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「ブラインド・フィアー」 [映画]

blindfear.jpg
〔2013年/アメリカ〕


女性戦場カメラマンのミシェル・モナハンは、
アフガニスタンで取材中、
自爆テロに遭い、全盲になってしまう。


3年後の現在、
彼女はマンハッタンの高級マンションのペントハウスで、
恋人・アンドリュー・ウォーカーと暮らしていた。
ウォーカーは投資家として成功し、
豊かな生活を送る男だ。


ある日、モナハンが買い物から帰って来て、
ウォーカーに声を掛けたが、
家にいるはずの彼の返事がない。
不審に思いながらも、
片づけを始めた彼女は、
濡れている床で滑って転んだ。
なんとそこは血の海となっており、
ナイフで刺されたウォーカーが死んでいるではないか。


しかも、犯人・バリー・スローンはまだ部屋の中にいた。
スローンは、ウォーカーが隠した物を出せと言う。
一度はスローンから逃れ、
外に助けを求めたモナハンだが、
共犯者・マイケル・キートンに捕まり、
また部屋に戻されてしまう。


部屋から多額の現金を見つけたキートンたちは、
それで立ち去るかに思えたが、
現金は彼らの目的ではなかった。
別に隠してある物を出せと、
モナハンを脅し・・・。





押し入ってきた謎の2人の男と闘う、
盲目の美女。
外に出たのはほんの少しだけで、
ほぼ密室劇。


まずは、
ミシェル・モナハンの盲目という設定を生かした
演出が面白い。


例えば、買い物から帰ったモナハンは、
恋人が殺されている事に気付かずに、
死体と、その周辺に広がった血液を、
踏みそうで踏まない、ギリギリの所を何度も歩く。
観ているこちらにしたら、
「あの血だまりを踏んだら、驚くだろうな」と思わせられて、
いつ気付くのか、ドキドキする。


それから、犯人が部屋に居る事に気付かず、
シャワーを浴びるモナハン。
犯人は、彼女の裸をじっくり見て、
タオルまで、取りやすいようにしてやるという、
いわば、透明人間のような行動。


その後、モナハンが
遺体と、部屋にいる男に気付いてからの展開は、
中々の緊迫感。


とにかく2人の犯人がしつこい。
アンドリュー・ウォーカーが隠した、
「ある物」を探すのに必死。


モナハンを痛めつけて、
その有り場所を吐かそうとするんだけど、
モナハンも頑張るよ(笑)。
絶対に口を割らない。
私があんな目に遭ったら、
すぐ、ごめんなさいしちゃいそう(笑)。


その「ある物」は、
現金より価値があるらしいんだけど、
私だったら、それをすぐ犯人に渡して、
現金の存在は気付かせずにお引き取り願うなぁ。
だって、現金の方が何かと使い勝手がよくない?(笑)
価値のある物でも、
捌き方が分からない私には、持て余すだけだし。


マイケル・キートンを見たのは、
めっちゃ久し振り。
初代バットマンも、
女を痛めつける悪役をするのね、なんて、
変な所で感心(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「ジャッジ!」 [映画]

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〔2014年/日本〕


大手広告代理店に勤務する太田喜一郎(妻夫木聡)は、
落ちこぼれクリエイター。
彼の発案するCMはセンス最悪で、
女子社員からも馬鹿にされまくり。


上司の大滝一郎(豊川悦司)は、
会社の大お得意先である竹輪会社の社長の息子が
作ったCMを、
サンタモニカ国際広告祭で優勝させる事を命じられ、
絶対無理だと、その責をすべて喜一郎に押し付ける。
カタカナにすると、名前の読みが同じだという所に目を付け。


かくして、喜一郎はサンタモニカ広告祭に
審査員として出席する事に決まる。
女性の同行者がいないと、
ゲイに間違えられると聞いた彼は、
同僚の高飛車女・太田ひかり(北川景子)に
夫婦役を演じてほしいと懇願する。
ひかりは最初は断固拒否していたが、
サンタモニカとラスベガスでギャンブルができるという理由で、
渋々受諾する。


