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◆苦役列車◆ [本]


苦役列車

苦役列車

  • 作者: 西村 賢太
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2011/01/26
  • メディア: ハードカバー


主人公、北町貫多、19歳。
その名前からも、それが著者の分身である事は
間違いないと思われる。


貫多は、性犯罪を犯した父親を持ち、
そのせいばかりではないだろうが、
中学卒業後、進学せずに、
日雇労働で生きている。
日払いの金で飯を食い、
金が無くなるとまた日雇労働に出掛ける。
友人も恋人もなく、
母親に時々金を無心するだけの日々。


そんなある日、
労働現場に向かうバスの中で、
同世代の若者に声を掛けられる。
専門学校生だという、その若者との付き合いは、
久し振りに貫多に「友達ができた」と実感させる。


しかし、2人の環境はあまりにも違い過ぎた。
親の金で学校に行き、
青春を謳歌する若者と、
犯罪者の息子である自分。
2人の間に、次第に齟齬が生じる。


暗い話には違いないのだけれど、
私はこれを他人事とは思えなかった。
性別も、育った境遇も、生き方も、
貫多と自分は全く違うけれど、
貫多の心にある孤独感は、
誰もが持ち合わせているんじゃないか、と。


貫多のような人生にならなかったのは、
運が良かっただけだ。
自分だって明日の事は分からない。


これが著者の19歳の姿なら、
現在どうしているのかが大変に気になってしまうが、
44歳の西村さんは、
作家として成功している。
youtubeで見られる、
TV出演時のトークは爆笑してしまうくらい面白い。


本作は、来年、森山未來で映画化されるようだ。
それは楽しみなのだが、
原作にはないアイドルを登場させるという情報を知り、
正直ガッカリな気分だ。


別にその人物自身がどうこうというのではないが、
この原作にアイドルが入る隙間は無いでしょう。
何故そういう事になるのか。
いや、観てみたら意外といいのかもしれないから、
あまり余計な事は言えないのだけれど。

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