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「おしゃれキャット」 [映画]

osharecat.jpg
〔1970年/アメリカ〕


1910年。パリ。


お金持ちの老婦人・ボンファミーユさんは、
母猫・ダッチェスと、
ダッチェスの3匹の子供、
マリー、トゥルーズ、ベルリオーズを
自分の子供のように可愛がっていた。


天涯孤独のボンファミーユさんは、
弁護士・オートクールさんを家に呼び、
遺言状の作成を始めた。


その内容とは、
「自分の全財産を、まずは4匹の猫たちに譲り、
 猫たち亡き後は、執事・エドガーに譲る」というものだった。
財産は自分が貰えるものだと思い込んでいたエドガーは、
ダッチェスたちのミルクに眠り薬を入れ、
バイクで、遠くに捨ててしまう。


目覚めると、そこが今まで来た事のない場所だった事に
驚くダッチェスと子供たち。
そこへ通りかかったのが、野良猫・オマリー。
オマリーは、親切で勇敢なオス猫で、
困っているダッチェスたちを、
なんとかパリに送り届けようとする。


かくして、彼らのパリまでの旅が始まる・・・。





可愛い♪
可愛い上にオシャレ。
私は特にディズニー信者ではないけれど、
やっぱり凄いなぁと感心してしまう。
それから、
洋画の邦題は時に、「勘弁して」と思うものがあるけれど、
これはピッタリで、
そちらにも感心。


猫の持つ、しなやかさ、
自由な感じがとてもうまく描かれて、
映像も綺麗。
主人公のダッチェスは母としても素晴らしいし、
そして何より、
3匹の子猫たちがめっちゃ可愛い。


特に女の子のマリー。
ダッチェス譲りの美貌を持ったマリーだけど、
まだ小さくて、抱きしめたくなる。
マリーが川やトラックから落ちる場面は、
本気でハラハラしてしまう。


それから、オマリーがいいんだな。
彼は野良猫だけど、
野卑ではなく、とても紳士で優しい。
人間だったら、理想の男だわ(笑)。


ダッチェスとオマリーは、
旅の途中で、とてもいい雰囲気になって、
夜空の下で、寄り添う。
そして、これを見て嬉しそうな子どもたち。


これはお国柄の違いだけど、
そういった所に一番、
日本とアメリカの違いを感じる。
1970年の日本のアニメに、
母親が、男性と仲良くなるなんて内容のものが、
あったんだろうか。
まして、それを子供が見守るなんて。
どちらがいい、というわけではないのだけれど。


エドガーのラストの扱いについても、
これなら納得。
というのも、
以前レビューに書いたけれど、
「美女と野獣」の悪役のラストの運命が、
どうしても好きになれなかったから。
まぁ、どちらも大差ないのかもしれないけれど、
決定的に違うところがある。


ディズニーアニメの中では、
あまり有名でないかもしれない本作だけど、
もっと多くの方に観てほしいです。


評価 ★★★★☆

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「カックン超特急」 [映画]

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〔1959年/日本〕


トラック運転手の平助(由利徹)と、
彼の助手・信吉(南利明)のコンビは、
ある日、所長から東京行き特急便の
仕事を任され、
さらに給料まで上がると知らされ、大喜び。


平助が家に帰ってそれを女房・あき(花岡菊子)に告げると、
彼女も大喜び。
ささやかな祝杯をあげる。
信吉の恋人・邦枝(池内淳子)も喜んでくれた。


翌日、出発するトラックに、
なぜか邦枝が乗り込んできた。
信吉が、ついでだから実家に送ってやると、
約束したのだ。
イチャつく信吉と邦枝に、
平助は当てられっぱなし。


その後も、身投げか?と思われる女と遭遇したり、
ヒッチハイクの美女軍団に食い逃げされたりと、
散々な目に。


そんなこんなで時間ばかり食って、
荷物を待っている先方は怒り心頭。


やっと着いた荷物の届け先は映画の撮影所だった。
平助がトラックから降りると、
なぜかスタッフが平助を映画のセットに連れていった。
平助は、スター・由利徹(本人二役)にソックリだったため、
間違えられたのだ。


かくして平助は映画、「国定忠治」に出演する事になり・・・。





なんとも馬鹿馬鹿しいコメディだけれど、
あはは~と観てしまう。


由利徹さんて、
なんて面白いんだろう。
この映画も、
そして、他の殆どの作品を観ても、
いつもエロ全開で、
でもなぜか不快ではなく、笑っちゃう。


それは楽屋でも同じだったそうで、
彼がエロトークを始めると、
周囲の女性たちは、
嫌がるどころか、
もっと話してほしいとせがんだそうだ(笑)。


これは誰にでもできる芸当ではない。
セクハラは、
「何をされたか」ではなく、
「誰にされたか」が問題だと言われるけれど、
その典型的な例であろう。


この映画でも、
トラブルの全ては女絡みという、
由利さんらしいお話し。


なんと彼は、13歳の時に今の女房を妊娠させ、
家庭を持ったという早熟っぷりで、
38歳にして、25歳の息子がいるという設定。
その息子にまで、女の子をひっかける手ほどきをする始末(笑)。