2人はサンタモニカに着き、
広告祭の審査員たちが全員泊まっているホテルに
チェックインした。
実は広告祭の裏側は、
駆け引きで渦巻いており、
正当な評価よりコネが重要。


しかし、馬鹿正直だけが取り柄の喜一郎は、
おかしな策を弄さず、真っ直ぐ審査に取り組む。
彼は自分のCMより、
ライバル・木沢はるか(鈴木京香)が出品した
トヨタのCMこそ優勝に相応しいと、
後押しをはじめる・・・。





妻夫木君が、広告祭の裏側を描いたコメディ。


とはいえ、
この映画の「広告祭」の胡散臭さって、
他のどの「○○祭」にも通じるものがありそうだ。
例えば、映画祭だってきっと、
内情は大差ないだろう、っていうか、
もっと凄い裏がありそうだ(笑)。


まぁ、それはともかく、
広告会社勤務の駄目男を、
妻夫木君が軽い調子で演じて、
劇場内は笑いが絶えない。
一応、二枚目俳優だと認識されている妻夫木君が、
女の子たちから、「キモーい」などと陰口叩かれ、
合コンでも散々な目に遭うのが、
可笑しいやら、勿体ないやら。


それから、サンタモニカ広告祭で、
世界各国から集った審査員たちが、
共通認識している日本のイメージが、「オタク」。
「海外では絶対ウケる」とアドバイスされた妻夫木君が、
アニメのTシャツを着ていると、
それが大うけ。


私まで、
「オタクっていい・・・かも」と、
ちょっと思っちゃったよ(笑)。
今まで、そのような事を思った事さえなかったのに。
他国の人が、日本を「いい」と思ってくれるなら、
もう、アニメでもきゃりーぱみゅぱみゅでも、
何でもいいじゃないか、と。


しかも、「オタク」+「サムライ」ときたら、
もう最強。
他国の人は、それだけで平伏しちゃう感じ。
日本人で良かった。


出演者が豪華すぎ。
ほとんど通行人に近いような役の人まで、
スターが演じていて、ビックリ。
軽い映画だけど、
楽しめる事、間違いなし。


評価 ★★★★☆

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「ゾンビ ディレクターズカット完全版」 [映画]

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〔1978年/アメリカ〕


アメリカ国内では、
死者が生き返るという不可思議な現象が起き、
人々はパニックに陥っていた。


「ゾンビ」と呼ばれるこの生き物は、
人間の肉を好み、
ゾンビに噛まれた人間もまた、
ゾンビになってしまうのだ。


テレビ局に勤務するデイヴィッド・エンゲと、
彼の恋人・ゲイラン・ロス、
そして、SWAT隊員の
スコット・H・ラインガーとケン・フォーリーの4人は、
ゾンビから逃れる為に乗ったヘリコプターで、
郊外のショッピングモールに辿り着く。


モール内のゾンビを一掃し、
食料と武器を確保した4人だが、
ゾンビに襲われたラインガーがゾンビになってしまい、
フォーリーは彼を殺さざるを得ない事態となる。
その後は3人で、
しばらくの間、平穏な日々を過ごす。


しかし、生き残っていた暴走族たちが乱入、
人間同士が殺し合う事態になってしまう・・・。





統計を取ったわけではないけれど、
無数にあるホラー映画の中でも、
ゾンビが出てくる作品が一番多いのではないかというくらい、
ゾンビ映画って、よく目にする。


シリアスなもの、コメディタッチのもの、
動きが早いの、遅いの、
そして、ゾンビになった理由も、
病気やら、薬やら、霊的なものやら、
とにかく、上げていけばキリがない。


