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「忍者秘帖 梟の城」 [映画]

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〔1963年/日本〕


天正9年。
織田信長により、
壊滅させられた、伊賀の忍者。


忍者の一人、葛篭重蔵(大友柳太郎)は、
両親を殺され、妹も自害し、
自分だけが生き残ってしまう。
彼は師匠の下柘植次郎左衛門(原建策)、風間五平(大木実)らと、
何とか逃げ延びる。


信長への復讐を決心していた重蔵だが、
天下は豊臣秀吉へ移行し、
目的のなくなった彼は、読経の日々。


そんな重蔵に下柘植は、
秀吉暗殺こそが、
伊賀の復興に繋がると口説く・・・。





最近の派手な映画を見慣れてしまった目には、
忍者が城に忍び込む場面の、
あまりの原始的な方法に笑ってしまう。
もちろん、それが現実なんだろうけど、
忍者というより、忍者ごっこをしているみたいで、
可愛くさえある(笑)。


お城の中も、
とても煌びやかとは言えず、
なんだか薄汚れた感じさえする。
でも、もしかしたら、
実際はこんなものだったのかもと、そんな風にも思える。


秀吉の寝室にたどり着き、
初めて秀吉の顔をまじまじと見た葛篭重蔵は、
秀吉が想像外に老いぼれていた事に驚くのだが、
それって悲しいねぇ(笑)。
天下を取るような剛の者でも、
老いには勝てないという事か。


評価 ★★★☆☆

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「ロボジー」 [映画]

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〔2012/日本〕


五十嵐信次郎、73歳。
妻を亡くした独居老人。
偏屈で頑固な彼は、
帰省してきた娘・和久井映見一家を愛しながらも、
優しい言葉がかけられない、ちょっと困ったお爺さん。


場面は変わり、
ある家電メーカーに勤務する3人の冴えない男、
濱田岳、川合正悟、川島潤哉。
彼らは社長から、二足歩行のロボットの開発を命じられ、
困り果てていた。
ロボット博覧会に出せるような物を作る事が
どうしても出来ないのだ。


博覧会までにもう日にちがない。
切羽詰った彼らは、
ロボットの中に人間を入れ、
何とか博覧会の1日を乗り切ればいいと考え、
中に入ってくれる人を募集し、オーディションする事を決める。


そのオーディションに五十嵐が応募してくる。
若者ばかりの中で、彼は目立った存在で、
濱田たちは、最初は相手にしていなかったが、
適当な人材がおらず、
消去法で五十嵐が選ばれる。


博覧会当日、“ニュー潮風”と名付けられたロボットに入った五十嵐は、
一通りのパフォーマンスをこなし、
ショーは無事終わるかに思えたが、
事故により、倒れてきた太い柱から、
女子大生・吉高由里子を咄嗟に救った事から、
翌日のワイドショーでその模様が取り上げられ、大反響。
“ニュー潮風”は国民的人気者になってしまう・・・。





まず、五十嵐信次郎の芸達者ぶりに驚いた。
五十嵐信次郎とだけ聞いた時は、
誰の事だか分からなかったが、
ミッキー・カーチスの別名だ。


ミッキー・カーチスは名前だけは知っている。
過去の事は知らないのでイメージだけだが、
カッコつけたおじさんだとずっと思っていた。
ところがである。
淋しい一人暮らしの老人役が本当にハマっていたし、
コミカルが動きも物凄く可笑しい。
爆笑とは違うけれど、クスクス笑える感じ。


事情を知らされずにロボットに入った五十嵐は、
ワイドショーを見て仰天して、
「詐欺の片棒担がされた」と激怒するんだけど、
濱田たちを見捨てきれなくて、
4人で各地を周るんだな。
腹を決めた五十嵐は意外とちゃっかりしていて、
贅沢三昧の、経費使いたい放題(笑)。
濱田たちとのお食事の差は、
今思い出しても笑える。


