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「ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲」 [映画]

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〔2015年/ハンガリー〕


とある国。
13歳の少女・リリ(ジョーフィア・プソッタ)は、
母親と2人暮らしだったが、
母親の長期出張の為、
父の家で暮らす事に。


リリは愛犬・ハーゲンを連れて、
父のマンションに行くが、
父も、マンションの住人も、
あからさまに嫌な顔をする。
その国には、雑種犬を飼う場合、
重い税金を払うか、
払わない場合は犬の収容所に連れていくという
法律があるのだ。


リリは楽団に入り、トランペットを吹いていたが、
ハーゲンを父のマンションに置いておけず、
連れていく。
しかし、楽団の指導者にそれを咎められ、
報告を受けた父は怒って、
ハーゲンを捨ててしまう。


ハーゲンは闘犬を育てる男に拾われ、
訓練され、
次第に闘争本能を剥き出しにするようになる。


その後、収容所に入れられたハーゲンは、
他の数百匹の犬を扇動して、
係員を殺し、
町へ出てしまう・・・。





捨てられた犬が、
紆余曲折の末、
飼い主の少女の元へ帰る、
感動の物語・・・と思ったら大間違い。


途中から、ホラーか?と思うような流れになってゆく。
犬が出てくるからと、
小さな子供を連れていかない方が無難かも。


犬が数百匹も、
まとまって街を走る様子は、
可愛いとか、そういったものではなく、
怖い。
しかも彼らは、
闘争本能丸出しで、
その様子は野犬の大群ようだ。
私がその場にいたら、
きっとパニックになる。


犬たちがなぜ、
そのような事になったのか、
この映画が伝えたいのはそこだろう。
当然、それは人間のせいなのだけれど。


特に、闘犬を育てるその過程の場面は、
気持ちのいいものではない。
今まで穏やかだったハーゲンの闘争本能を、
わざわざ露わになるように躾けるなど、
なぜ、そんなしなくていい事を、と思う。


犬の演技が凄い。
犬の可愛い演技は今まで沢山の映画で見てきたけれど、
「恨み」の気持ちを上手く表現するという
難しい事をこなしているのが、
今までとは違う気がする。


ワンちゃんたちも、
演技を付けたかたも、
大変だっただろうと思う。


評価 ★★★☆☆

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「独裁者と小さな孫」 [映画]

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〔2015年/ジョージア〕


とある独裁国家。
その夜も独裁者(ミシャ・ゴミアシュウィリ)は、
幼い孫(ダチ・オルウェラシュウィリ)を相手に語らっていた。
彼は国民には冷酷でも、
孫は可愛い。


しかし、世の中の空気がどこか不穏だ。
それを察した独裁者の家族は、
いち早く国外に逃亡。
孫も一緒に行くはずだったが、
ワガママを言っているうちに、
飛行機は飛び立ってしまう。


独裁者と孫が宮殿に戻ろうとすると、
軍隊や群衆が襲ってきて、
慌てて逃げる。
途中、車を乗り捨て、バイクを奪うも、
お抱え運転手までが、それに乗って逃げてしまう。


近所の床屋に入り、
拳銃を突きつけ、
髪を切らせ、
服を奪った独裁者。
自分に多額の懸賞金が掛けられている事を
ラジオで知る。


今や、味方は世界中どこにもいない。
独裁者と孫の、
過酷な逃亡の旅が始まる・・・。





「世界はあんたを中心に動いているんじゃない」


時に、人にそう言いたくなる事が
日常生活でたまにあるし、
もしかしたら私自身も、
人からそう思われるような事をしでかしている場合もあるとは思う。


この映画の冒頭は、
まさしく、「その国は独裁者を中心に」動いていると言っていい。
別に暴力的な場面ではないのだけれど、
主人公の独裁者が、
日頃からいかに、その国を力で支配しているかが、
十分に窺える場面。


しかし、支配者が一度地に落ちると、
押さえつけられていた民衆の憎しみは、
堰を切ったように溢れ出し、
袋叩きになるのは、自明の理。


この国も例外ではなく、
独裁者は孫を連れて逃亡を余儀なくさせられるのだけれど、


独裁者が旅の途中で見たのは、
今まで自分がしてきた事の
結果がそうなった、という事ばかり。


独裁者自身に暴力が振るわれるわけではなく、
国の政治が荒れていると、
国民の感情も荒れる、という典型的な形。
「育てたように、子は育つ」という言葉の、
国バージョンみたいだ。


