「ヒミズ」

〔2012年/日本〕


中学3年生の染谷将太は、
池のほとりで貸しボート屋を営む母と2人暮らし。
母は染谷がいても平気で男を連れ込むようなアバズレ女。


父親・三石研は時々やって来る。
その度に、染谷を虐待する。
体への暴力も激しいが、
それ以上に、言葉で彼を傷つける。
我が子への発言とは思えないような、
染谷の命に関わる内容を、
何度も何度も何度もしつこく、
楽しそうに話す。


染谷のクラスメイト・二階堂ふみは、
染谷に片思いし、何かと彼に関わろうとする。
染谷は彼女に全く興味を示さないが、
二階堂は勝手に染谷の家に出入りし、
彼の境遇を知るようになる。


ボート屋の前には、
震災の被災者が住むテントが3つある。
そこで暮らす人は皆、
染谷の味方で、
何かと彼を気に掛けてくれていた。


母が突然男と蒸発した。
やって来た父にそれを告げると、
またいつものいたぶりが始まった。
染谷は衝動的に、父の頭にブロックを振り下ろす・・・。





ラスト数分まで、何もいい事が起こらず、
激しく落ち込んだ。
時々、深く息をしないと観ていられないような、
そんな感じ。


観ているうちに、
命なんて、本当にどうでもいいものだという気になってくる。
生きるとか、死ぬとかが、
それほど重要な事なのかって。
それって、やはり三石研の言葉が原因なのだろうか。
これは映画だというのに、
三石の言葉と態度が、心に突き刺さってしまったようだ。


染谷将太に関わる二階堂ふみに、
いつもの私なら、
「早く家に帰りなよ」とイライラする所であろうが、
実は彼女も、家庭に異常な問題を抱えている。
染谷と一緒にいる方がまだマシかと思える、その環境。


他にも、ヤクザの組長やその舎弟、
テントに住む老人と関わるスリの男、
通り魔の男など、
真っ当な人間は誰一人出てこない。
何が普通なんだか、感覚が麻痺してくる。


しかし、ラスト。
まるで試されているかのような場面のあと、
私の心にある感情が湧き上がってきた。
それは理屈ではなく、
本当に自然な気持ちであり、
「これが私の答えなんだろうな」と思える事でもあった。
あの場面で、
他の観客の皆さんの心には、どんな感情が湧いてきたのだろう。
まだ誰とも話せていないが。


評価　★★★☆☆

コメント 6

やっぱり観るのに勇気いりますね・・
とても興味はあるのですが、あとひきずってしまいそうで、
全然観たことないんです。園子温監督作。
でも、ラスト気になります。観てこようか迷います（苦笑）。
by yonta* (2012-01-19 22:04) 

yonta*さん

私も園子温監督はまだまだ初心者ですので、
立派な事は言えないのですが、
いい意味でも悪い意味でも、
心に残りますね。

私ももう少し何本か観てみます(笑)。
by 青山実花 (2012-01-20 15:53) 

原作漫画が我が家にあります。
エログロの漫画でした＾＾
最近物忘れが激しくて、どんなラストだったか
覚えてません。たしか救いようのないラストだったような。。
by don (2012-01-21 19:49) 

donさん

原作をお持ちですか。
私もとても興味はあるのですが、
映画がこれじゃ、
原作はもっと強烈なのではないかと、
躊躇しています・・・。


by 青山実花 (2012-01-21 22:54) 

はー（ため息）、やっと観ました。
園監督、次の作品がもうすぐ公開ですよね。
なので、先に観ておきたいなと。

青山さんが、「時々、深く息をしないと観ていられない」と
おっしゃっていたの、すごくわかりました。
私も、ほとんど息してなかったんじゃないかって・・
酸欠状態っぽくて、頭が重いです（笑）。
染谷くんが、あまりに殴られるので、力入って肩凝ったし^_^;

二階堂ふみが演じた茶沢さんは、なんて強い子。
彼女の環境も相当ひどいものなのに、
あんなにまっとうな心を保てるなんて。
でも、ひどい環境のなかで、住田くんの
言葉と存在が、一すじの光だったのでしょうね。

かなり覚悟して観たので、
（映画観るのにそんなに覚悟いるって、どうよって感じですが・・）
想像していたよりは、ダメージを受けずに済みました（笑）。
なんだかんだいって、観てよかったです。
by yonta* (2012-10-07 18:21) 

yonta*さん
コメントありがとうございます。

観られましたか。
園監督の映画は、「園監督の映画を、今から観るぞ！」という
心構えが必要ですね(笑)。

そうそう、そうなんですよね。
息をするのを忘れちゃうような感じで。
染谷将太の生きている環境が、
あまりに劣悪すぎて。

殺されてもいい人が、この世にいるとは思いませんが、
三石研には、殺意を覚えました。
たとえ親だって、人が人にあんな事を言い続けていれば、
いずれどんな事になるのか、考えろって言いたくなります。

二階堂ふみさん、家庭環境のわりに真っ当ですね。
時々、世の中って、子供の方がちゃんとしているのかもって
思う事があります。
キレやすい老人なんてのも、話題になったりしますし、
それより、子供の方がずっときちんと挨拶したりしますものね。

この映画は一筋の希望が見える映画でしたね。
ではでは、次はいよいよ「冷たい熱帯魚」ですね(笑)。
（って、勝手に決めてごめんなさい(笑)）。

by 青山実花 (2012-10-09 14:49)