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「夏の終り」 [映画]

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〔2012年/日本〕


昭和30年代。年末。
染色家の相澤知子(満島ひかり)の家に、
木下(綾野剛)という、
若い男が訪ねてくる。


その時、知子は外出中で、
応対したのは、
中年の作家・小杉(小林薫)。


小杉は既婚者だが、
知子との仲は妻公認で、
関係は8年続いている。
彼はきっかり週の半分ずつ、
両方の家を行き来している。


実は木下は、
12年前、知子と恋に落ち、
知子は彼の為に、夫と子供を捨て、
2人で駆け落ちした仲だった。


年が明け、
木下からの電話を受け取った知子は、
再び彼と関係してしまう・・・。





映画や小説の不倫や三角関係、四角関係は、
物語を盛り上げるために必要不可欠。
大いにやってほしい、と思う(笑)。


人生は短い。
我慢ばかりしていたら、
あっという間に年を取ってしまう。
好きなように生きなきゃ損よ(笑)。


しかし、
損だとは思っていても、
現実には、色々制約があって、
なかなか行動に移せないのも事実だから、
せめて、映画の主人公には
暴れてほしい。
こちらの願望を叶えてほしい。


そういう意味で、
この映画の主人公・知子さんは、
自由奔放。
中年のおっさんの愛人をしながら、
若い恋人と復縁して、
どちらの男も、
彼女を絶対手放したくないってんだから、
羨ましい話だわ(笑)。
全員が納得ずくなんだから、なにも問題はない。
(もちろん、修羅場はあるけれど)


恋愛に関してだけ、
大変にストイックで、潔癖だけれど、
他の面で、
「それって、人としてどうなのよ?すんげー迷惑行為じゃん」と思う
行動をしている人もいるし、


逆に、
異性関係は派手だけれど、
他の面ではとても真っ当で、
尊敬できる人も知っている。


つまりは、世の中には色々な人がいて、
一つの面だけでは、人は判断できない。
ストレスを解消する場所が
違うだけ。


私は上記のどちらの人にも、
強い友情の気持ちを持っているし、
それはずっと変わらないと思うし、
そもそも、私だって、自分で気付いていなくても、
トンデモ行動しているはずで、
でも、日々、許されて生きている。


原作は瀬戸内晴美さん。


評価 ★★★☆☆

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「怒り」 [映画]

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〔2016年/日本〕


八王子の閑静な住宅街で、
若い夫婦が惨殺される。
犯人は、整形手術を受けながら
逃亡している模様・・・。


1年後。


新宿。
ゲイの優馬(妻夫木聡)は、
ゲイバーで拾った直人(綾野剛)を自分のマンションに住まわせる。
ある日、優馬は、
テレビで見た、八王子殺人事件の容疑者の顔が、
直人に似ていると気付く。


千葉の漁港。
漁協で働く洋平(渡辺謙)の娘・愛子(宮崎あおい)は、
流れ者の哲也(松山ケンイチ)と同棲したいと言い出す。
愛子は、頭のゆっくりな子で、
洋平は不安を覚えながらも、同棲を許す。
ところが、テレビに映った八王子殺人事件の容疑者が、
哲也に似ている気がして、身元を調べる。


沖縄。
高校生の泉(広瀬すず)が、ボーイフレンドの竜哉と
無人島に行くと、
そこに住み着いている男と出会う。
田中(森山未來)と名乗るその男は、
その後、竜哉の家の旅館で働くようになるが、
竜哉の母は、テレビで見た殺人犯が
田中に似ている気がして、田中の顔を見入る・・・。





ジャパンプレミアで観た。

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※映画ナタリーさんより


今まで、映画の試写会における舞台挨拶には
何度か行っているけれど、
正直、今回ほど豪華な面子は初めて!


しかも、7列目のほぼ真ん中の席が取れ、
この、現代日本を代表するような
俳優陣のお姿を堪能する。
あぁ、皆様、なんてなんて素敵。
皆様が醸し出すオーラを浴びたようで、
本当に元気な気持ちになる♪


一番見てみたかったのは、宮崎あおいたん。
やっぱり可愛い。
大好き。
思っていた以上にとても落ち着いた雰囲気。


渡辺謙さんも素敵。
威厳があって、若手を引っ張っている感じ。
さすがハリウッドでも活躍しているだけの事はある。


他にも、お一人お一人について書きたいけど、
キリがないので、やめとく(笑)。


それから、この映画は、
私個人にとっても、
大変に感慨深い。


というのも、
原作・吉田修一×李相日監督×妻夫木聡
の3人の組み合わせは、
映画「悪人」以来2度目で、
「悪人」といえば、
私がこのブログで、
一番最初にレビューを書いた作品。


それは2010年9月のことなので、
ぴったり6年をかけて、
やっと一周回ったような、
不思議な感覚。
これで思い残すことはないわ・・・
というのは嘘だけど(笑)。