ただ、独裁者の過去の酷い悪行を見せる場面がないので、
観ているこちらは、
そこまで彼を憎めず、
この逃亡がなんとか成功してほしいとまで思ってしまう。
犯罪映画で、
犯人に肩入れしてしまうのと同じ気持ち。
それに彼は、孫と一緒の時は、
あくまでも優しいおじいちゃんなのだ。


まぁ、人種に依る所も大きいのかな。
例えば、これが、
日本に近い、某隣国の独裁者の物語だったら、
「早く捕まれ。捕まって、どうにでもされてしまえ」と
思ってしまうかもしれない。
人は、相手によって感情も変わる。


架空の国の話とはいえ、
今後、あの国はどうなっていくんだろう。
国民の様子を見ていても、
おとぎ話みたいに、
「その後、平和にくらしましたとさ、ちゃんちゃん」とはいかない気がするけど、
どうなんだろう。


評価 ★★★★☆

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◆モンローが死んだ日◆ [本]


モンローが死んだ日

モンローが死んだ日

  • 作者: 小池 真理子
  • 出版社/メーカー: 毎日新聞出版
  • 発売日: 2015/06/09
  • メディア: 単行本


久し振りに読んだ小池真理子さん。
女だなぁ、女の世界だなぁと思う。
女だから当たり前だけど(笑)。


主人公は、夫を亡くして以来、
精神の不安定さに悩まされている女性・鏡子。
彼女は精神科にかかり、
そこの医師・高橋と懇意になり、
毎週同じ曜日に、
彼が泊まりに来るくらいの仲になる。


けれど、
半年ほど経ったある日、
高橋が突然、音信普通になる。


その辺りまでは、
中年の男女の恋愛の縺れ話かと思いながら
読んでいたのだけれど、
ちょっとサスペンスのような様相を呈してくる。


人が一人いなくなるって、
大変な事だ。
読み手は、高橋がなぜいなくなったのか、
一体どこへ行ってしまったのか、
早く知りたくて、
つい夢中になってしまう。


高橋が来るはずの曜日に、
連絡がなく、
不安に思い始めた鏡子の心情の描き方を、
「わかる」という思いで読む。


待っている人からの連絡が来ない時の、
不安な感じは、多くの方が経験していると思う。


なぜ電話もメールもないのか。
事故に遭ったのか、
急病で倒れているのではないか、
ケータイの失くしたのか、
いや、もしかしたら、
電波か何かのトラブルで、
自分のメールが届いていないのかも・・・。


とにかく、あらゆる理由を考える、あの感じ。
特に恋愛の場合、
「自分は嫌われた」という理由以外の理由を探そうと
余計に必死になるんだろう。


主人公が、自分の不安定な精神状態を、
アイガーの北壁から足を滑らせて落ちてゆく
イメージに例えるのが印象的。


アイガーで誤って落下すると、
1500メートルもの高さを、
ただひたすら落ちてゆくのだそうだ。
その1500メートルの間に、
人は何を考えるのだろう。
途中で意識を失うだろうか。
いや、むしろ、失った方が楽かも。

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「負ケラレマセン勝ツマデハ」 [映画]

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〔1958年/日本〕


オート三輪の幌を取り換える零細企業を
経営している森繁久彌の、
目下の悩みは、税金の支払い。


昨年、病気をして売り上げが少なかったにも関わらず、
税務署からは税金の督促が届き、
さらに、森繁が競輪に行っている隙に、
税務署員の小林桂樹が、
家にある家財道具一切合財に、
差し押さえの赤紙を貼っていった。


森繁の妻・望月優子は、
妹の淡島千景が経営する寿司屋に、
小林がツケを溜めている事に目を付け、
淡島に、色仕掛けで、
税金を逃れる方法を聞き出せと頼む。


一夜を共にした小林から、
税務のからくりを聞き出した淡島だが、
淡島に惚れている小林は、
彼女の目的がそこにあった事を知り大ショック。


いよいよ強制執行の日がやって来るが・・・。





森繁久彌が経営する零細企業と、
税務署とのバトルがテーマなので、
仕方ないのだけれど、
とにかく登場人物たちの会話が、
税金の事ばかり。


人が日々暮らしていく上で、
こんなに税金の話ばかりするか?っていうくらい。
まるぜ税金の為に生きてるみたい(笑)。


森繁さん一家が、
税務署対策として、
ノートに受け答えの問答集を作っておく場面が
印象的。


緊張するような話し合いの場に臨む時、
相手の言葉を想定して、
「相手がこう言ったら、こう返そう」みたいなのって、
多くの方に経験がある気がする。
悪い場合だけでなく、
例えば、初めて好きな人に電話をする時とか。
もちろん、ノートまでは作らないだろうけど(笑)。


