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「ミスター・ソウルマン」 [映画]

Mr.soulman.jpg
〔1986年/アメリカ〕


マーク・ワトソン(C.トーマス・ハウエル)は、
念願のハーバード大学からの合格証を受け取り、
有頂天。


ところが、父親から、
学費は一切出さないと言われ、ショック。
しかたなく、奨学金受給のパンフレットを見るも、
どれも条件が自分に合わない。


ついに彼は、
黒人のみが対象の奨学金を手に入れるため、
日焼け薬で肌を黒くし、
パンチパーマをかけ、
審査を通過する。


大学で同じクラスの黒人女性サラに惹かれるマーク。
サラは、軽いノリのマークを最初は無視していたが、
成績が上がってきたマークに、
少しづつ心を許し、デートするようになる。


ところが、サラは、
マークがいなければ、
奨学金を受け取れる立場だった事が分かる。
貧しい生活をするサラに、
マークは苦悩し・・・。





これを観始めた冒頭で、
私はなんて甘い人間なんだと思い知った。


夢に見ていたハーバード大学に合格した息子に、
「これからは自分の為に生きるから、
 金は一切出さない」と宣言する父親。


それって、私には無理。
絶対にできない。
もしも自分の子供が、
本人にとっても、家族にとっても、
一番望む学校に合格したなら、
学費を出すのは親だとしか考えないし、
本人に出させようなんて、
これっぽっちも頭に浮かばないと思う。


自分の甘さを言い訳するわけじゃないけど、
現にマークは困り果てている。
そのままいけば、せっかく受かったハーバードには入れない。
この父親は、それでも仕方ないと思うのだろうか。
昨日まで高校生だった子が、
急にそんな金を用意できるわけないじゃないか・・・
と、考えるのも、私がダメなせい?(笑)


で、突然、
黒人になり、奨学金を受け取ってしまうマーク君(笑)。
これって絶対にしてはいけない事だけれど、
約30年前、
世の中はまだユルかったのかなぁ。
今だったら、
彼が白人である事など、
ネットですぐにバラされ、
大変な糾弾を受けると思うんだけど(笑)。


コメディだから、
そこら辺りは、笑える作りになっていて、
真剣に観る必要はないけど。
それより、一夜にして、
白い肌が黒くなる薬なんてのを飲んだって事の方が、
体に超悪そうで心配だわ(笑)。


彼の大学の先生が、
なかなか良い。
黒人のその教授は、
めっちゃ厳しくて、例外は絶対に認めない。
最初はウザく感じるけど、
その厳しさにも理由がある事が分かる。


マークの両親とサラとマークの女友達が、
寮で鉢合わせしてしまう場面は、
観客を笑わせようとしてるんだろうけど、
そう面白くもなかった(笑)。
スピルバーグあたりが製作に絡んでいたら、
もっとハラハラできる演出をしただろうに。


それから、黒人になって初めて知る、
黒人への、無意識の差別。


黒柳徹子さんの古い著書の中で、
「老婆の格好をして外を歩いたら、
 世間の人が、老婆にどれだけ軽んじた態度を取るか分かった」
といったような事を書かれていたけれど、
それを思い出す。


評価 ★★★☆☆

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「ひゃくはち」 [映画]

hyakuhachi.jpg
〔2008年/日本〕


高校野球の名門・私立京浜高校。
スポーツ推薦で入学してきた生徒が多い中、
公立高校出身の雅人(斎藤嘉樹)とノブ(中村蒼)は
万年補欠。


2人は大の親友同士で、
いつも学校の裏の神社に行っては、
「絶対に甲子園のベンチに入ろう」と誓い合っている。


キツい練習に耐え、
頑張る2人であったが、
いつも雑用や、敵チームの偵察をさせられ、
それでもクサる事なく、
指示された事をこなす日々。


夏の予選を控えたある日、
ノブは雅人に、ある宣言をし、
以来2人は口もきかない仲になってしまう・・・。





これはいい映画。
ラスト、泣いちゃった。


公立高校出身で、
甲子園とは縁もゆかりもなかった私には、
最初は、「汗臭そうな映画だな(笑)」という印象だったけれど、
途中からそんな事も忘れて、
2人の主役の少年の運命を、
真剣に見守ってしまう。


ひょうきんに見える雅人が実は繊細で、
レギュラー発表のある朝は嘔吐してしまうなど、
高校生活の全てを野球に賭ける思いが伝わり、
観ているこちらも本気にならざるを得ない。


野球部員は全員、寮生活をしているけれど、
これも大変そうだ。
24時間、常に同じ仲間と一緒にいるって、
一体どんな感じなんだろう。
勉強や練習は分かるとして、
本来、ストレス解消の為に行われるのであろう、
クリスマス会なども同じ顔ぶれじゃ、
あまりストレス解消にはならないような(笑)。


もちろん、この寮生活のおかげで、
連帯感や、より強い友情が芽生えるという事もいえる。
スポーツ名門校の寮生活の目的は、
そういった所にあるのだろう。


それにしても、
レギュラー発表の場面の緊張感ったらない。
監督が選んだ生徒たちが、
一人一人名前を呼ばれ、
背番号を受け取る。


選ばれた者が父に電話をし、
父が号泣する場面。
あぁ、なんて素晴らしいんだろう。
自分の身内や、大切が友人が、
入学試験や就職試験などに合格した時の嬉しさを
思い出す。
その子の努力を知っているからこそ、
泣かずにはいられない、その喜び。