映画もとても面白く、
見応えがあった。


日本の3箇所で描かれる
オムニバス映画のような作りで、
それらの物語や人物は
交わる事はないけれども、
共通の思いは同じ。


身近にいる「あの男」は、
残忍な殺人事件の犯人に似ている・・・。


観ているこちらは、
3人のうちの誰が犯人なのか、
それとも、真犯人は他にいるのか、
最後まで惹きつけられるし、
3つの、どの物語も、
それぞれ一本の映画として独立できそうなくらい、
濃く、重い。


満足の2時間20分だった。


評価 ★★★★☆

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「ある天文学者の恋文」 [映画]

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〔2016年/イタリア〕


天文学者で大学教授のエド・フィーラム(ジェレミー・アイアンズ)と、
彼の教え子・エイミー(オルガ・キュリレンコ)は、
深く愛し合っているが、
それは、2人だけの秘密。


ところが、ある日、エイミーは、
エドが数日前に亡くなっている事を知り、
大変なショックを受ける。


しかし、その後も、
亡くなったはずのエドから、
メールや手紙や贈り物が届き、
エイミーは混乱する。


その謎を解き明かすため、
彼女は、
エドの実家があるエジンバラや、
2人が過ごした事のあるイタリア・サンジュリオ島を
訪れるが・・・。





試写会で観た。


いやはや、ビックリだ。
この主人公のケータイには、
マナーモードという機能は付いていないんだろうか(笑)。


最初から最後まで、
ケータイ鳴りっぱなしの映画。
エイミーがどこにいても、
何をしていても、
「電信柱の陰から見てるのか!?」と言いたくなるくらいの
絶妙なタイミングで、
エドから自撮りの動画メールが入り、
その度に、
中座したり、
周囲の人から顰蹙を買いながら、
ケータイを操作する彼女。


一体、何度ケータイが鳴っただろう。
もう二度と観る事はないけど、
何かの間違いで観てしまった時は、
絶対数えようと思う(笑)。


あまりの内容に、
しまいには笑いがこみ上げてきて困ったわ。
(笑う映画じゃないし(笑))


いい年したエドが、
自撮りの動画を送り続けるってのも、どうなのよ。
若く美しい恋人を持った自分に酔ってるのか?(笑)


これは真面目な話だけど、
人は自分の死後まで、
恋人にメッセージを送り続けたいって思うものなのだろうか。


まぁ、人それぞれだから、
何とも言えないけど、
そんな事をしては、
恋人はいつまでも
自分の呪縛から逃れられない気がする。


そりゃあ、自分の事を忘れられてしまうのは
悲しいけど、
でも、恋人だって忘れはしないでしょ。
彼の事は永遠に心に残しながら、
また新しい一歩を踏み出す。
それでいいじゃない。


オルガ・キュリレンコがとっても綺麗。
さすがボンドガールだけの事はある。


彼女が、エドの死を知った場面は
ショックだったなぁ。
あれほど愛し合った、
世界で一番大切な人の死を知らなかったって、
どれほど辛い事か。
建物を出て、
路上で横たわってしまった彼女の気持ちは
よく分かる。


彼女は、学生をする傍ら、
映画のスタントマンの仕事をしているのだけれど、
縊死の場面の撮影にビックリ。


だって、本当に首を吊るのよ。
苦しくなって、もがいて、
下におろされた彼女に監督が、
「もう少し我慢しろ」と。
我慢て。
本当に死んだら誰が責任取るんだよ。


私は、そういった場面は、
映像を上手くつなぎ合わせて作るのだと
思ってきたけど、
これが本当だとしたら、
今後、映画で縊死する場面が出てきた時、
息苦しくて深呼吸しながらでないと
観られなくなると思う。


評価 ★★☆☆☆

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「キンキンのルンペン大将」 [映画]

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〔1976年/日本〕


どんな仕事に就いても、
失敗ばかりを繰り返し、
女房に怒鳴られるだけの二宮清十郎(愛川欽也)は、
ついに故郷・山形を飛び出した。


希望に胸をふくらませて東京に着いた清十郎だが、
早速、上野でルンペンの鉄五郎(田中邦衛)に
身ぐるみ剥がされ、
現金は当然の事として、
ベルトや靴まで持っていかれてしまう。


そんな清十郎に、
ルンペンの親分・大五郎(伴淳三郎)は、
自分の仲間になるように勧め、
残飯のあさり方などを伝授してくれる。


そんなある日、
清十郎は、
仕事を失って途方に暮れている少女・秋子(坂口良子)と
知り合う。
秋子のために、住み込みの靴問屋での職を得た彼は、
社長に内緒で、秋子を住まわせてやる。


