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「恋の罪」 [映画]

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〔2011年/日本〕


渋谷区円山町。
ラブホテルが建ち並ぶこの界隈の中にある、
取り壊し寸前の廃墟のようなアパートで、
女の遺体が見つかる。
手足を切られ、
マネキンを継ぎ足されたその状態から、
猟奇殺人ではないかと思われた。


捜査に当たる女刑事、水野美紀は、
彼女自身も人妻でありながら、
夫以外の男との肉体関係に溺れていた。


場面は代わり、
流行作家、津田寛治の妻、神楽坂恵は、
夫の異常なまでの潔癖症に耐え、仕えてはいたが、
息が詰まりそうな閉塞感に苦しんでいた。
彼女は気晴らしにパートに出るが、
そこで怪しげな女にスカウトされ、
アダルトビデオに出演するようになってしまう。


しかし女としての自信を得た神楽坂は、
生気を取り戻したように明るくなり、
派手な服を着て、渋谷を彷徨う。


彼女はナンパしてきた男と円山町のホテルに入った帰り、
その界隈で立ちんぼをしている女、冨樫真と知り合う。
冨樫は、昼は一流大学の助教授、
夜は街娼という二つの顔を持っていた。


冨樫に触発された神楽坂は、
性の深みにハマってゆく・・・。


遺体の身元は誰なのか。
3人の女はこの先、どこへ進むのか・・・。





園子温監督が、「東電OL殺人事件」にインスパイアされて
作ったという、この映画。
私自身、あの事件にはずっと強い関心を寄せていたし、
これからもずっと、事あるごとに思い出すであろう、
殺害されたOL、A子さん。


しかし、本を何冊読んでも、
A子さんの本当の事は何も分からず、
飢餓感が募るばかりであるのも事実。
なぜなら、彼女は日記などは何も残しておらず、
本に書かれている事は、
結局は憶測でしかない。
誰にも、A子さんの本当の気持ちなど分かりはしない。


高学歴で一流企業に勤務していたA子さん。
年収だって相当あったであろう彼女が、
仕事帰りに円山町の街角に立ち、
1回数千円で売春をして、
しかも、一日4人以上の客を取る事を、
自分に課していたという、驚くべき事実。


彼女の心を理解する事はできないけれど、
普段被っている仮面を取って、
別の場所で、別の自分になりたかったのではないかと、
そんな風に思ったりもする。


私に、A子さんのような事は出来ないが、
やっぱり変身願望ってある。
日常を抜け出して、非日常の世界へ。
映画を観る事だって、
退屈な毎日から、せめてほんの数時間、
脳内だけでも、別の自分になりたいんじゃないかって、
そんな風に分析してみたりもする。
現実逃避。


と、まぁ、A子さんの事はいいとして、この映画。
最初から凄い緊張感。
女優さんの裸と性行為の連続。


津田寛治と神楽坂恵のやり取りからして、
ピンと張り詰めた空気の糸がいつ切れるかと、
怖ろしくて、逃げ出したくなる。


A子さんに相当する役を演じる、冨樫真の体がまた、
あばら骨が浮き出すくらい細くて、胸も貧弱で、
相当痩せていたと言われるA子さんのイメージと重なって、
恐いくらいだった。
豊満な神楽坂との対比も面白い。


冨樫は、「愛のない性交をする時は、必ず金をもらわなければ駄目!」と、
爬虫類を思わせるようなメイクで、
神楽坂に言う。
神楽坂は、街角で自分に声を掛けてきた男に
「いくらくれる?」と聞き、
「金取るのかよ、売春婦じゃん」と立ち去る背中に、
一つの教訓を得る。
「男はタダで性交させる女より、金を払わせる女を蔑む」と。
つまり男は、たとえナンパでも、
いっとき、擬似恋愛を楽しみたいという事か。


冨樫の母親、大方斐紗子の演技が凄すぎて、
爆笑だ。
あれは必見。


特に中身があるとも思わないけれど、
2時間半圧倒され続ける。
終わった後は、ものすごく疲れた。


評価 ★★★★☆

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