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「フローズン・リバー」 [映画]

frozenriver.jpg
〔2008年/アメリカ〕


アメリカとカナダの国境の町。
15歳と5歳の息子を育てるメリッサ・レオは、
新しいトレーラーハウスを買う為に貯めた金を、
ギャンブル狂いの夫に持っていかれ、
激しい怒りに駆られていた。


夫を探しに先住民保留地にあるギャンブル場に行ったレオは、
そこで働く、モホーク族の女・ミスティ・アップハムに、
車を盗まれそうになり、詰め寄る。
しかし、アップハムから、
「このタイプの車はある“仕事”に使える。その仕事をすれば大金が手に入る」と
聞かされ、心を動かされる。


“仕事”というのは、凍ったセントローレンス川を車で渡り、
カナダ側にいる人間をトランクに入れ、
アメリカに不法入国させるという犯罪だった。
凍った川を車で渡るのは、大変に危険な行為で、
レオは躊躇するが、
金の為にアップハムと組む決意をする。


一見ふてくされているだけに見えるアップハムも、
実は悲しい問題を抱えていた。
彼女は夫を川で亡くし、
生れたばかりの赤ちゃんを、
姑に取られてしまったのだ。
子供を取り戻すために、金は絶対に必要で、
彼女も必死なのだ。


何度か犯罪を成功させた2人だが、
「これで最後」と決めた仕事で、
ある事件が起こってしまう。
2人の女はどうなるのか・・・。





「凍った川を車で渡る」
その行為自体が、
この映画の内容をそのまま現しているといえる。
何の保証もない、
誰も助けてくれない、
危険極まりない、
めちゃくちゃ不安定な、登場人物たちの人生。


これは犯罪物だけれど、
犯罪以上に深く描かれているが、母性。
2人の子供を抱えるメリッサ・レオは、
夫を当てにする事をとっくに諦め、
何とか自分の力だけで子供を育てようと、
その痛々しいまでの日々が観ている側にも伝わってくる。


彼女の体に多数ある入れ墨から、
若い頃はヤンチャしていたであろう事が窺えるが、
15歳の息子には、
何としても悪い道に進ませないようにと願うその気持ちが、
会話の端々から、強く感じられる。


ミスティ・アップハムにしても、
1歳になる息子を、
自分の手で育てたい気持ちは、
何よりも強い。


最初は反目し合っていた2人が、
犯罪とはいえ、行動を共にするうちに、
ある種の情が自然に湧いてくる所が、
私はとても好き。


ラスト、レオはアップハムの為に、
ある決断をするのだが、
それがとても感動的で、
また、ベストの選択だったと思える内容。


メキシコ側からの不法入国というのは、
何度も見聞きした話であるが、
カナダ側からでも、このような事があるのだと、
ちょっと驚いた。


凍てついた景色も見所。
今の季節に観るにはピッタリだ。


評価 ★★★★☆

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コメント 2

yonta*

なんだか勝手にとても怖い映画だと思ってました・・
でも、凍った川を車で渡るのは、想像だけでとても怖いですよね。
今度観てみようと思います(^^)
by yonta* (2012-01-19 22:16) 

青山実花

yonta*さん

私も、殺人か何かが起こるのかと、
勝手に想像していました(笑)。

犯罪ものではあるけれど、
重大なのはそこではなく、
女たちの葛藤に重きが置かれています。
ぜひぜひご覧になって下さいね。
by 青山実花 (2012-01-20 15:48) 

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