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「小さいおうち」 [映画]

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〔2014年/日本〕


一人暮らしの老婆・布宮タキ(倍賞千恵子)は、
親類の大学生・健史(妻夫木聡)から
自叙伝を書くことを勧められ、
大学ノートに思い出を綴ってゆく。
そこに書かれていたのは、
タキが女中奉公した「小さなおうち」での日々であり、
タキの青春そのものだった・・・。


昭和11年。
山形から上京したタキ(黒木華)は、
旦那様の雅樹(片岡孝太郎)と、
美しい奥様・時子(松たか子)、
そして坊ちゃんの恭一が暮らす、
赤い屋根のモダンな「小さなおうち」の平井家で
女中奉公として働く事になる。


家族は穏やかで優しく、
タキにとっては、とても働きやすい環境。
ずっとこの家のお世話になりたいと思うほどに。


ところが、ある年の新年会に
客の一人としてやって来た、
雅樹の会社の部下・板倉正治(吉岡秀隆)の出現により、
「小さなおうち」のバランスが崩れ始める。
他の客たちと違って、
どこか浮世離れした板倉に、
時子は強く心惹かれていったのだ。


雅樹が仕事で不在の嵐の夜、
家にやってきた板倉に、
時子は自分の気持ちを抑えきれず、
咄嗟にある行動に出る。
それは2人の気持ちを決定的にさせる行為でもあった。


その後、2人の仲は深くなり、
それを知るのはタキだけ。
しかし、少しずつ、
人々の噂が広がり始め、
タキは悩み・・・。





このブログを始めた最初の頃、
この原作を読んだ感想を書いたせいか、
ちょっと思い入れのある作品。
その時は映画化されるとは思っていなかったけれど。


よく考えてみると、
裕福な人妻の不倫という、
重いテーマを扱っているはずなのに、
全くギラギラした感じがなく、
サラッとしている。


これは原作でも感じた事なので、
映画のせいではなく、
作品が持つ雰囲気そのものなのであろう。
それをきっちり表現した本作は、
そういった意味では凄い。


不倫がいいとは思わないけど、
時子の気持ちは少し理解できる。
夫にしても、夫の会社連中にしても、
話題といえば、
会社や、戦争や、女の話ばかり。


そんな中、
映画や音楽を解する板倉は、
そりゃあ、魅力的だろう。
男性同士の中では、
多少浮いた存在だとしても。


それから、この作品の醍醐味は、
「小さなおうち」での出来事ではなく、
その後にあると思う。


戦争が激しさを増し、
「小さなおうち」にいられなくなったタキは、
一度、山形に帰る。
終戦後、また上京したタキは、
一家に起こった出来事を知る。


そして現代。
タキの自叙伝を読んだ健史が体験する、
一連の出来事は、
私の心を刺激してやまない。
こういった過去を辿るお話は、
この作品に限らず、とても好き。


評価 ★★★☆☆

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