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「正義のゆくえ I.C.E.特別捜査官」 [映画]

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〔2009年/アメリカ〕


ロサンゼルスのI.C.E.(移民税関捜査局)の捜査官・ハリソン・フォードは、
今日も、とある工場に踏み込んだ。
ここでは、不法滞在者が多数働いており、
全員を検挙するのが目的だ。


そこで彼は、年若いメキシコ人の女・アリシー・ブラガから、
「幼い息子のために見逃してほしい」と懇願されるが、
例外を認めるわけにはいかず、
彼女は逮捕され、国外退去となる。


アリス・イヴは女優を目指し、
観光ビザで長期滞在していたが、
偶然、グリーンカード発行判定官・レイ・リオッタと知り合い、
2ヶ月間、体を自由にさせてくれたら、
自分の裁量で永住権を与えるという言葉を信じ、
彼の言いなりになってしまう。


バングラディシュ出身の女子高生・サマー・ビシルは、
家族で不法滞在を続けているが、
学校の論文の時間に、
9.11事件に対するアラブ人としての見解を読み上げた所、
クラスメイトから大ブーイングを受ける。
そして学校から、移民局へ通報され、
強制国外退去の命が下されてしまう。


韓国人の高校生・ジャスティン・チョンは、
アメリカ永住権を獲得し、
明日にその式典を控えていたが、
不良仲間に無理矢理誘われ、
コンビニ強盗に加担する事になってしまう。


フォードの相棒・クリフ・カーティスもまた、
イラン出身の移民だ。
ある日、カーティスの妹が何者かに殺され、
その葬儀の帰りに寄ったコンビニで、
チョンたちの強盗団に遭遇し・・・。





ハリソン・フォードの警察物というから、
フォードが老体に鞭打って活躍する
平凡な内容かと思っていたら、
(そもそも、「I.C.E.」の意味が分かっていなかった自分(笑))
それは大きな間違いで、
アメリカの不法滞在者を扱った、
なかなか見応えのある群像劇だった。


先進国なら、どこの国でも、
多かれ少なかれ、不法滞在者の問題を抱えているものなのだろうが、
やはりアメリカのそれは、深刻なのだろう。


「アメリカにさえ行けばなんとかなる」という思い。
現実に「なんとかなった」人は、
ほんの少数なんだろうけれど、
やっぱり、アメリカを目指す人は多数いるという現実。


この映画は、
不法滞在者を追放する側と、
そんな彼らの人権を守ろうとする弁護士側の、
両方の立場から描かれているのも興味深い。


両親が不法滞在者だとしても、
そこで生まれた子どもはアメリカ人。
両親の祖国の言葉を話せるはずもなく、
親と一緒に追放というのは
あまりに酷ではないかというのが、
擁護する側の意見なんだ。


その弁護士役をアシュレイ・ジャドが演じ、
そして彼女はレイ・リオッタの妻だものだから、
話がさらに複雑となって面白さが増している。


ハリソン・フォードがとっても優しい。
彼は国外退去となったアリシー・ブラガの
幼い息子が気になって仕方なく、
その子を託児所から引き取って、
メキシコのブラガの実家に連れてゆく。
このエピソードは、それで終わらないのだけれど。


ただ、正直、
映画としては面白く観るけれど、
日本人の私にとって、
この問題は「肌で感じる」という風ではないのも事実。
アメリカは大好きだけど、
アメリカ人になりたいとは思わないし、
日常生活の中で、不法滞在の知り合いがいるわけでもない。


一つ言える事。
自由の国と言われるアメリカでも、
サマー・ビシルのような意見は、
口に出してはいけないのだ、という事。
9.11事件は、様々な側面があるとは思うけれど、
やっぱりアメリカ国民の前で、
攻撃した側の擁護をするのは、
結局、自分の身の破滅になるのではないかな。
学校がそれを通報するというのが、
ちょっと驚きではあったけれども。


評価 ★★★★☆

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