濱田たちのドタバタぶりも可笑しい。
五十嵐が助けた吉高由里子は、
大変なロボットオタクで、大学の工学部の学生。
彼女は濱田たちに、
大学で“ニュー潮風”完成までの苦労話などを講演してほしいと、
申し込んでくる。
大学は学生の熱気で溢れ、
質疑応答では、
濱田たちが知りもしないような専門用語が飛び交い、
しまいには濱田たちそっちのけで、
議論が始まる。
学生たちの熱心な様子が、私にはとても気持ち良くて、
焦る濱田たちには申し訳ないけれど、
なんだかホッとできる場面であった。


もしこんな事が現実にあって、
それが世間に知られたら、
大騒ぎになるだろと思う。
ラストは上手くまとめてあるけど、
あんなに上手くいくのかは、ちょっと疑問(笑)。


エンドロールで、
Styxの「Mr. Roboto」が流れ出し、
「めっちゃカッコいい。誰が歌ってるんだろう」と思ったら、
これも五十嵐。
正式なバンド名は、
「五十嵐信次郎とシルバー人材センター」らしい。
いいね、とっても。


評価 ★★★☆☆

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「ヒミズ」 [映画]

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〔2012年/日本〕


中学3年生の染谷将太は、
池のほとりで貸しボート屋を営む母と2人暮らし。
母は染谷がいても平気で男を連れ込むようなアバズレ女。


父親・三石研は時々やって来る。
その度に、染谷を虐待する。
体への暴力も激しいが、
それ以上に、言葉で彼を傷つける。
我が子への発言とは思えないような、
染谷の命に関わる内容を、
何度も何度も何度もしつこく、
楽しそうに話す。


染谷のクラスメイト・二階堂ふみは、
染谷に片思いし、何かと彼に関わろうとする。
染谷は彼女に全く興味を示さないが、
二階堂は勝手に染谷の家に出入りし、
彼の境遇を知るようになる。


ボート屋の前には、
震災の被災者が住むテントが3つある。
そこで暮らす人は皆、
染谷の味方で、
何かと彼を気に掛けてくれていた。


母が突然男と蒸発した。
やって来た父にそれを告げると、
またいつものいたぶりが始まった。
染谷は衝動的に、父の頭にブロックを振り下ろす・・・。





ラスト数分まで、何もいい事が起こらず、
激しく落ち込んだ。
時々、深く息をしないと観ていられないような、
そんな感じ。


観ているうちに、
命なんて、本当にどうでもいいものだという気になってくる。
生きるとか、死ぬとかが、
それほど重要な事なのかって。
それって、やはり三石研の言葉が原因なのだろうか。
これは映画だというのに、
三石の言葉と態度が、心に突き刺さってしまったようだ。


染谷将太に関わる二階堂ふみに、
いつもの私なら、
「早く家に帰りなよ」とイライラする所であろうが、
実は彼女も、家庭に異常な問題を抱えている。
染谷と一緒にいる方がまだマシかと思える、その環境。


他にも、ヤクザの組長やその舎弟、
テントに住む老人と関わるスリの男、
通り魔の男など、
真っ当な人間は誰一人出てこない。
何が普通なんだか、感覚が麻痺してくる。


しかし、ラスト。
まるで試されているかのような場面のあと、
私の心にある感情が湧き上がってきた。
それは理屈ではなく、
本当に自然な気持ちであり、
「これが私の答えなんだろうな」と思える事でもあった。
あの場面で、
他の観客の皆さんの心には、どんな感情が湧いてきたのだろう。
まだ誰とも話せていないが。


評価 ★★★☆☆

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「フローズン・リバー」 [映画]

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〔2008年/アメリカ〕


アメリカとカナダの国境の町。
15歳と5歳の息子を育てるメリッサ・レオは、
新しいトレーラーハウスを買う為に貯めた金を、
ギャンブル狂いの夫に持っていかれ、
激しい怒りに駆られていた。


夫を探しに先住民保留地にあるギャンブル場に行ったレオは、
そこで働く、モホーク族の女・ミスティ・アップハムに、
車を盗まれそうになり、詰め寄る。
しかし、アップハムから、
「このタイプの車はある“仕事”に使える。その仕事をすれば大金が手に入る」と
聞かされ、心を動かされる。


“仕事”というのは、凍ったセントローレンス川を車で渡り、
カナダ側にいる人間をトランクに入れ、
アメリカに不法入国させるという犯罪だった。
凍った川を車で渡るのは、大変に危険な行為で、
レオは躊躇するが、
金の為にアップハムと組む決意をする。


