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「痴人の愛」 [映画]

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〔1949年/日本〕


サラリーマンの河合譲治(宇野重吉)は、
大変に真面目で堅物、
会社では「君子」などとあだ名を付けられ、
あの様子じゃ女も知らないだろうと囁かれている。


しかし、それは表向きの顔。
実は譲治には、隠し女・ナオミ(京マチ子)がおり、
家に住まわせているのだ。


ナオミは妖艶で奔放、蠱惑的な女で、
譲治が神戸へ出張した際、
カフェーで出会い、
あまりのその魅力に、
何とか無理して東京に来てもらったのだ。


譲治には夢があった。
1人の若い女を磨き上げ、
理想の妻にするという夢。
その為、彼は、
ナオミの外見はもちろん、
教養を付けさせる事にも一所懸命だ。


英語を習わせ、ピアノのレッスンにも行かせている。
しかし、外見は理想に通りになるものの、
勉強の方はまるで進まず、譲治を苛立たせる。
ただ、そんな時も、
ナオミに甘えられると、最後に謝るのは譲治だった。


譲治はナオミの大抵の我儘を許し、
男友達たちと遊び歩く事も認めていた。
ただそれは、一線を越えないという、
最低限のルールを守っていると信じているからだ。


しかし、何度も嘘をついては、
男と密会するナオミに、
譲治の堪忍袋の緒が切れてしまい・・・。





谷崎潤一郎原作の「痴人の愛」。
何度も映画化されているうちの1本で、
以前、安田道代と小沢昭一が、
ナオミと譲治を演じたのを観た事がある。


私が京マチ子さんを好きなせいもあるけれど、
京さんのイメージがナオミにとても合っているように思われる。
それから、譲治役を宇野重吉さんが演じるというのも、
雰囲気を盛り上げる。


というのも、
小沢さんだと、女を拾って飼うくらい、
してもおかしくない気がするけれど、
(ごめんなさい、あくまでもイメージです)
朴訥そうな宇野さんだと、逆にリアリティがあって。
(それもイメージね)


京さん演じるナオミは譲治に、
「パパ~、スクーター買って買って~」などと、
欲しい物をねだる。
いくらナオミの我儘を許しているとはいえ、
譲治の収入にも限界がある。
そんな金は無いと言ってはみるものの、
ナオミはその美しい肢体で迫り、
結局は買わせてしまう。
すごい芸当だわ(笑)。


ナオミの男友達たちが、
終電を逃したと押しかけてきて、
2人の寝室で雑魚寝する場面もある。
私だったら耐えられないと思っていたら、
案の定、譲治はいたたまれず、
部屋から出ていった。
ナオミは、ちょっとだけ「ヤバい」という顔をした気がするけど、
それでも意に介さないという姿勢は崩さない。


ラストは原作とは正反対のオチ。
この映画を作った誰かが、
原作のオチに納得がいかなかったのかと、
勝手に想像した。


私も、もしかしたら、
ナオミという女があまり好きではないのかもしれない。
私にこの映画を作らせてもらえるとしたら、
原作とも、この映画とも違う、
第三のオチをつけて終わらせる気がする。
もちろん、妄想するだけだけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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