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「あ・うん」 [映画]

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〔1989年/日本〕


昭和12年。
サラリーマンの水田仙吉(板東英二)一家が、
3年の転勤を終え、東京に戻ってきた。
水田の戦友で20年来の付き合いである門倉修造(高倉健)は、
水田家の為に家を用意し、
当日はその家を磨き上げ、
彼らの帰りを待っていた。


門倉は水田の妻・たみに密かに惚れており、
たみも門倉の気持ちを知っていたが、
気付かぬフリをしている。
また水田は、
そんな奇妙な三角関係を
自慢に思っている所があった。


門倉の妻・君子(宮本信子)の計らいで、
水田の娘・さと子(富田靖子)が、
帝大出の青年石川義彦(真木蔵人)と見合いをする。
しかし、水田は帝大出の婿はあまりに荷が重いと、
この縁談を断る。


水田が芸者のまり奴(山口美江)に夢中になってしまい、
たみは心を痛める。
また、君子も、門倉に新しい女ができたらしいと水田に相談、
君子と水田が、
門倉が女の為に借りた家に乗り込むと・・・。





こう言っては身も蓋もないのだけれど、
ごめんなさい、つまらなかった。


一番の原因は板東英二氏の演技。
あれはない。
ブログであまり酷い事は書きたくないけど、
やっぱり、ない。


それから山口美江さん。
この映画を作るにあたって、
制作側は、なぜ俳優ですらないこの2人の起用を
思い立ったのか。
まるでど素人の演技に、
観ているこちらは困惑してしまう。


高倉健さんは好きだし、
演技も悪くないけど、
そもそも彼は、原作で描かれる門倉のイメージなんだろうか。
高倉健さんが芸者と遊んで、
お座敷でカッポレを踊るなんて、
観たい人がいるんだろうか。
(いたらごめんなさい(笑))


原作者の向田邦子さんは大好き。
向田さんが書かれた本も、
亡くなったあと、ご親族が出された本も
全部持っているし、
一時は、あまりに影響を受け過ぎて、
周囲の人から、
「ハマりすぎていて、洗脳されているようだ」と言われた事もあった(笑)。


元々は、向田さんが脚本を書かれた、
テレビドラマだったものを映画化した作品で、
ドラマは大変に評価が高かったようだけれど、
私はそちらは観ていないので、
どんな雰囲気なのかは分からない。


向田さんがこの映画を観たら
何と仰るだろう。


評価 ★★☆☆☆

「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」 [映画]

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〔2014年/イギリス〕


1939年。
ドイツ軍の暗号記「エニグマ」の解読は
困難を極め、
それを成功させない限り、イギリスの勝利は有り得ない。


イギリスは国内から、
様々な分野の6人の人間を集め、
解読チームが結成される。


その中の1人で天才数学者・アラン・チューリングは、
協調性がなく、
チームでの仕事を嫌った為、
1人浮いた存在となってしまう。


そんな彼が、ある方法でチームリーダーとなり、
2人をクビにした後、
新たな仲間を募集したところ、
女性でありながら、
素晴らしい能力を持つジョーン・クラーク(キーラ・ナイトレー)が
試験を受け、合格する。


アランが開発した解読マシンが動き出した。
マシンは暗号を解読できるのか。
そして、私生活で悲しい秘密を抱えたアランに、
心穏やかなる日は来るのだろうか・・・。






実話なのだそうだ。


戦争において、
暗号の解読がどれほど重要か、
知ってはいても、
それがこんな風に行われていたのかと、
ちょっと驚きながら観てしまう。


解読メンバーが、
全員とても若いのが意外で。
日本の戦争ものだったら、
もう少しおじさんがしていそうな気がして。
(あくまでもイメージだけど(笑))


そしてそのリーダーとなるのが、
ベネディクト・カンバーバッチ演じるアラン・チューリング。


登場した時から、
とても高慢で、シニカルな印象を受ける彼だけれど、
実はとても悲しい過去と、秘密がある。


特に彼の学生時代の出来事は悲しすぎる。
あまり詳しくは書けないので、ここまで。


アラン・チューリングという個人と、
彼が戦争においてどのような役割を果たしたかという
2つの物語が並行して描かれるわけだけれど、
戦争における人の生き死になんて、
案外、1人の意見で決まってしまうんだなと思ったのも事実。


彼が作り出した、
暗号解読機というのが、
壁のように大きくて、
スイッチを入れると不思議な動きをし始める。
これがどういう仕組みになっているのか、
私にはさっぱり分からなかったけれど、
とにかく、何だか凄いという事だけは分かった(笑)。
神々しいような感じがしたもの。