そんな無数にある現在のゾンビ映画の
元祖とも言われているのが、
本作の監督・ジョージ・A・ロメロの、
「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」で、
主人公の女性が、墓場でゾンビの襲われる内容だったと
記憶している。


そして本作は、ロメロ監督のゾンビ物第2弾という事だ。
とにかく色々なバージョンが存在するらしく、
このディレクターズカット版は139分と多少長い。
そして、映画におけるゾンビ像を確立した、
記念碑的作品でもあるという。


生き残った人間が、
ショッピングモールに辿り着くという設定が、
とても面白くて、いいと思った。


ここなら食料が沢山ある。
当分の間、生きているという安心感。
けれど、外はゾンビだらけ。
死ぬまでここから出らないのかという不安。


だから、外部から暴走族集団が襲ってきたのには、
ちょっとビックリ。
敵はゾンビではなく、
人間という事もあり得るんだなぁ、
生き残った者同士、
仲良くやろうとは思わない人々もいるんだなぁ、と。


それから、本気で、
自分がショッピングモールで一生暮らすとしたらと、
考えちゃったよ(笑)。
食料は足りるのか、
まずは腐りやすいものから食べなくては、とか、
そのうち電気も水道も止まっちゃうだろうし、
そうなったら、トイレはどうなるんだろう、とか、
家族や恋人や友人が一緒だとしても、
毎日顔を突き合わせていたら、ストレス溜まるだろうな、とか。


このような架空のホラー映画に、
何もそんなに
真剣になる事ないんだけどさ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」 [映画]

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〔2009年/アメリカ〕


ロサンゼルスのI.C.E.(移民税関捜査局)の捜査官・ハリソン・フォードは、
今日も、とある工場に踏み込んだ。
ここでは、不法滞在者が多数働いており、
全員を検挙するのが目的だ。


そこで彼は、年若いメキシコ人の女・アリシー・ブラガから、
「幼い息子のために見逃してほしい」と懇願されるが、
例外を認めるわけにはいかず、
彼女は逮捕され、国外退去となる。


アリス・イヴは女優を目指し、
観光ビザで長期滞在していたが、
偶然、グリーンカード発行判定官・レイ・リオッタと知り合い、
2ヶ月間、体を自由にさせてくれたら、
自分の裁量で永住権を与えるという言葉を信じ、
彼の言いなりになってしまう。


バングラディシュ出身の女子高生・サマー・ビシルは、
家族で不法滞在を続けているが、
学校の論文の時間に、
9.11事件に対するアラブ人としての見解を読み上げた所、
クラスメイトから大ブーイングを受ける。
そして学校から、移民局へ通報され、
強制国外退去の命が下されてしまう。


韓国人の高校生・ジャスティン・チョンは、
アメリカ永住権を獲得し、
明日にその式典を控えていたが、
不良仲間に無理矢理誘われ、
コンビニ強盗に加担する事になってしまう。


フォードの相棒・クリフ・カーティスもまた、
イラン出身の移民だ。
ある日、カーティスの妹が何者かに殺され、
その葬儀の帰りに寄ったコンビニで、
チョンたちの強盗団に遭遇し・・・。





ハリソン・フォードの警察物というから、
フォードが老体に鞭打って活躍する
平凡な内容かと思っていたら、
(そもそも、「I.C.E.」の意味が分かっていなかった自分(笑))
それは大きな間違いで、
アメリカの不法滞在者を扱った、
なかなか見応えのある群像劇だった。


先進国なら、どこの国でも、
多かれ少なかれ、不法滞在者の問題を抱えているものなのだろうが、
やはりアメリカのそれは、深刻なのだろう。


「アメリカにさえ行けばなんとかなる」という思い。
現実に「なんとかなった」人は、
ほんの少数なんだろうけれど、
やっぱり、アメリカを目指す人は多数いるという現実。


