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「庭から昇ったロケット雲」 [映画]

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〔2007年/アメリカ〕


テキサスで牧場を営むビリー・ボブ・ソーントンは、
妻・ヴァージニア・マドセンと3人の子供に囲まれ、
幸せにくらしている。


けれど、彼は町では変わり者で有名だ。
彼は、自作のロケットで宇宙に飛び立ちたいという、
大きな夢があり、
宇宙服を着て、馬に乗ったりする。
牧場の納谷には、ほぼ完成したロケットが、
発射を待っている。


彼は、大学で航空宇宙工学について学び、
NASAで訓練まで受けた過去があった。
宇宙へ行く寸前までいったのだが、
家庭の事情で、農場を継がざるを得なかったのだ。


ロケットは、あとは燃料を買うだけだが、
借金まみれの彼に、
銀行は融資を断る。
それどころか、早く返済をしないと、
牧場は抵当に取られると通告される。


さらに、国から厳重注意が入る。
民間人が、勝手にロケットを打ち上げるなど、以ての外。
ロケットはミサイルの可能性もあると言われ、
査問にかけられるソーントン。
障害が多い中、
彼の夢は実現するのか・・・。





ロケット打ち上げを夢見る男と、
それを支える家族の物語。


確かに口当たりはいい。
夢を持つ事は悪い事ではないし、
妻は大変に理解があり、
子供たちも素直で、
父を恥じるような事はなく、
どこまでも協力的だ。


ただ、もし、
主人公と同じ夢を持った人が、
多数いたらどうなるのよ、とは思った。
みんながみんな、勝手にロケットを打ち上げたら、
それこそ大混乱になるだろう。


彼の夢を阻止するアメリカ国家が、
まるで悪者かのように描かれているけれど、
国は当たり前の事をしているだけじゃないのかな。
飛行機だって、きちんと制御されたうえで飛んでいるわけだし、
個人で作ったロケットなんて、
失敗して墜落したら、市民への被害は甚大だろう。


まぁ、そんな事考えないで観ればいいんだろうけど。
こんな私だって、
ロケットが飛び立った時は、
おぉ!と、とても嬉しかったし、
最後まで上手くいってほしいと、
見入ったし。


ブルース・ウィリスが、
国家側の、ちょっと嫌な人間で出ているのが可笑しかった。


評価 ★★★☆☆

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「交換日記」 [映画]

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〔1963年/日本〕


ラピュタ阿佐ヶ谷で観た。
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高校3年生の山内賢は、
同じクラスの和泉雅子に片思いしている。


廊下に張り出された体育祭の写真に、
何者かがいたずら書きした事件をきっかけに、
2人は急速に親しくなり、
交換日記をする事になる。


日記には、自分が日々感じた事などを
正直な気持ちで打ち明け合い、
2人にとってそれは、
心の拠り所になってゆく。


ところが、和泉が下駄箱を間違えて、
違う生徒に日記を入れてしまった事から、
騒動が起こる。


さらに、大工をしている和泉の父親が、
現場で大怪我をし、
学費を稼ぐ為にアルバイトを始めた彼女は、
中年男性と一緒の所を目撃され、
クラスメイトから吊し上げられる事態となってしまう・・・。





交換日記か。
交換日記って今しないよね(笑)。


現役中高生に尋ねたとしても、
交換日記そのものを知らなさそうだし、
説明したとしても、
「なんでそんな面倒臭い事するの?」と聞かれそうだ(笑)。


しかも、山内賢と和泉雅子が交換日記している事が
クラスにバレた途端、大騒ぎ。
今でいえば、
メールのやり取りしてるのと同じ事だよね。
隔世の感があるわ(笑)。


クラスメイトたちは、
なんと、「男女交際について」の、
討論会まで開いている。
そこで、日記の事やアルバイトの事で、
糾弾される和泉。
激昂して、思わず暴力を振るってしまう山内。


山内の家はエリート一家で、
T大、K大、当たり前。
しかしその暴力事件で、
すわ退学かという所まで発展。
交換日記が発端で退学て(笑)。


和泉雅子といえば、今は、
北極や南極に行く人、というイメージだけれど、
昔はとっても可愛かったのね。
あのまま女優を続けていたらどうなっていたのか。
けれど、ご本人はきっと、
女優より好きな道に進まれたのでしょうし、
おそらく、そちらの方が合っていたのだと想像する。
女優だけが生きる道ではないものね。