ラストのテロップが最高。
アランの発明は、
私たちが現在使っている、
今ではすっかり体の一部のようになってしまっている物の原型だという。


色々書けない事が多いけど、
アカデミー賞にノミネートされただけの事はある、
見応えのある作品。


評価 ★★★★☆

「ブエノスアイレス恋愛事情」 [映画]

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〔2011年/アルゼンチン〕


アルゼンチンの首都・ブエノスアイレス。
ウェブデザイナーのマルティン(ハビエル・ドロラス)は、
恋人が7年前にアメリカに行ったきり戻って来ず、
引きこもり気味な日々。


愛犬スス散歩を、散歩屋の若い女・アナに頼んだ事がきっかけで
彼女と関係してみるものの、
なんとなく、しっくりこない。
また、ネットで知り合った精神科医の女・マルセラとも
付き合ってみるが、
こちらもピンとこない。


一方、マルティンの向いのマンションに住むマリアーナ(ピラール・ロペス・デ・アジャラ)は、
自称建築家だが、建築の仕事をしたことがない。


彼女は人ごみが怖く、
また閉所恐怖症で、
何人かの男とデートはしてみるものの、
なんだか上手くいかないのだ。


マルティンとマリアーナ。
こんなに近くに住んでいるのに、
互いの存在にまだ気付いていない2人は、
出会う事ができるのか・・・。





もしも神様から、
「この先の人生で、あと1度しか海外旅行ができない」と言われたら、
絶対に南米に行く。


・・・とは、このブログで、今まで何度も書いているし、
これからも書くであろう(笑)。
一番の目的はイグアスの滝だけれど、
そのイグアスがあるのが、アルゼンチンで、
この映画の舞台は首都のブエノスアイレス。


冒頭の、マルティンが語るナレーションがとてもいい。
「荒涼な国の人口過剰都市」
「何千ものビルが、何の基準もなく林立する街」
「不揃いな建築は僕たちそのもの」
「この一貫性のない街は無計画性のたまもの」


ブエノスアイレスを説明しているだけなのに、
東京の事を言われているような気持ちにさせられる。
大抵の国の首都は、
どこもそんなものなんだろうけど、
南米を夢見る私には、
そんな共通点でも、嬉しくなる。


それから、映画を見ていて、
ビックリするようなものを発見!
マリアーナのキッチンテーブルの上に、
「じゃが玉ストッカー」なる、日本の文字が見えるではないか。


「じゃが玉ストッカーって何?」と日本人のくせに知らない私は、
思わずネットで検索(笑)。
なるほど、じゃがいもや玉ねぎを保存する、
プラスチックの容器の事なのね。
それにしても、なぜアルゼンチンの家庭に、
日本人でもすぐにはピンとこない、
そのような物が普通に置いてあるのか。
嬉しいやら、可笑しいやら。


他にも、マルティンのPCの壁紙が、
「鉄腕アトム」だったり、
また、アトムのフィギュアを箱から出す場面があったり、
ビールがアサヒだったりと、
私が思っている以上に、
日本が浸透している気配。


マリアーナが、
「ウォリーをさがせ」の絵本が好きで
いつも見ているのが可愛い。
ラストも、「ウォーリー」とかけてある、
すんごく可愛い終わり方。


評価 ★★★☆☆


「夜明けのうた」 [映画]

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〔1965年/日本〕


人気女優・浅丘ルリ子は、
高級車・スカイラークを購入し、すっかりご機嫌で、
恋人・岡田真澄の待つホテルに行く。
しかし、岡田が妻子の待つ家に帰ってしまった事から、
1人でドライブへ。


小田原のドライブインで、ひょんな事から出会ったカップル、
浜田光夫と松原智恵子を車に乗せる。
松原は目の病気を患っていると言い、
浅丘は、知り合いの医師を紹介する。


医師の診断によると、
松原の目は、あと半年以内に、
完全に光を失うとの事で、
浜田は大変なショックを受け、
また浅丘も、驚く。


家に帰った浅丘は、
付き人と運転手連名の置手紙に気付く。
そこには、
「2人で駆け落ちする。
現金と宝石は、退職金代わりにいただく。
警察に訴えたらスキャンダルをばらす」と書かれおり、
どうする事もできない。


ミュージカルの次回作の台本を読んだ浅丘は、
その内容が、自分の私生活にソックリだった事に憤慨、
その仕事は辞退すると言い放ち、
夜のクラブに行くと、
浜田と松原が来ており・・・。





