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「放浪記」 [映画]

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〔1962年/日本〕


幼い時からずっと貧しい生活をしてきた林芙美子(高峰秀子)は、
本を読む事だけが楽しみの女である。
母親と行商をしながら生計を立ててはいるが、
金は身につかず、食べる物にも事欠く有様だ。


母娘で暮らす下宿屋の隣室に住む定岡信雄(加東大介)は、
芙美子に惚れており、
金を貸してくれたり、食べ物を分けてくれたりするが、
芙美子は彼に興味を示さない。


カフェ勤めを始めた芙美子は、
彼女が書いた詩を、客として来ていた劇作家、伊達春彦(仲谷昇)に気に入られ、
さらに彼と恋仲になり、一緒に暮らし始める。


しかし、色男ではあるが、
生活力が無く、女にだらしない伊達が、
部屋で、日夏京子(草笛光子)という女と抱き合っている場に居合わせ、
部屋を飛び出してしまう。


その後、芙美子の書いた詩が新聞で評価され、
それがきっかけで、作家、福地貢(宝田明)を知り合い、
また恋に落ち、一緒に暮らし始める。
しかし福地も、売れない作家で、収入は殆ど無く、
芙美子に辛く当たるなど、生活は荒む一方だった。


そんなある日、女性向け雑誌社から、
芙美子と京子の作品のうち、
どちらか出来の良い方を掲載すると言われ、
必死になる芙美子。
そこで芙美子の書いた「放浪記」が採用され、
有名女流作家としての、芙美子の人生が始まるだった。





林芙美子という人が、本当にそうだったのか、
演出なのかは分からぬが、
彼女がとても嫌な女に描かれているように思えてならない。


元々、高峰秀子は、
あまり色気のある女優ではないが、
それにしても、
貧乏に疲れ切ったその態度、投げやりな言葉遣い、
観ている方まで嫌な気分になる。


男選びの学習能力の無さも致命的だ。
色男、優男に目が無く、
しかし、そんな男は決まって働く能力が無く、いつも腹を空かせ、
喧嘩が絶えない。
ハンサムでなくても、
定岡のような男を選んだら、
安定した生活が送れるだろうに、
それは嫌なようだ。


彼女の作品は、
貧乏を売りにしていると
陰で酷評されているが、
それが飯の種になるのだから、
なんだか矛盾して可笑しい。


京子との作品対決にしても、
芙美子は、ある姑息で卑怯な手段を使い、
勝利を勝ち取るのである。
最後まで、好きになれない主人公であった。


評価 ★★★☆☆

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「ザ・ライト エクソシストの真実」 [映画]

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〔2011年/アメリカ〕


実家が葬儀屋を営んでいる事から、
幼い頃から死と向き合ってきたコリン・オドナヒュー。


彼は神学校に進むが、神父になるつもりはないと教師に告げる。
それを惜しいと考えた教師は、
バチカンにあるエクソシスト養成講座を受けてみないかと提案し、
それを承諾したオドナヒューはイタリアへと渡る。


悪魔の存在に懐疑的なオドナヒューは、
講座には今一つ身が入らなかったが、
一流のエクソシストであるという神父、アンソニー・ホプキンスを紹介され、
彼の家へと赴く。


ちょうどそこへ、ホプキンスが悪魔祓いを手懸けている
妊娠中の16歳の少女が来たため、
オドナヒューは、その儀式に立ち会う事となる。
悪魔に取り付かれたという少女の様子を
目の当たりにしたオドナヒューだが、
それでもそれは、精神的な病気ではないかという疑いを捨て切れず、
ホプキンスに対しても、
どこか冷めた気持ちで接していた。


しかしその後、何度も彼の儀式に立会い、
また、その後起こった事実は、
悪魔の存在を認めざるを得ないものであった・・・。





私は、1973年の映画、「エクソシスト」が大好きだ。
ホラーとか、そうじゃないとか、
そんなジャンル分けはどうでもよくて、
とにかく映画として好きなのだよ。


それから、アンソニー・ホプキンスも大好き。
だから、「エクソシスト」とアンソニー・ホプキンスのコラボ(?)と聞いて、
じっとしていられずに、
この映画をとても楽しみにしていたのだな。


シリアスな内容ではあるが、
笑ってしまう場面も多い。
ホプキンスが悪魔祓いをしている最中、
なんと彼のケータイが鳴り、
出てしまうホプキンス。
悪魔祓いしてる人がケータイて(笑)って。


そして、初めて見た悪魔祓いの儀式が、
意外とあっけなく終わってしまった事に対して、
「首が回ったり、緑色のゲロを吐くと思っていたのかい」と、
オドナヒューに語りかけるホプキンス。


そうだ、そうだよ、
それこそが、73年の「エクソシスト」の最大の見せ場であり、
それはオドナヒューに向けて発した言葉ではあるが、
彼を通して、観客に言っているように感じられて、
あははははは~と心で大笑い。


首が回って、緑のゲロ吐くのが、
悪魔に取り付かれた人の
特徴なんでしょ?って、
あの「エクソシスト」は、人々に悪魔のイメージを
勝手に定着させてしまったようだよ。
グリーンピースすりつぶしただけなのに(笑)。