評価 ★★★☆☆

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「十代の性典」 [映画]

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〔1953年/日本〕


ラピュタ阿佐ヶ谷の現在のテーマは、
「教室群像 映画の中の『学び』の風景」
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ある高校。
体育の授業を見学をしていた南田洋子は、
誰もいない教室で、
ふと、同級生の若尾文子の財布を盗んでしまう。


しかし、その行為を男子生徒に見られ、
さらに教師にもバレてしまう。
教師が財布を点検すると、
若尾宛ての名前のないラブレターが入っていたものだから、
騒ぎが大きくなる。


けれど、当の若尾は、
男の子より、上級生・沢村晶子に夢中。
手を繋いで下校するも、
実は沢村には大学生の恋人・長谷部健がいると知り、
大変なショックを受ける。


沢村は昔、見知らぬ男に乱暴された過去があり、
そのせいで、長谷部を愛していながらも、
彼を受け入れずにいた。


一方、1万円の入った封筒を拾った南田は、
自宅の電気代にも困る父の姿を見かねて、
その金で支払ってしまい、
罪の意識に苛まれる・・・。





ずっと観たかったのよ、この映画。
念願叶って、とても嬉しい。


これは若尾文子さんの出世作と言われているそうだけれど、
当時、このセンセーショナルなタイトルから、
若尾さんは「性典女優」などと揶揄されたそうで、
この映画に関する話題は、
長い間、タブーだったそうだ。


「続編」、「続々編」まで作られているようだから、
当時、いかに人気だったかが分かる。
若尾作品全制覇が夢の私だけど、
いつか、この2本の続編を観られる日が来るのだろうか。
来ますように。


とはいえ、内容はというと、
予想通りというか、
今観ると、まったく平凡で、
エロのエの字も感じられない(笑)。


沢村晶子に夢中の若尾さんは、
劇中何度も、「お姉さま~♪ お姉さま~♪」と彼女に呼びかけ、
自室は、彼女とのツーショット写真でいっぱい。
男の子なんてまるで眼中にない。
(勿体ないわ(笑))。


そういう女の子を、当時「S」と呼んだそうだ。
(シスターの略?)
同性に憧れる事もなくはないけれど、
今、あんなあからさまな女子がいたら、
人の目には、奇異にうつるだろうなぁと思うと可笑しい。


それから、
古い青春映画で必ず話題になるのが、
男女の、
「一線越えるか、越えないか」問題。


なんと学校の授業でまで、
「女子は結婚まで、貞操を守らねばなりません!」と
教えているではないか(笑)。


けれど、それが度々映画のテーマになるって事は、
逆に、それを守るのが、いかに難しいかって事が、
透けて見えるんだけどね(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「悪名一代」 [映画]

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〔1967年/日本〕


喧嘩相手のヤクザの腹を刃物で刺してしまった清次(田宮二郎)は、
朝吉(勝新太郎)の前から姿を消した。


清次がいなければ、朝吉も退屈で仕方なく、
ぶらりと旅に出た。
電車の中で、見知らぬ女・お澄(森光子)が、
親しげに声を掛けてきた。
朝吉と幼馴染を間違えたらしい。


お澄は流しの仲居をしており、
朝吉に、自分がこれから勤める旅館に来いと誘う。
誘いに乗った朝吉は、その旅館に行く。


ところが朝吉は、その旅館で、
暗い顔をした女・蔦江という女と知り合う。


彼女は、もうじきアメリカから帰ってくる祖母から、
3億円の遺産を相続することが決まっており、
しかし、その金を狙って、
因島のヤクザが、彼女を無理矢理妾にされていたのだ。


早速、因島のヤクザの所に出向いた朝吉だが、
なんとその家に清次がいる事を知る・・・。





シリーズ13作目。


始まってすぐに、アッと驚く。
なんと、つい先日お亡くなりになった、
森光子さんが出てきたではないか。


彼女は男に惚れっぽい、
気のいい仲居の役で、
案の定、勝新太郎扮する朝吉に惚れてしまうという、
結構重要な役どころ。


2人はキスする場面まである。
ほんの軽くだけど(笑)。
古い映画を観ていると、
たまにそういう事があって、
そんな時は、映画の神様が下りてきたのかと、
とても嬉しくなる。
森さんのお若かった時のお顔を、
じっくり見させていただいた。