この映画は、
不法滞在者を追放する側と、
そんな彼らの人権を守ろうとする弁護士側の、
両方の立場から描かれているのも興味深い。


両親が不法滞在者だとしても、
そこで生まれた子どもはアメリカ人。
両親の祖国の言葉を話せるはずもなく、
親と一緒に追放というのは
あまりに酷ではないかというのが、
擁護する側の意見なんだ。


その弁護士役をアシュレイ・ジャドが演じ、
そして彼女はレイ・リオッタの妻だものだから、
話がさらに複雑となって面白さが増している。


ハリソン・フォードがとっても優しい。
彼は国外退去となったアリシー・ブラガの
幼い息子が気になって仕方なく、
その子を託児所から引き取って、
メキシコのブラガの実家に連れてゆく。
このエピソードは、それで終わらないのだけれど。


ただ、正直、
映画としては面白く観るけれど、
日本人の私にとって、
この問題は「肌で感じる」という風ではないのも事実。
アメリカは大好きだけど、
アメリカ人になりたいとは思わないし、
日常生活の中で、不法滞在の知り合いがいるわけでもない。


一つ言える事。
自由の国と言われるアメリカでも、
サマー・ビシルのような意見は、
口に出してはいけないのだ、という事。
9.11事件は、様々な側面があるとは思うけれど、
やっぱりアメリカ国民の前で、
攻撃した側の擁護をするのは、
結局、自分の身の破滅になるのではないかな。
学校がそれを通報するというのが、
ちょっと驚きではあったけれども。


評価 ★★★★☆

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「浮草物語」 [映画]

ukigusamonogataribenshi.jpg
〔1934年/日本〕

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昨年2013年が、
小津安二郎監督の生誕110年、没後50年というのは、
以前、こちらにも書きましたが、
お誕生日とご命日が12月12日という事で、
神保町シアターで、
11月23日から
小津監督の全作品を上映するという企画が始まり、
1月13日に終了しました。


私自身も、去年、この記念の年に勝手に便乗して、
小津監督の未見だった作品を制覇した事も書きましたが、
その作品群の中の1本、「浮草物語」を神保町にて、
先週11日に再見してきました。


というのも、
自宅鑑賞と違い、
このサイレント映画に、
弁士さんとピアノの生伴奏が付くというのです。
小津監督の映画を劇場で観るのも初めて、
そして、サイレント映画に弁士さんと伴奏が付くというのも
初めての体験で、
とても楽しみにしていた企画です。


この日の弁士さんは、坂本頼光さんという男性のかたで、
今まで60本ほどの作品を手掛けてきたと、
パンフレットに書かれています。
映画が始まり、最初は、
「なるほど、弁士さんってこんな感じなんだ」と思いながら
観ていたのですが、
そのうちにスクリーンと坂本さんの声が
頭の中でピッタリ重なり、
その場で坂本さんが話されている事など忘れてしまうくらい、
のめり込んでしまいました。


それは洋画の日本語吹き替え版とはまた違う、
独特の世界で、
感情を込めて語られる坂本さんのセリフ回しは、
「浮草物語」が持つ、
笑いと悲哀にも、とても合っていると感じました。


そして、ピアノの伴奏は柳下美恵さん。
サイレント映画専門のピアノ奏者さんのようで、
どんなジャンルの映画でもこなされるとの事。
この日も、映画の1シーン1シーンに、
素晴らしくマッチした演奏を付けてくださり、
気持ちが大変に盛り上がりました。


本当に素晴らしい体験ができた事を
嬉しく思っています。
今の映画に音声が付くのは当たり前ですが、
昔の人は、このような形で映画を楽しんでいたのだなぁと、
自分が生まれる前の時代に、
思いを馳せたりもしました。


なんだか上手い事が書けない自分が残念なのですが、
機会があったらまた、
弁士さん付きでサイレント映画を観てみたいと思っています。
映画はまだまだ奥が深いと思い知り、
これからももっともっと色々な作品に出会いたいという気持ちを
強くしています。

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