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「麦子さんと」 [映画]

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〔2013年/日本〕


アニメショップで働く小岩麦子(堀北真希)は、
パチンコ屋の店員をする兄・憲男(松田龍平)と2人暮らし。
両親は離婚し、父親に育てられた2人は、
母親の記憶は殆どなく、
父も3年前に死んだ。


ある日、麦子が家に帰ると、
憲男が玄関先で中年の女と押し問答していた。
わけがわからずにいた麦子だったが、
その女こそ、自分たちを捨てて出て行った母・彩子(余貴美子)で、
このマンションに引っ越してきたいと訪ねてきたのだと知る。


結局母は、マンションに住む事になり、
その代わりのように、憲男は同棲するため出ていった。
父と離婚して以来、会いに来ようともしなかった母を
母とは思えず、
麦子のストレスはピークに達し、酷い言葉を投げかけてしまう。


しかし、そんな母は実は末期癌で、
あっけなく亡くなる。


母の納骨をするため、
母の故郷にやってきた麦子に、
すれ違う中年の男女はみんな驚くような視線を向けた。
若かった頃の彩子は、
アイドル歌手を目指すほどの器量よしで、
町の大人気者。
そして、今の麦子にソックリだと言うのだ。


昔の母を知る、大勢の人と接するうちに麦子は・・・。





泣いちゃった。


突然やって来た、
顔も知らない実母。


そこには、憎しみさえ介在しない。
憎むほどの思い出もないのだから。
一緒に暮らし始めたとは言っても、
麦子にとってそれは、
見知らぬ中年のおばさんと突然同居を始めた感覚で、
何もかもが、戸惑いとウザさの連続で。


余貴美子演じる母が、
ものすごく嫌な女だったり、
虐待の過去があったりするなら、
感想も変わってくるんだろうけど、
彼女は本当に良い人なんだな。


しかも、兄は隠していたけど、
この母は毎月15万円のお金を、
兄妹の為に送金していた事も分かってくる。
母は1度だって、子供の事を忘れた事はないのよ。


目覚まし時計を大音響でかけたり、
麦子に来た、入学案内の封書を勝手に開けてしまったりと、
多少、無神経な所もあるけれど、
麦子が怒ると
謝ったり、シュンとしたりして、
可愛い。
親だからという理由だけでふんぞり返ったりしない所に、
とっても好感が持てる。


一番泣けたのは、
母が体調不良を押して、
麦子の作ったトンカツを「美味しい美味しい」と食べた場面。
ああ、愛するってそういう事なんだな。
大切に思っている人が作ってくれた料理を、
食べない理由なんてありはしない。


結局、麦子の母に対する恨みは、
「一度も会いに来てくれなかったこと」
これに尽きる。


けれどそれも、母の故郷で、
母の友人たちと接していくうちに、
人にはそれぞれ事情があるという事に気付き、
自分の精神の幼さを痛感する麦子。


でも麦子は、若いから仕方ないよ。
私なんかいい年していまだに、
「人にある、それぞれの事情」なんてものを
慮る事なく、
言葉を発しちゃう事があるもの。
本当に気を付けねば。


松田聖子サンの「赤いスイートピー」が、
劇中、重要な歌として流れる。
これは泣けるよ。


評価 ★★★☆☆

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