彼のコテコテの東北弁が素晴らしい。
朴訥で、のんびりした感じが、
なんだか心を許してしまう。
東北弁の詐欺師には騙されやすいというのも、
分からないではない気がする。


信吉の恋人が池内淳子さんだと、
これを書き始めて知って、ビックリ。
綺麗な人だとは思ったけれど、
全然気付かなかった。
今、その場面だけ見直したけど、
やっぱりご本人。
信吉とイチャイチャイチャイチャ、
私の知っている大女優の池内さんとは
別人のようだったわ(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「野火」 [映画]

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〔1959年/日本〕


田村一等兵(船越英二)は、
フィリピン・レイテ島で野戦病院に入院するが、
大した事はないと診断され、隊に戻ってくる。


しかし、食糧が不足した隊は、
彼が帰ってくることを許さず、
再び病院に行けと命じられる。


病院でも追い払われ、
行き場を無くした彼は、
病院前で野宿する、似た立場の兵隊たちの
仲間に加わる。


すると、田村の元いた隊も病院も、
米軍の攻撃を受けて壊滅。
助かった彼は、
遠くに見える教会を目指して歩き出す。


教会がある場所は、
小さな集落だったが、
人影はなく、日本兵が多数死んでいた。
そこへ、現地の男女が一組やって来て、
隠してある塩壺を取り出した。


田村は女を射殺し、
男を脅して、その塩を手に入れる。


塩を持った彼は、
日本軍の集結地、パロンポンを目指す事にした。
パロンポンへの道は、
日本兵で溢れ、大きな行進の列ができており・・・。





戦争も末期となった、
フィリピンでの兵隊の様子を描いた、
暗く重い映画。
監督は市川崑。


まずは戦争中、この映画の田村のような、
「はぐれ兵隊」がいたのかと、
その事に驚く。


入院先からは追い出され、
隊に帰れば病院に戻れと言われ、
異国の戦地で、一体彼はどうすればいいのか、
私だったら、途方に暮れてしまう。


ここでの兵隊たちは誰もが皆、
疲れ切っているように見える。
戦う事に疲れたのではなく、
ダラダラと意味なく続く、
戦争そのものに、
そして、食糧もほぼ尽き、
自分の仲間でさえ、隊から追い出さねばならないような状況に。


冒頭から、田村の上官は、
田村に向かって、
辟易するくらい、ものすごく長いセリフをまくし立てる。
それ自体がもう、
どこか精神をやられている人のようで、
とても上手い演出だと思った。


病院前で知り合った2人の兵隊、
安田(滝沢修)と永松(ミッキー・カーチス)と、
途中からまた合流した田村だけれど、
彼らが、「猿」を殺して食べながら、
生き長らえていると知る。


けれど、田村は一度も「猿」など見かけた事はない。
実はそれは・・・という話で。


映画の中で、一度も、
「戦争は嫌だ」とか、そんなセリフは出てはこないけれど、
演じる俳優さんたちが、
体でそれを表現しているようだ。


船越英二は、この映画に出る為に絶食し、
めちゃくちゃ痩せた体で撮影に臨んだそうだ。
確かに、いつもの彼とは全く違う人のようで、
事前に知らなければ、彼だとは気付かなかったと思う。
彼のギラギラした、それでいて達観したような瞳が
印象的だった。


評価 ★★★☆☆

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「ジャージの二人」 [映画]

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〔2008年/日本〕


真夏のある日。
会社の辞めてしまった32歳の堺雅人は、
54歳の父・鮎川誠に誘われ、
北軽井沢の別荘に行く。


別荘とはいっても、
小さな山荘のそこで、
二人はジャージに着替え、
ひたすらダラダラした時を過ごす。


堺の妻・水野美紀は、
どうやら好きな男がいるらしく、
堺はその事を気にしつつも、
ケータイの電波さえ入らない山の生活では、
どうする事もできない。
固定電話もあるけれど、
事情を知らない鮎川に、その事を知られたくはない。


1年後。
今年の夏は、鮎川と堺に加えて、
水野も別荘にやって来た。


水野は男と別れたと言ったが、
実はそれは嘘だと分かり、
夫婦の仲は冷えている。
水野は3日間滞在しただけで東京に帰ってゆく。


入れ替わりのように、
鮎川と再婚相手の間に出来た娘・田中あさみが
やって来る。
夏休み中、沢山の映画を観るつもりだという田中だが、
ソフトのレンタル店までは車で1時間、
そしてなにより、この別荘にはプレーヤーがない・・・。