一見ふてくされているだけに見えるアップハムも、
実は悲しい問題を抱えていた。
彼女は夫を川で亡くし、
生れたばかりの赤ちゃんを、
姑に取られてしまったのだ。
子供を取り戻すために、金は絶対に必要で、
彼女も必死なのだ。


何度か犯罪を成功させた2人だが、
「これで最後」と決めた仕事で、
ある事件が起こってしまう。
2人の女はどうなるのか・・・。





「凍った川を車で渡る」
その行為自体が、
この映画の内容をそのまま現しているといえる。
何の保証もない、
誰も助けてくれない、
危険極まりない、
めちゃくちゃ不安定な、登場人物たちの人生。


これは犯罪物だけれど、
犯罪以上に深く描かれているが、母性。
2人の子供を抱えるメリッサ・レオは、
夫を当てにする事をとっくに諦め、
何とか自分の力だけで子供を育てようと、
その痛々しいまでの日々が観ている側にも伝わってくる。


彼女の体に多数ある入れ墨から、
若い頃はヤンチャしていたであろう事が窺えるが、
15歳の息子には、
何としても悪い道に進ませないようにと願うその気持ちが、
会話の端々から、強く感じられる。


ミスティ・アップハムにしても、
1歳になる息子を、
自分の手で育てたい気持ちは、
何よりも強い。


最初は反目し合っていた2人が、
犯罪とはいえ、行動を共にするうちに、
ある種の情が自然に湧いてくる所が、
私はとても好き。


ラスト、レオはアップハムの為に、
ある決断をするのだが、
それがとても感動的で、
また、ベストの選択だったと思える内容。


メキシコ側からの不法入国というのは、
何度も見聞きした話であるが、
カナダ側からでも、このような事があるのだと、
ちょっと驚いた。


凍てついた景色も見所。
今の季節に観るにはピッタリだ。


評価 ★★★★☆

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「ビーグル犬 シャイロ」 [映画]

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〔1996年/アメリカ〕


少年マーティは、ある日、利口なビーグル犬と出会う。
マーティの家は裕福とは言えない現状。
「お前を飼うことは出来ない」と話し掛けるが、
犬は家まで付いてくる。


犬を見たお父さんは、
これは町外れに住むジャドの飼い犬だと言い、
返しに行く。
しかしジャドは、マーティの目の前で犬を蹴り上げる。
彼は、猟犬として役に立たない上に逃げ出した犬への躾だと、
平然として言うのだった。


犬がまたマーティの家に逃げてくる。
犬に“シャイロ”と名付けたマーティは、
なんとか自分の家で育てられないものかとお父さんに相談するが、
お父さんは、「法律的にも、犬はジャドのものだ」と、
厳しく言い放つ。


シャイロが何度目かに逃げ出してきた時、
マーティは思い余って裏山の小屋にシャイロを隠し、
両親に内緒で世話をする事にする。


しかし、シャイロは野良犬に襲われ大怪我を負い、
それがジャドに知られる事になってしまう・・・。





シャイロが、まるで台本を読んでいるんじゃないかと思えるくらい利口で、
場面場面で期待通りの動きをするのが凄いし、
本当に可愛い。


お父さんは、マーティがどんなに頼んでも、
厳しい姿勢を崩さず、ブレがない。
私にはそれが、とても気持ちのいいものに感じられた。
マーティもお父さんを恨む様子もなく、
「分かってはいるけれど・・・」といった感じ。


これは大人の事情だけれど、
ジャドは、どう見ても関わり合いになりたくない人物だ。
町の人からも嫌われている。
けれど、お父さんはそれを理由にはしない。
あくまでも正攻法でマーティを説得する。


ジャドはジャドで、
虐待されていた子供時代を話す。
ハッキリは言わないけれど、
自分の名前を書く事も難しいように見受けられた。
彼には彼の事情があるのだろう。


マーティは獣医さんから助言を受け、
何とかジャドからシャイロを買い取ろうと、
彼なりの努力をする。
動物物だけど、少年の成長物とも言える。


評価 ★★★☆☆

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