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「野火」 [映画]

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〔1959年/日本〕


田村一等兵(船越英二)は、
フィリピン・レイテ島で野戦病院に入院するが、
大した事はないと診断され、隊に戻ってくる。


しかし、食糧が不足した隊は、
彼が帰ってくることを許さず、
再び病院に行けと命じられる。


病院でも追い払われ、
行き場を無くした彼は、
病院前で野宿する、似た立場の兵隊たちの
仲間に加わる。


すると、田村の元いた隊も病院も、
米軍の攻撃を受けて壊滅。
助かった彼は、
遠くに見える教会を目指して歩き出す。


教会がある場所は、
小さな集落だったが、
人影はなく、日本兵が多数死んでいた。
そこへ、現地の男女が一組やって来て、
隠してある塩壺を取り出した。


田村は女を射殺し、
男を脅して、その塩を手に入れる。


塩を持った彼は、
日本軍の集結地、パロンポンを目指す事にした。
パロンポンへの道は、
日本兵で溢れ、大きな行進の列ができており・・・。





戦争も末期となった、
フィリピンでの兵隊の様子を描いた、
暗く重い映画。
監督は市川崑。


まずは戦争中、この映画の田村のような、
「はぐれ兵隊」がいたのかと、
その事に驚く。


入院先からは追い出され、
隊に帰れば病院に戻れと言われ、
異国の戦地で、一体彼はどうすればいいのか、
私だったら、途方に暮れてしまう。


ここでの兵隊たちは誰もが皆、
疲れ切っているように見える。
戦う事に疲れたのではなく、
ダラダラと意味なく続く、
戦争そのものに、
そして、食糧もほぼ尽き、
自分の仲間でさえ、隊から追い出さねばならないような状況に。


冒頭から、田村の上官は、
田村に向かって、
辟易するくらい、ものすごく長いセリフをまくし立てる。
それ自体がもう、
どこか精神をやられている人のようで、
とても上手い演出だと思った。


病院前で知り合った2人の兵隊、
安田(滝沢修)と永松(ミッキー・カーチス)と、
途中からまた合流した田村だけれど、
彼らが、「猿」を殺して食べながら、
生き長らえていると知る。


けれど、田村は一度も「猿」など見かけた事はない。
実はそれは・・・という話で。


映画の中で、一度も、
「戦争は嫌だ」とか、そんなセリフは出てはこないけれど、
演じる俳優さんたちが、
体でそれを表現しているようだ。


船越英二は、この映画に出る為に絶食し、
めちゃくちゃ痩せた体で撮影に臨んだそうだ。
確かに、いつもの彼とは全く違う人のようで、
事前に知らなければ、彼だとは気付かなかったと思う。
彼のギラギラした、それでいて達観したような瞳が
印象的だった。


評価 ★★★☆☆

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