森繁さんの持病(?)に、
しゃっくりが止まらない、というのがあって、
何か緊張すると、すぐにそれが始まる。
そして、止めるために、
なぜか風呂に入るんだけど、
「なぜそんな所に風呂が?」と思うような、
風呂場らしくない所にあって、
家族全員が肩にお湯をかけてやったりする。
変わった映画だ。


これは森繁さんを観たくて行ったわけではなく、
野添ひとみさんが出ているから、
前から観に行こうと決めていた映画。


野添さんは森繁さんの娘の役で、
まだとっても若くて、
なんと、ローラースケートで、
その辺をグルグル回ったりして、
本当に可愛い。


税金は、
勿論払わなければならないし、
滞納した事など一度もないけれど、
脱税している輩がいるかと思うと、
やっぱりムカつくよね。
マイナンバーくらいで、
それが完全になくなるなんて、
有り得ない話だと思うんだけど、
どうなんでしょ。


評価 ★★★☆☆

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「007 スペクター」 [映画]

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〔2015年/イギリス〕


メキシコの「死者の祭り」で、
人がごった返している中、
凶悪犯・スキアラ(アレッサンドロ・クレモーナ)と
派手にやり合ったジェームズ・ボンド(ダニエル・クレイグ)。


それは、ボンドの単独行動だったため、
怒ったM(レイフ・ファインズ)は、
職務停止を言い渡す。


折しもイギリスでは、
国家安全保障局の新しい長に任命された、
マックス・デンビ(アンドリュー・スコット)が、
MI6不要論を掲げたため、
ボンドの地位は危うくなる。


悪の組織「スペクター」の存在を突き止めたボンドは、
ロンドンから出るなとの命令を無視し、
同僚・Q(ベン・ウィショー)の協力を得て、
国外へ。


「スペクター」の鍵を握る
ホワイト(イェスパー・クリステンセン)の娘・マドレーヌ(レア・セドゥ)に近付き、
彼女を守りながら死闘を繰り広げるボンドだったが・・・。





やっぱりカッコいいね、
ダニエル・クレイグ演じるジェームズ・ボンドは。
歴代ナンバーワンのボンドと言われるのも納得。
彼がボンドを演じるのは、これで4作目。
次はどうなるのか分からないけど、
彼の後の人はやりにくいだろうな。


冒頭から魅せてくれる。
小手調べに軽く一発かと思っていたら、
とんでもない。
最初からそんなに飛ばしちゃっていいの?ってくらいの派手さ。
その場面は予告で何度も観ていて、
凄いと思っていたけれど、
「掴みはOK」ってやつだわね(笑)。


その後も派手なアクション、
カーチェイス、ヘリコプターでの追跡、
建造物爆破など、凄いシーンの連続。


友人から聞いたのだけれど、
この映画でCGは全く使われていないってホント?
本当だとしたら、凄い事だわ。
なんというか、一歩間違ったら大惨事みたいな場面ばかりで。


それから、目を背けたくなるような、
ボンドへの拷問のシーンがある。


悪役・クリストフ・ヴァルツが、
機械を操作して、ボンドの体のある部分にある事を・・・。
ぎゃー!やめてー!と叫びたくなるような恐ろしさ。


クリストフ・ヴァルツって、
今年の2月に観た映画、「ビッグ・アイズ」で、
めっちゃ神経逆撫でされる役をしていたけれど、
http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2015-02-01
やっぱりこういう嫌な役が似合うのねぇ(笑)。
腕力はなさそうだけど、
その分、他の方法で他人を不快にさせる術を知っているような
男の役が。


まぁ、007という映画の性質上、
当然ボンドは危機を脱出するのだけれど、
あんな目に遭って、
肉体的に立ち上がれなさそうなダメージを負ったというのに、
その後、何事もなかったかのように、
アクションをこなしている事に笑った。


他にも色々突っ込みどころはあったけれど、
そんな事はどうでもよくなるくらい楽しめる1本。


評価 ★★★★☆

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