長嶋有さんの原作は読んでいる。
とてもユルい物語だったと記憶しているけれど、
映画も、原作以上にユルかった(笑)。


とにかく、なーんにも起こらない。
別荘に行って、ジャージに着替えた、
もう若くもない父と息子が、
ダラダラするだけ。
でも退屈はしなかったけど。
映画のダラダラ波長に合わせて、
こちらもダラダラ観ていると、
いつの間にか時間が流れてしまう。


二人は別に、スローライフとかエコとか、
そんな物に興味やポリシーがあるわけではなく、
何となく来ちゃった、としか言いようがない感じで、
そこでの時を過ごす。


堺は、田舎道で、
女子高生が右手を高く掲げている姿を目撃して、
「一体何をしているのか」と不思議に思うのだけれど、
そのあたりで、ケータイの電波が入るのは、
その場所だけなのだと知る。


面白いなぁ。
田舎だって都会だって、
やっぱり女子高生は女子高生なんだよね。
彼女たちにとって、
ケータイはもう、生活になくてはならない物になってる。


私はケータイにそこまでの執着はないけど、
ビデオレンタル店がないと知って怒った、
田中あさみの気持ちは分かるわ(笑)。


それから、そんな物質的な事より、
堺雅人と水野真紀の夫婦関係が、
やっぱり気になる。


水野は別荘近くを堺と散歩中、
そっと堺の腕に、自分の腕を絡ませるんだけど、
堺はそれを振りほどくんだな。


確かに不倫をしている水野は、
堺にとって最悪の妻で、
そうしたくなる気持ちも分かるんだけど、


でも、ちょっと悲しかった。
もしかしたら、彼女にとってその行動は、
自分から堺に歩み寄ろうとする気持ちからなのかも
しれないのに。
まぁ、仕方ないんだけど。


評価 ★★★☆☆

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「アジャパー天国」 [映画]

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〔1953年/日本〕


キャバレーのウエイター・ズンさん(伴淳三郎)は、
ラブレターの代筆を副業としている。


彼と同じオンボロアパートの住人・土井浩一(高島忠夫)は、
近所の金持ち令嬢・千春(星美智子)と恋仲だったが、
千春の母・茂子は、2人の仲を絶対に認めない。


千春の父・篤雄(花菱アチャコ)は、
婿養子で、いつも茂子にやり込められ、
小さくなって暮らしている。
篤雄は浩一と千春の駆け落ちを応援し、
ズンさんのアパートに匿う。


ズンさんの兄・キンさん(柳家金語楼)は、
ズンさんのアパートに住む田所ゆき(清川虹子)に惚れているが、
ゆきは、戦地に行ったきり帰らない夫・稔(田中春男)の
復員を信じており、
娘と2人、日々祈るような気持ちで暮らしている。


実は稔は、とうに日本に帰ってきていた。
しかし、ヤクザの仲間になってしまったため、
ゆきに会わせる顔がなく、帰れずにいるのだ。


しかし、ある日、思い切ってゆきのアパートに行った稔は、
ゆきが再婚していると勘違いし、
再びヤクザの組に戻ってしまう・・・。





タイトルから、
もっとハチャメチャな内容かと想像していたら、
思っていたより真っ当な人情喜劇で、
それなりに面白かった。


そもそも、「アジャパー」って、
何だろう?どういう意味?と思っていたけれど、
まぁ、深い意味はない、
掛け声のようなものなのかもしれない。
伴淳三郎さん演じるズンさんが、
何か驚いた時に「アジャー」と発しているから、
そういった時に咄嗟に出る言葉として使えるのかも。
(ごめんなさい、ハッキリとは分からない(笑))


とにかく登場人物が多くて、
その人々がみんな知り合いというのはご愛嬌。
知り合いを辿って行ったら、
大きな円ができそうだ(笑)。


そして、その多くの人たちが、
恋しているのが可愛い。
メインの恋は千春と浩一だけど、
ズンさんも、キンさんも、
千春の兄も、女中も、
キャバレーの花売り娘も。


夫の復員を待ちわびるゆきだって、
夫に恋してるみたいだ。
ある意味、彼女が一番一途で素敵。


ラブレターの代筆を副業とするズンさんが書いたものが、
ズンさんの片思いする女の子に送られていたのが、
ちょっと切ない。
女の子がその手紙を見せると、
ズンさんは、手紙を読まずに、
内容を諳んじて、女の子が驚くのよ。


ラストに、キャバレーで大乱闘が起きて、
そこが面白いという方も多いようだけれど、
私は、この内容にドタバタは必要ない気がしたな。
最後まで人情喜劇な方が、個人的には好き。


古川緑波さんとか、トニー谷さんとか、
名前は知ってるけど、
その芸の面白さを知らないというのが、
とっても残念で。
それを知っていたら、
もっともっと楽しめたと思うのだけれど。


評価 ★★★☆☆

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