小作品ながら、
有名女優と、田舎から出てきたカップルとの
2日間の出来事が凝縮されている、
いい映画だと思った。


浅丘ルリ子が、
若くもなく、かといって大御所というにはまだ早い、
中途半端な年齢の女優という役に、
ハマりすぎるほどハマっている。


どこへ行ってもサインをせがまれるくらい有名ではあるけれど、
付き合っている恋人は妻子持ちだし、
仕事は順調だけど、
スキャンダルを笑い飛ばせるほどには達観していない、
そんな立ち位置。


そんな彼女が、偶然知り合ったカップルと、
一晩を過ごすうちに、
彼女の中で、何らかの変化がある。
その過程が大変によい。


浅丘は、我儘な女優に見えて、実は意外と姉御肌。
浜田と松原のカップルを放っておけず、
一緒にボーリングをしたり、
会員制のバーに連れていったりして、
東京での思い出作りと、
2人の今後を話し合わせる時間を作ってやる。


浅丘も成長したけれど、
浜田たちにとっても、
素晴らしい出来事であった事に間違いない。
いくら東京に出てきたからって、
そんな経験なかなか出来るもんじゃない。


恋愛ものでもない、
難病がクローズアップされているわけでもない、
芸能界の内幕ものでもない、
ジャンルを問われると答えられないけれど、
観終わったあと、タイトル通り、
夜明けを迎えたような気持ちになれる、そんな映画。


評価 ★★★★☆


「八つ墓村」 [映画]

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〔1977年/日本〕


天涯孤独の身の上だと思っていた寺田辰弥(萩原健一)は、
新聞広告で、弁護士が自分を探している事を知り、
大阪の法律事務所へ赴く。


そこで彼は、母・鶴子(中野良子)が岡山県の八つ墓村の出身であり、
自分が、村一番の力を持つ多治見家の血を引いている事を知らされる。
多治見家の現在の当主・久弥(山崎努)は、
病で余命いくばくもなく、
辰弥が後継者として、莫大な財産を引き継ぐ権利があるというのだ。


辰弥は、鶴子の父・井川丑松(加藤嘉)と、
その場で初対面する。
丑松は初めて会う孫に、相好を崩していたが、
突然苦しみ出し、こと切れてしまう。


驚いた辰弥だったが、
丑松の葬儀もあり、
親戚筋の森美也子(小川真由美)に連れられ、
八つ墓村に行く。
この村で、これから数々の惨劇が起こるなど、
想像もせずに・・・。





「八つ墓村」。
なんと美しい物語。


・・・なーんて書くと、
「頭大丈夫か?」と言われそうな気もするけど(笑)、
なんと言われても構わない。
今までに、何度読み返したか分からないくらい、
この物語が好き。


読んだ方はご存じだと思うけれど、
私は、主人公・辰弥の母・鶴子が、
監禁された部屋の中で、
屏風の裏側に貼り付けられた、
恋文を読む場面がとにかく好きで。


見つかってはならない手紙を、
そんな風に工夫して隠した知恵にも感心するし、
なにより、ロマンティックだ。
恋人を思う、鶴子の気持ちを考えると泣けてくる。


もちろん、おどろおどろしい場面も沢山あって、
そういったものが嫌いな方は
敬遠するような本なのだろうけれど、
でも、絶対、それだけじゃないんです。
こんな面白い物語、
1人でも多くの方に読んでいただけたらなぁと思っています。


原作が好きなあまり、
映画の方は、今まで手つかずだったのだけれど、
同じ横溝正史の「悪魔の手毬唄」を2作連続して観たので、
いよいよ「八つ墓村」にも着手した方がいいかという事で、
借りてきた。


残念ながら、屏風の恋文の場面はなく、
それ以外にも、
私が「ここ!」と思う場面は、
映像化されていなかった。


まぁ、しかし、それも仕方あるまい。
あれだけの人間関係を、
2時間半の映画で描くのは不可能に近いだろうし、
現に、小説のほんの最初の方を描くだけで、
50分くらいの時間を費やしてしまっている。


金田一耕助役は、渥美清さん。
しっかし、この金田一、
ラスト近くに村人を集めて、謎解きするも、
「なぜ、犯人が分かった?」と言いたくなるような唐突さで、
あまり根拠がない(笑)。


きっとこの映画は、
金田一の謎解きより、
観客をどれだけ怖がらせるかで作られた映画なんじゃないかしら。
だって、犯人が正体を現した途端、
化け猫みたいになるって、どうなのよ(笑)。
これはそういう話じゃないっつーのに。


まぁ、映画は映画と思って楽しめた。
私の中の原作の世界観は少しも変わっていない。


評価 ★★★☆☆