ところが、そこでボヤを出してしまい、
追い出された2人は・・・。





私はストーリーのハッキリしない映画は
あまり得意ではなくて、
この映画も、出だしのドタバタした感じから、
最後までこれが続くんだろうなぁと、思って観ていた。


でも、途中から段々、
お話が面白くなっていって、
引き込まれる。
それは坂口良子の存在が大きい。


田舎から集団就職で出てきたという彼女は、
純朴で、言葉も訛ったままで、
人を疑う事も知らないような、
天使のような女の子。


彼女は、優しい清十郎を心から信頼して、
同じ部屋で寝起きするようになる。
もし現実なら、
危なくてハラハラするところだけど、
当然、何事もない。


坂口良子が、部屋を仕切るのに、
吊るした毛布を利用する方法は、
クラーク・ゲーブルの「或る夜の出来事」の名場面と同じで、
彼女も、それを「ジェリコの壁」と、
映画と同じ事を言っていた。
とても可愛い場面。


で、そんなこんなで色々あるけど、
ラストが秀逸。


2人は、誰もいない遊園地で、
ナポレオンとお姫様のいでたちで
ダンスを。


メリーゴーランド、噴水、観覧車・・・
夜の無人の遊園地で、
なぜそれらが動いているんだ、とか、
そういった突っ込みは無しで(笑)。


とても素敵な場面だった。


ところで、
こんな所で、こんな事を、とは思うけど、
やっぱり書いちゃう(笑)。


この映画に坂口良子さんが出ている事を
私は全く知らなくて、
登場した時は、驚いた.
なんてタイムリーな!と。


というのも、
良子さんの娘の杏里さんの
セクシービデオがもうすぐ発売されると、
各メディアで、大変な話題になっているのは
多くのかたが知っている事であろう。


芸能ニュースで言われている事が
全て本当だとしたら、
どうしちゃったのかなぁと思う。
まぁ、全ては彼女が選んだ道なので、
他人がどうこう言えないけれど。


ただ、私は、
エロ写真も、エロ動画も、
嫌い、というわけではないので
ちょっと興味があるのも事実(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「ハドソン川の奇跡」 [映画]

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〔2016年/アメリカ〕


2009年1月15日。
ニューヨークを飛び立った、
USエアウェイズ1549便。
機長はチェズレイ・サレンバーガー(トム・ハンクス)、
副機長はジェフ・スカイルズ(アーロン・エッカート)。


ところが、飛行機が離陸してすぐ、
鳥の大群に遭遇、
全てのエンジンがダメージを負ってしまう。


機長は、最初、
最寄りの空港に降りると、
管制塔に連絡するが、
高度が足りず、
無理な事が分かる。


被害を最小限に抑えるには、
ハドソン川に着水するしかない。
機長の咄嗟の機転で、
それが行われ、
乗客乗員は全員助かる。


しかし、その判断を巡って、
国家運輸安全委員会は、
厳しい追及を始め・・・。





試写会で観た。


クリント・イーストウッドとトム・ハンクスが、
初めてタッグを組んだ作品。
どちらも大好きなので、
観られて嬉しい。


この、実際にあった飛行機事故の事は、
私の記憶にも残っている。
けれど、その時は、
乗客乗員全員を死なせなかった機長が英雄視された
所までしか知らず、
その後、安全委員会から、
それほどの追及があったとは、
初めて知った。


委員会は、なぜかとても意地が悪く、
なんとかして機長の判断ミスのように、
話を持っていきたいように見える。


そりゃあ、飛行機が一機、川に不時着したのだから、
尋常な事ではないし、
万が一、本当に機長の判断ミスや、
飲酒、ドラッグ、睡眠不足、何らかの悩みなどによる、
危険行為だとしたら、
それは絶対に許されない。


でも、観ているこちらは、
機長に非が無い事を知っているから、
安全委員会が悪役のように感じてしまう。


トム・ハンクスが安定の演技。
乗客の事を第一に考え、
最後まで飛行機に残って誘導する様子など、
感動を覚える。


アーロン・エッカートも、
元々好きな俳優さんなので、
トムとの息の合ったコンビネーションが嬉しい。


飛行機のトラブル映画と聞いて、
私が今までで一番泣いたのは、
「ユナイテッド93」。


これは、事故ではなく、
911事件で、テロリストにハイジャックされた飛行機の、
内部の様子が描かれた映画なのだけれど、


乗客たちは、自分たちがもう助からないと諦め、
それぞれが、自分の最愛の人にケータイで電話をかける。
その時、一人の乗客がつぶやいた、
「出ないわ・・・寝ているのかしら・・・」の言葉に、
こらえていた涙がどっと出てきた。


そのような極限の状況の中で、
電話をかけたいと思うのは、
自分が世界で一番大切に思っている人に決まってる。


切羽詰まった中、
「お願い、起きて、電話に出てほしい。
 どうかどうか最後に声を聞かせて・・・」と、
スクリーンを見つめながら、
本気で思った。


なんだかまた、話が逸れちゃってるけど。
この「ハドソン川の奇跡」、良い映画でした。


評価 ★★★★☆

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