ちなみに、この映画では、
もっとビックリするような違う物を吐いてはいたが(笑)。


アンソニー・ホプキンスは、
前作、「ウルフマン」にしても、この作品にしても、
なんだかとても楽しそうに演じているように感じられてならない。
もしかして彼って、
被り物やコスプレが好きなのかと、そんな風に思えてくる。


キリスト教の土台が自分には無いし、
日本で悪魔に取り付かれた人って聞いた事ないしで、
見終わった後も、
悪魔ってものがよく分からない私だけれども、
エクソシストというだけで、点数甘いかも(笑)。


評価 ★★★★☆

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◆憎悪の依頼◆ [本]


憎悪の依頼 (新潮文庫)

憎悪の依頼 (新潮文庫)

  • 作者: 松本 清張
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1982/09
  • メディア: 文庫



図書館に行き、
毎回ではないのだが、
時々、思い出したように
松本清張の棚の前に行く。


松本清張の、
大抵の本は読んでいるつもりだけれど、
それでもまだまだ未読の作品があるし、
読んでいるのに、
忘れて、また同じ本を借りてしまい、
少し読み進めて、思い出す事もある。


これは、今まで一度も読んだ事のない短編集だが、
味わい深い一冊である。
絵画の世界の贋作について書かれた話や、
絵葉書に写り込んでいた少女を探す男の話や、
大臣になった男が、40年も前に別れた女を忘れずにいる話などなど、
推理小説の枠を超えて、
興味深い物語が詰まっている。


松本清張って、
生涯にどれくらいの小説を書いたのだろう。
読んでも読んでも、
まだ読んでいない本があるのだから、
その数は相当であろう。
凄い人だ。

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「デンジャラス・ビューティー」 [映画]

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〔2000年/アメリカ〕


サンドラ・ブロックは、FBIの捜査官。
化粧っ気無し、髪はボサボサ、色気ゼロ、 
でも力は男よりあるって女。


予告をしては事件を起こす連続爆破犯から、
今度はミスコン会場で爆弾を仕掛けるとの通告を受けたFBIは、
潜入捜査として、なんとブロックをミスコンの候補者に仕立てて、
探りを入れることを命令する。


ブロックは驚いて嫌がるが、
長年ミスコンの業界にいて、
女の子を美しくする天才、マイケル・ケインが彼女を手掛ける事に。
するとどうでしょう。
ブロックは、ものすごく綺麗な女に仕立て上げられるんだな。


そんな自分を嫌悪し、
そして、他の出場者たちを、
どこか軽く見ていたブロックだけど、
出場者たちが意外と優しく、
知性もあると知って、見る目を変えてゆく。
そしていよいよ、爆破犯逮捕に流れが動き出す。





読め読めな展開ではあるけれども、
思っていたよりずっと面白かった。
続編まで出来た理由が分かる気がする。


以前からサンドラ・ブロックの事は、
ゴツい姐さんだなーと思っていたのだけれど、
この映画では、それが役にとても上手く生きていて
ハマり役だ。 


「サンドラ・ブロックがどんなにしても綺麗に見えない」との
ご意見も一部あるようだが(笑)、
私にはとても美しく感じられた。
やりたくない事を必死にこなす、その姿勢にも
好感が持てる。


マイケル・ケインもいい!
女の子を綺麗にする魔術師。
業界を裏の裏まで知り尽くしたゲイの役がピッタリ。


ブロックが小型カメラを隠して、
ミスコン出場者の楽屋やパーティに潜入すると、
その様子を裏で見ている同僚の男性刑事たちは、
大喜び。
そりゃあ嬉しいだろうよ(笑)。


評価 ★★★★☆

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「麦秋」 [映画]

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〔1951年/日本〕


原節子は28歳。
この時代にしては、多少の嫁き遅れ感のある娘である。


両親、兄、兄嫁、兄の二人の子供たちと暮らしている。
家族は原の結婚を気に掛けているが、
本人は意外と呑気で、
あまりその気もないらしく、のほほんとしている。


しかし、そんな彼女に縁談が持ち込まれる。
なかなか立派な紳士という触れ込みで、
家族は喜ぶのだが、
相手が40歳だと知り、
母親と兄嫁は急に乗り気でなくなる。
あまりにも年が離れていて、
原が可哀相だというのだ。


一方、原の兄の同僚で、
妻に死なれ、母親と娘がいる男が近所に住んでいる。
彼の秋田への転勤が急に決まった。
彼の母は、転勤の前日に家に来た原に、
「あなたのような人が息子の嫁になってくれたら」と言うのだが・・・。





本筋とは関係ないのだが、
この時代の人々は、いい意味でとても強かったんだなぁ、と、
それが私が一番の強く感じた事。


原と友人たちの会話を見ていても、
結婚している組と、していない組の会話が、
今の女性たちなら「傷ついた」と怒って帰りそうな内容なのである。
“大手小町“あたりに書いたら、「非常識」と非難の嵐が起こりそうな、
そんな会話。
しかし彼女たちは、特に気にする風でもなく、
楽しそうだ。


兄嫁にしても、夫の両親や妹と、何の疑問もなく同居し、
原とも実に上手くやっているのである。
「同居は絶対に嫌!」なんて事は決して言わない、
というより思ってもいない。


何もかもに恵まれすぎて、
逆に忘れてしまった何かが、
ここにあるような気がしてならない。
とても良い映画だ。


評価 ★★★★☆

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