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「図々しい奴」 [映画]

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〔1964年/日本〕


岡山県の片田舎。
馬小屋で生まれた為、
キリストにちなんで切人(きりひと)と名付けられた、
戸田切人(谷啓)。


生家は極貧で、父親とは早くに死に別れ、
母親も今日死んだ。
たった一人で、母親の遺体を山に埋めにいった切人は、
見合いを嫌がって家を飛び出した、
岡山城城主の伊勢田家の跡取り息子、直政(杉浦直樹)と出会う。


切人と直政は、妙に馬が合い、
直政は切人を城に連れて帰り、
書生として彼の面倒をみる事になる。
さらに、城に向かう途中、
捨て子の赤ちゃんを拾い、
マリアと名付けたその子も一緒に引き取るのであった。


城を嫌って東京に出た直政を頼り、
切人も上京、
彼は直政の紹介で、羊羹屋の老舗、虎屋で働く事になる。
虎屋の令嬢、美津枝(佐久間良子)は人妻であったが、
直政と愛し合っており、
離婚は時間の問題であった。


虎屋で羊羹作りの極意を学んだ切人は独立、
女体を模した羊羹を作り、
これが大成功。
陸軍の兵隊にも大いに喜ばれる。


ところが羊羹が原因で
食中毒を出してしまい、
営業停止の憂き目に遭い、
さらに、召集令状が来てしまう・・・。





切人は、題名ほどには図々しくはなく、
むしろ、とても気を使っているように、
私には見えた。


これなら同じクレージーキャッツの、
「無責任シリーズ」の植木等の方が、
よほど図々しい。


切人は美しい美津枝に惚れているのに、
尊敬する直政の恋人である彼女に、
決して手を出そうとはしない。
美津枝の方から体を差し出した時も、
据え膳食わない。
女の私でさえ、勿体無いと思うほどに。


原作は柴田錬三郎の同名小説。
映画は、切人が戦争に行くまでで終わっている。
「続・図々しい奴」に続くのは明らかだ。


たぶん続きでは、
切人がその図太さを発揮して、
のし上がってゆくのであろう。
捨て子のマリアも絡んできそうだ。
そちらも必ず観たい。


評価 ★★★☆☆

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◆光媒の花◆ [本]


光媒の花

光媒の花

  • 作者: 道尾 秀介
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2010/03/26
  • メディア: 単行本



第6章まである短編集。
前の章で脇役だった人が、
次の章で主役になるという手法。
大変に面白くて、あっと言う間に読んだ。


1章から3章までは、
犯罪が絡む物語で、暗い。
最後までそれで進むのかと思われたが、
4章以降、希望の光が見える。


特に5章と6章は、
もっと膨らませば、
それだけで一冊の小説になりそうなくらいの
深みを感じたし、
行間から滲み出る物悲しさにも圧倒された。


大人の都合で翻弄させられる子どもが
全ての章に出てくる。
子どもが無力なのは仕方ないけれど、
不幸な子どもの話は辛い。


私には男の兄弟はいないけれど、
姉と弟の組み合わせっていいな、とあらためて感じさせられる
内容でもあった。

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