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「美しき母」 [映画]

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〔1955年/日本〕


6年生の日出夫は、父が事業で失敗したため、
母・光代(原節子)と2人で、
昔、家で働いていた女中の田舎に厄介でなる。


母は近所に、女工として働きに出るが、
クラスメイトに、母の働く工場の社長の息子がいるせいで、
「女工の子」とからかわれ、喧嘩になる。
しかし、近所の上級生たちが結成している、
「海賊クラブ」の面々が日出夫を庇ってくれ、
クラブに入れてもらった日出夫は、
様々な体験を積んでゆく。


母の給料だけでは生活が苦しく、
絵の得意な日出夫は、
灯篭のガラスに絵を描くアルバイトで、
学資を貯めてゆく。


そんなある日、父が家に帰ってきた。
母は嬉しそうだったが、
夜中に日出夫が目を覚ますと、
父が母を殴っており、
日出夫が止めに入ると、父は出ていってしまう。


日出夫の中学の入学試験の日がやって来た。
そこに、父が危篤との電報が入る。
母はそれを日出夫には知らせなかった。
日出夫は合格できるのか、
そして父は・・・。





タイトルは「美しき」と書いて、「うるわきし」と読むそうだ。


先日亡くなられた、原節子さんの、
母子物。
訃報の直後に、「白痴」をビデオで観て、
感想を書いたけれど、
これは名画座で観た。
亡くなられたから、名画座にかかったわけではなく、
それ以前からスケジュールに組み込まれていた作品。
大きなスクリーンで観られて良かった。


やっぱりいいなぁ、母と息子の物語って。
母親と息子には、
何か特別な絆があるといつも感じる。
もちろん、母親と娘にも絆はあるけれど、
また違った種類の愛情がある気がする。


息子の方だって、
よほど特別な確執でもない限り、
みんなお母さんを好きだろうなぁと感じる。
劇場で観ている男性の皆さんは、
どんな気持ちなんだろうと、
その心情を慮ってしまう。


この映画の原さんは、
とにかく優しくて、たおやかで、
息子・日出夫に対して愛情たっぷり。
何かあると、一緒に歌を歌ったりして、
そういう場面に弱いのよ、私(笑)。


夫の事業の失敗で、
生活は困窮しているのに、
決してそれを口に出さないし、
日出夫が、靴がボロボロな事を訴えても、
「そんな事は何でもない事、取るに足らない事」と、
おそらく内心では困っていても、
明るく受け流す。
子供に余計な心の負担をかけない、
そんな母の強さがいい。


日本人の良さも、
とても良く出ている。
みんなで譲り合ったり、助け合ったり、
何かあるとすぐ謝ったり。
何でもかんでも昔が良かったとは決して思わないけれど、
日本人って美しいなぁと、自然にそんな感情が湧きあがる。


ただ、佐分利信さんが、
原さんに暴力を振るう場面はショック。
古い日本の映画は、
昔の日本人の美しさが描かれていて好きだけど、
男性が威張りすぎてるのが難点なのよねぇ。


評価 ★★★★☆

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