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「裸の町」 [映画]

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〔1957年/日本〕


流行歌を嫌い、
クラシック専門のレコード店「ロゴス堂」を営む池部良。
しかし、経営が苦しい上に、
友人の借金まで背負いこんで、
にっちもさっちもいかない所にまで追い詰められている。


高利貸しの森繁久彌は、
池部に金を貸している一人で、
同業者・志村喬より先に、
池部から金を回収しようと、
「ロゴス堂」を手放させ、
それで得た金を巻き上げる。


池部の妻・淡島千景は、
池部のお人好しっぷりに呆れ果て、
別れを切り出す。
淡島は、大恋愛の末、
故郷から池部と出てきたのだが、
もうやっていけないと言う。


一方、森繁の妻・杉村春子は、
森繁の、異常な金への執着が怖くなり、
彼の金を、
最近開業した、
「さくら相互協会」に預けに行く。
ここに預けると、金が倍になると言うのだ。


実は、この「さくら相互協会」は、
志村が経営しており、
翌日には閉鎖され・・・。





昨日、森繁久彌さんの凄さに気付いたと書いたけれど、
偶然、別の名画座で、
森繁さん特集が組まれており、
早速観に行った。


これは昨日の、「裸の重役」とは一転して、
森繁さんは高利貸しを営む、
嫌な男を演じている。


それにしても上手い。
詐欺同様の手口で、
池部良から金を巻き上げるなど、
最低だけど、
本物に見えたわ(笑)。


凄いのは、
森繁さんが家の床下に隠してある現金。
銀行を信用しない彼は、
自分の持ち金は全て家に置く主義だと言う。
それを夜な夜な取り出して、眺めては、
嬉しそうにしている。


そんな父親では、子供の教育にも悪いと、
杉村春子さんが、
「さくら相互協会」に持っていくのだけれど、
積み上げられた現金は、
テーブルいっぱいになるくらいの多さで、
観ているこちらは、「何て事を」という気持ちで、
暗澹としてくる。


ニュースで、年に何回か、
自分の虎の子を怪しげな金融機関に預けて、
大騒ぎになるというのを聞くけれど、
なるほど、これがそうなのか、という思いで観る。
「さくら相互協会」も、
「あなたの預けたお金が倍になって戻ります」というのが
うたい文句なのだよ。
もう絶対、そんな上手い話なんかあるはずないのに。


家に帰って、自分のお金が無くなっている事に気付いた
森繁さんは半狂乱。
森繁さんは嫌な奴だけど、
ここは私も同情する。
大切に貯めてきたお金を、
みすみす悪徳金融に取られてしまうなんて、
泣いても泣き切れない。


池部良さんと淡島千景さんの、
どうにも離れがたい男女の縁も考えさせられる。


別れて、二度と会わない夫婦もいるし、
この映画のように、
どうにも別れられない2人もいる。
その違いってどこにあるんだろう。


評価 ★★★☆☆

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