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「独裁者と小さな孫」 [映画]

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〔2015年/ジョージア〕


とある独裁国家。
その夜も独裁者(ミシャ・ゴミアシュウィリ)は、
幼い孫(ダチ・オルウェラシュウィリ)を相手に語らっていた。
彼は国民には冷酷でも、
孫は可愛い。


しかし、世の中の空気がどこか不穏だ。
それを察した独裁者の家族は、
いち早く国外に逃亡。
孫も一緒に行くはずだったが、
ワガママを言っているうちに、
飛行機は飛び立ってしまう。


独裁者と孫が宮殿に戻ろうとすると、
軍隊や群衆が襲ってきて、
慌てて逃げる。
途中、車を乗り捨て、バイクを奪うも、
お抱え運転手までが、それに乗って逃げてしまう。


近所の床屋に入り、
拳銃を突きつけ、
髪を切らせ、
服を奪った独裁者。
自分に多額の懸賞金が掛けられている事を
ラジオで知る。


今や、味方は世界中どこにもいない。
独裁者と孫の、
過酷な逃亡の旅が始まる・・・。





「世界はあんたを中心に動いているんじゃない」


時に、人にそう言いたくなる事が
日常生活でたまにあるし、
もしかしたら私自身も、
人からそう思われるような事をしでかしている場合もあるとは思う。


この映画の冒頭は、
まさしく、「その国は独裁者を中心に」動いていると言っていい。
別に暴力的な場面ではないのだけれど、
主人公の独裁者が、
日頃からいかに、その国を力で支配しているかが、
十分に窺える場面。


しかし、支配者が一度地に落ちると、
押さえつけられていた民衆の憎しみは、
堰を切ったように溢れ出し、
袋叩きになるのは、自明の理。


この国も例外ではなく、
独裁者は孫を連れて逃亡を余儀なくさせられるのだけれど、


独裁者が旅の途中で見たのは、
今まで自分がしてきた事の
結果がそうなった、という事ばかり。


独裁者自身に暴力が振るわれるわけではなく、
国の政治が荒れていると、
国民の感情も荒れる、という典型的な形。
「育てたように、子は育つ」という言葉の、
国バージョンみたいだ。


ただ、独裁者の過去の酷い悪行を見せる場面がないので、
観ているこちらは、
そこまで彼を憎めず、
この逃亡がなんとか成功してほしいとまで思ってしまう。
犯罪映画で、
犯人に肩入れしてしまうのと同じ気持ち。
それに彼は、孫と一緒の時は、
あくまでも優しいおじいちゃんなのだ。


まぁ、人種に依る所も大きいのかな。
例えば、これが、
日本に近い、某隣国の独裁者の物語だったら、
「早く捕まれ。捕まって、どうにでもされてしまえ」と
思ってしまうかもしれない。
人は、相手によって感情も変わる。


架空の国の話とはいえ、
今後、あの国はどうなっていくんだろう。
国民の様子を見ていても、
おとぎ話みたいに、
「その後、平和にくらしましたとさ、ちゃんちゃん」とはいかない気がするけど、
どうなんだろう。


評価 ★★★★☆

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