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「小さな中国のお針子」 [映画]

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〔2002年/中国・フランス〕 


1970年代の中国。
リィウ・イエとチュン・コンの青年二人は、
親が反革命分子だった事から、
「再教育」の名の下に、中国の山深い奥地の村へ
送り込まれる。


険しい山々が連なるその地域で暮らす人々は、
文字を知らず、バイオリンを見る事も初めてであった。


イエとコンは過酷な労働を強いられるが、
ある日、“仕立て屋”と呼ばれる老人の孫娘、ジュウ・シュンを出会う。
“ちいさなお針子”と呼ばれる彼女の美しさに惹かれた二人は、
文盲の彼女に文明を教えたいという思いから、
西洋の書物を鞄一杯に持っていた別の若者から、
その鞄を盗み出す事に成功する。


バルザックやトルストイなど、それらの禁じられた書物たちは、
彼らにとっては宝の山といっていいものであり、
洞窟に隠した本を読み漁り、
シュンに物語を聞かせ、
読み書きを教える。


また、彼らは村人たちにも、
書物からヒントを得て創作した物語を語って聞かせ、
村は彼らが来る前より、モダンな空気が流れ出す。
さらに、シュンはコンを次第に愛し合うようになる。


しかし、村以外の知識を与えられた結果、
人がどのようになるのか、
イエとコンは、まだ分かっていなかった。


そして27年後。
青春時代を過ごしたあの村が、
ダムの底に沈むと知ったイエとコンは再会し、
シュンの現在を知りたいを願うのだが・・・。





全くの無垢の状態から、
新しい風を吹き込まれると、
人がどのようになるのか、
この映画は、その一例であろうか。


西洋の知識や考え方、文明が、
必ずしも人を幸せにするわけではないという、
月並みだが、それがこの映画の結論であろう。


しかし、
生まれて初めて、知識というものに触れ、
真綿が水を吸い込むように、
それらを吸収してゆくシュンの様子は羨ましくもあった。
私も子どもの頃は、
今よりもずっと心が柔らかく、
どんな書物を読んでも、
どんな映画を観ても、
本気でときめいたり、驚いたりした事を思い出す。


子どもに戻りたいとは決して思わないが、
何かに向き合う時は、
そんな気持ちを忘れずに取り組みたいと、
陳腐だが、そんな風に思う。


中国の景色が壮観。
村人以外、人間の手が入っていない自然の美さに見とれた。
しかしそれも、ダムの底に沈むのか。
あーあ。


評価 ★★★☆☆

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◆風花◆ [本]


風花

風花

  • 作者: 川上 弘美
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/04/02
  • メディア: 単行本


村上弘美の小説は、
なんだかいつも「かさかさ」しているように感じられる。
脂が抜けているような感じ。


本作も、
主人公の“のゆり”は、
夫に浮気され、
浮気相手の女から呼び出されたり、
また別の浮気相手の女から、
何度も無言電話を掛けられているのに、
それでも、焦る様子もなく、
題名のようにふわふわした女だ。


しかし、終わりの頃になって、
“のゆり”は反撃に出る。
それは、今まで穏やかだった彼女の、
精一杯の抵抗であり、
やりたい放題だった夫が、
慌てたように、
彼女に歩み寄ろうとする様子に
なんだか溜飲が下がった。


やっぱり、
「堪忍袋の緒が切れる」ってあるんだろう。
どんなに我慢強い女でも。


ただ、私はこんな男女関係って嫌だな。
互いに、物凄く気を使い過ぎてる。
一緒に暮らしているなら、
くだらない事に笑ったり、
ダラダラしたり、
したい。
それが出来ない相手じゃ、疲れる。

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