きっと今頃は、
天国で、勝さんや田宮さんとも、
再会されているのでしょうね。


今回、清次は朝吉にも知らせずに、
いつの間にか結婚して、
奥さんは妊娠しているのだけれど、
坪内ミキ子演じる、この奥さんというのが、
とっても家庭的で穏やかで、素敵な人だった。


彼女に会った朝吉も、
彼女の良さに感心して、
「ええ女やな」と独り言を言ったくらい。
ヤクザな清次には勿体ないわ(笑)。


朝吉が食堂で、食べ物を注文するシーンが興味深かった。
彼は、
「ご飯の上に黄色いものをかけた食べ物をくれ」と、
食堂の女性に言う。
それはカレーの事だけれども、
1967年当時、
カレーはまだ、それほど世間に知れ渡った食べ物ではなかったのだろうか。
さらに朝吉は、カレーの食べ方までレクチャーしている。


今の日本で「カレー」という単語が咄嗟に出てこない人がいるとは、
考えにくいし、
「ご飯にかけた黄色いもの」とは言わないだろう。
そんなセリフからも、
時代が感じられて面白い。


評価 ★★★☆☆

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「そして人生はつづく」 [映画]

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〔1992年/イラン〕


「友だちのうちはどこ?」から3年後の1990年。
大地震に見舞われたイラン。


「友だち~」の監督、アッバス・キアロスタミ(ファルハッド・ケラドマンド)は、
息子を伴って、
壊滅状態だと言われるロケ地へ、
主人公の少年の安否確認に出向く。


道は渋滞で、乗用車は思うように進まず、
脇道に入る監督。
家は壊れ、
瓦礫を片付ける人々が必死に働いている。


少年の住む町・コケルはまだまだ遠く、
途中、「友だち~」に出演していた老人に出会い、
彼の町で一旦休憩する。


そこで、地震の翌日結婚したという夫婦と出会い、
話を聞く監督。
夫は地震で親族65人を失ったが、
かえって、年寄りたちの意見を聞かなくて済んだため、
さっさと結婚できた事を話す。


出発した監督は、
探していた少年が20分前に、
同じ道を通ったと知る。
再会はできるのか・・・。





この間観た、「ライク・サムワン・イン・ラブ」が
めっちゃ面白かったので、
同じ監督・アッバス・キアロスタミの
別の作品を、と思い、借りてみた。


ドキュメンタリーのようでありながら、
そうではなく、
でも、淡々と出来事を追ってゆくその内容は、
不思議な味わい。


おそらく、ファルハッド・ケラドマンドが出会う人々は、
俳優さんではなく、一般の人で、
ケラドマンドだけが、監督という役を演じているだけで、
あとは本物だと言っていいのではないかと思う。


1年半前に、日本も地震で大変な思いをしているので、
イランの状況は他人事には思えず、
見入ってしまう。
津波の被害とは違って、
乾いた土の中での復旧は、
それはそれで、大変な苦労があるようだ。


それでも人々は生きてゆく。
神様の仕打ちについて悩んだり、
そんな事を考えても仕方ないと、
前だけを見つめていたり。


とても辛い状況でありながら、
やっぱり人は生きていくのだと、
なにか力強い気持ちにさせられる。


ところで、この映画を観るにあたって、
私はちょっと失敗してしまったんだな。


この映画は3部作となっていて、
「友だちのうちはどこ?」

「そして人生はつづく」

「オリーブの林をぬけて」
が撮影順となるわけだが、
私はこの間、「オリーブ~」の方を先に観てしまったのだ。
(「友だち~」は以前に観ている)
分かっていたのにそういうミスをする、
やっぱり私はアホだ。


「オリーブ~」は、
何が面白いんだか、
今ひとつよく分からず、
評価が高い理由も掴めなかったのだけれど、
そのはずだと、本作を観て分かった。


あちらは、震災の翌日結婚した夫婦の物語を
映画化する監督の話なのだ。
理解できなくて当たり前よね。
もう一回「オリーブ~」を観てみるつもり。


「そして人生はつづく」の方が、
3部作の最後の作品のタイトルみたいじゃない?(笑)


評価 ★★★★☆

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