが。


中村玉緒が熱演している。
竜之介の元妻にソックリの女という役柄だが、
妻が文句ばかり言う女だったのに対して、
今回は純粋に竜之介を慕う、可愛い女。


彼女に言い寄る金蔵というのが、
現代で言えば完全にストーカーで、
だから余計に彼女の不憫な感じが引き立つ。


盲目になった竜之介は、
「これで我が子に会っても分からない」と言う。
生き別れた子供の事なんて、
これっぽちも考えていない風情だったから、
ちょっと驚いた。
彼の人の親だったというわけね。


評価 ★★★☆☆

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「TIME タイム」 [映画]

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〔2011年/アメリカ〕


近未来。
医学の発達により、
遺伝子操作された人間は、
25歳の誕生日に成長が止まり、
一日の寿命が与えられる。


自分の残りの時間は、
左腕に緑色のデジタル時計で表され、
通貨は自分の持ち時間という世界。


つまり、貧民層は工場などで働いて、
一日分の時間を報酬として受け取るのがやっと。
対して富裕層は、何百年もの時間を所持している。


主人公、ジャスティン・ティンバーレイクは、
貧民街で働く青年。
ある日彼は、バーで106年もの寿命を持った男・マット・ボマーを、
時間強盗から助ける。
男はティンバーレイクが眠っている間に、
自分の持ち時間を全て彼に譲り、死ぬ。


ほんの少し、持ち時間が足りなかったせいで、
バスに乗れなかったティンバーレイクの母は、
彼の目の前で死に、
何も失う物がなくなった彼は、
一人、富裕ゾーンへと乗り込む。


そこで大富豪の娘、アマンダ・セイフライドと知り合い、
親しくなるが、
時間監視局員・キリアン・マーフィーから、
ボマー殺害の容疑をかけられ、
セイフライドを人質に逃げ出し・・・。





なんだか全編、ジャスティン・ティンバーレイクとアマンダ・セイフライドが
手に手を取って走っているだけの印象で、
それほど心に残る物はなかった。


「ガタカ」の監督という事で期待していたけれど、
「ガタカ」から受けた、ある種の“哀しみ”は
感じられない。


これって、観る人の普段の死生観で、
感想がかなり変わってくるように思うのだけれど。


例えば、私の友人に、
「たとえ寝たきりになってでも、
 一日でも長く生きたい」という人がいる。
逆に、「60歳くらいまで生きれば十分」と言う人もいる。


そう、生死に関しては、
百人が百人、それぞれの考えを持っていると感じる。
だからここで、
私の意見って書きにくい。


そもそも、25歳で成長が止まるって、嬉しい事なのかな。
私はそこまで思わないのだけれど。
それから、自分の人生の時間を調整できる、
この世界の人をちょっと羨ましく感じたよ。
私なら、生きたいうちは懸命に働いて、
「もういいや」と思う日が来たら、
自分の残り時間は、欲しい人にあげる。


腕のデジタルが0を示した瞬間、
その人は1秒で死ねる。
とても楽そうだ。
長患いして、苦しむよりずっといい。


後半のジャスティンとアマンダは、
ボニーとクライドみたいだった。


評価 ★★★☆☆

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「黒蜥蜴」 [映画]

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〔1962年/日本〕


東京の大きな宝石商・岩瀬(三島雅夫)の一人娘・早苗(叶順子)は、
“黒蜥蜴”なる人物から、幾度も脅迫状を受け取っていた。
近いうちに早苗を誘拐するというのが、
脅迫状の主な内容であった。


大阪で早苗の見合い話があり、
避難を兼ねて、そちらに移動した早苗と父は、
名探偵・明智小五郎(大木実)に身辺警護を頼む。


父の顧客の一人である緑川夫人(京マチ子)は、
偶然同じホテルに泊まっており、
早苗は夫人と語り合う。
夫人は早苗に知人の雨宮潤(川口浩)を紹介すると言って、
二人で雨宮の部屋に入るが、
早苗はそこで薬を嗅がされ、
誘拐されてしまう。


実は緑川夫人こそが女賊“黒蜥蜴”だったのだ。
その後、明智の部下のおかげで早苗は戻ってきたが、
そんな事で黒蜥蜴が諦めるはずもなかった。
東京に戻った早苗だが、
厳重に警護されているにも関わらず、
彼女は自室から忽然と姿を消してしまう・・・。





くだらなかった(笑)。
くだらなくて、楽しめる。
一人で観るには勿体無いかも。


先日観た、美輪明宏版のと、
話の流れはほぼ同じだが、
あちらに比べて、全員が学芸会をしているみたいだ。


まず、こう書いては大変に申し訳ないのだが、
明智小五郎を演じる大木実さんに、
明智の持つ魅力が全く感じられなかった。
木村功の方がずっと良い。


それから、宝石商の岩瀬を演じる三島雅夫の声が、
異様にでかくて(笑)。
とにかく彼はいつも、
「わーはははは」と高笑いをしていて、
そのうるささと言ったら、モニターのボリュームを下げたくなるほど。
普通の会話にしても、
ホテルのレストランで、「こちらが名探偵明智君だよ」と、
これまた、店内中に響き渡る声で紹介する。
そんな秘密の事を、わざわざ世間に知らしめなくたって(笑)。


もう一つ、岩瀬は、
二言目には明智に、
「君には百万円の金を払ってるんだ」と責める。
彼の頭の中は、金の事でいっぱいらしい。


美輪版も、こちらも、
三島由紀夫の戯曲を元に作られたようだが、
美輪版には三島本人が出ているくらいだから、
ずっと力が入っている事が分かる。
本当にこれは憶測で申し訳ないのだが、
こちらの黒蜥蜴に三島が納得いかず、
6年後に作り直したのかと、そんな事まで考えてしまった。


一つ、嬉しかったのは、
川口浩様が出ていた事。
今回は彼目的ではなく、
純粋に“黒蜥蜴”の2本を見比べたくて、
浩様が出ている事は、レンタルしてから知った。
付け髭で変装する彼が可愛くて見入ってしまった(笑)。


評価 ★★★☆☆

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