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「浅草の肌」 [映画]

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〔1950年/日本〕


浅草のレビュー劇場に、
新しく入った若草クルミ(京マチ子)は、
そのふてぶてしい態度が、
先輩ダンサーから反感を買い、大喧嘩となる。


警察で説教され、
最終電車を逃したクルミは、
劇場の演出家・香取真一(二本柳寛)のアパートに泊まるが、
高潔な香取は、
クルミがどんなに誘惑しようとしても、相手にしない。


プライドを傷つけられたクルミは、
後日、また香取の部屋を訪ね、
彼の体にしがみつくが、
それでも香取は、頑としてクルミを跳ね除ける。


しかし、そんなクルミを見て、
香取は、ショーの新しい演出を思い付く。
「女豹」のようなクルミを主役にし、
彼女の激しいダンスで、客を悩殺しようというわけだ。


その演出は大当たりし、
客は連日、長蛇の列。
一時は経営が危ぶまれた劇場は一気に持ち直す。


一方、ダンサーの虹子は貿易商を名乗る男・北条隼(植村謙二郎)に弄ばれた挙句、
妊娠しているというのに捨てられてしまった。
虹子の姉で、香取の恋人・圭子(藤間紫)は、
そんな妹を心配するが、
訪ねてきた北条の顔を見て驚愕する・・・。





京マチ子さんの、
浅草のレビューダンサーという、
妖艶で、蓮っ葉な役が素晴らしくハマっていて面白い。


京さんって、なんて凄い女優さんなんだろう。
流れ流れて浅草にやって来たという設定の、
京さん演じるクルミは、
劇場では新顔だというのに、
全く動じない。
物凄く強い。
そしてカッコいい。


クルミは、
そんな自分に絶対的な自信を持っているようで、
演出家の香取に、
「私をあげる♪」みたいな事を言うんだけど、
この香取がまた、素晴らしい。


私は、映画では、
据え膳食っちゃう男を、
「しょうがないなぁ(笑)」という思いで、
苦笑混じりに観る事が多いけれども、
この香取サンの、クルミの拒絶のしかたったら、ハンパなくて、
そこまでできる彼の真面目さに、大変な好感を持つ。


彼は恋人の圭子をとても大切に思っているので、
邪な心が入り込む隙間など無いみたいなんだな。
男がみんな、香取サンみたいだったら、
世の女の何割かは、悩みが減っていいんだろうけど(笑)。


そして、その後のクルミの心の動きが、
これまたいい。
本気で香取を愛するようになった彼女は、
もう彼の部屋に行っても、
彼の首にかじり付こうとはしない。
愛されない自分を哀れむように、
ただ、そこにいる。


クルミが、自分のしている事が、
香取の執筆活動の邪魔になっている事に、
ハッと気付く場面があって、
その演出と、京さんの演技の素晴らしさに魅入る。
自分の事しか考えた事のなかった女が、
初めて他人を思いやる心を知る・・・
素敵な場面だった。


その後、話は意外な方向へ進む。
ちょっとサスペンスタッチ。
でも、ちゃんと伏線もあるし、
話に矛盾が無いため、
唐突な感じはせず、
違和感なく最後まで楽しめる。


評価 ★★★★☆

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