もちろん、選ばれる子がいる陰で、
選ばれなかった子もいる。
ただ、この映画の場合に限っていえば、
なんとなく、納得できる作りになっている。
大変に上手い流れ。


そして、ラストの試合。
本気で力が入し、
力が抜ける(笑)。
素晴らしい演出。


評価 ★★★★☆

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「グッド・ドクター 禁断のカルテ」 [映画]

gooddoctor.jpg
〔2011年/アメリカ〕


研修医として大病院に勤務する事になった
マーティン(オーランド・ブルーム)は、
希望に燃えていたが、
ベテラン看護師とソリが合わないなど、
理想通りにはいかない日々。


そんな中、腎臓の病気で入院してきた
18歳のダイアン(ライリー・キーオ)が、
マーティンを慕ってくれた事から、
彼はダイアンに特別の思いを抱くようになる。


ダイアンは回復し、退院するが、
マーティンの彼女に対する執着は消えず、
快気祝いの食事会に自宅に招かれた際、
薬の中身を差し替え、
病気を再発させることに成功する。


再入院したダイアンの点滴に、
別の薬品を混ぜたり、
彼女の血液を別の患者の物とすり替え、
重篤な症状であると見せかけたりと、
マーティンの行動は常軌を逸してゆき・・・。





オーランド・ブルームの事は、
イケメンだけど、毒にも薬にもならない俳優だと
今までずっと思ってきたけれど、
このマッドな医師を演じる彼は中々面白かった。


なんか変な髪型して(笑)、
気が弱く、争いごとを好まない彼が
1人の人間に執着した途端、
恐ろしいモンスターに変わってゆく過程が恐ろしく、
最後まで目が離せない。


マーティンの心理は、
医者でない私からすると、
理解しがたい部分もある。


愛する人が病気なら、
なんとかして、1日でも早く回復してもらいたいと思うのが、
一般的な心理だと思うのだけれど、
彼の場合、ダイアンが退院すると
もう会えなくなるってんで、
ますます病気を重くする細工をするとは。
普通の人の感情とは、まるで逆の方向に向かっている。


第一、ダイアンはマーティンを信頼してはいるけれど、
決して恋愛感情があるわけではない。
彼女には粗野な恋人がいて、
その恋人に振り回されている事も、
マーティンは知っているんだな。


当然、マーティンは、
恋人にダイアンを会わせない。
「面会謝絶だ」とか言って。
うーん、やりたい放題(笑)。


考えてみると、医者って怖いなぁ。
患者は自分の担当医に
全幅の信頼を寄せて、
自分の身を委ねるわけだけれど、
その担当医が何らかの目的で、
患者をどうにかしようと思ったら
簡単にできてしまうのだものね。


薬や点滴にしたって、
患者には何も知識がないのだから、
ただ黙って指示に従うしかないわけだし。


もちろん、それは映画の中のお話で、
現実にそんな医者がいるわけないとは
思うけれども。


評価 ★★★☆☆

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「ラジオ・フライヤー」 [映画]

radioflyer.jpg
〔1992年/アメリカ〕


1969年。
両親が離婚し、母と一緒にカリフォルニアに越してきた
マイク(イライジャ・ウッド)とボビー(ジョゼフ・マゼロ)の兄弟は、
地元の友達になかなか馴染めず、
2人だけの世界を築いてゆく。


母が再婚し、これで落ち着くかと思われた生活だが、
継父は、ボビーに虐待し始める。
母に心配をかけまいと、
その事を言えない兄弟に、
継父はますます図に乗ってくる。


2人は、町はずれの「お願い山」で、
昔フィッシャーという少年が自転車で加速を付け、
空を飛んだという伝説を聞いており、
いつか自分たちも、という夢を持つようになる。


そんな中、継父の虐待がエスカレートした事から、
母はそれに気付く。
彼は逮捕され、
しばらくは平穏な日が続くが・・・。





イライジャ・ウッドとジョゼフ・マゼロが演じる兄弟愛と、
辛い現実に、ほんの少しファンタジーの要素が混ざった秀作。


冒頭に出てくるのは、
大人になったマイクという設定のトム・ハンクス。
彼が、自分の2人の息子に語るのが、
自分の子供時代の物語、というわけだ。


マイクとボビーは、
何をするにも2人一緒。
その仲の良さは大変に微笑ましく、可愛い。
もしかしたら、それは、
共通の敵(継父や近所の悪ガキ)がいるせいで、
より絆が深まったのかもと考えられなくもないけれど、
それでも、互いを思いやる気持ちに、
心打たれる。


主役は2人の少年だけれど、
彼らが飼っているシェパードが、
準主役といっていいくらい、素晴らしい。
シェーンという名のこの犬は、
何度も何度も2人の危機を救ってくれる。
この子はもう絶対、脚本を読んでるって思えるくらい、
各場面に合った様子を見せるのも可愛い。


それにしても、
この間の、「6才の僕が、大人になるまで。」もそうだったけど、
なんで映画の中のアメリカの母親は、
男を見る目がないかなぁ。


母親の再婚相手が、
幼い息子に暴力を振るっているというのに、
まるで気付かないってどういう事なんだろうと、
悲しくなる。
子供をちゃんと見ていれば、
怯えている素振りや、
オドオドしている様子から、
何かおかしいと気付くだろうに。
体はアザだらけなわけだし。


ラストの解釈は、
どう捉えたらいいのか、
ちょっと難しいけれど、
ネットでのどなたかの感想が、
私にはとても、合点がいった。
なるほど、そうか、と。


どんな風に解釈してもいい映画。
「お願い山」から飛んだ少年のように、
観る者は自由に心を飛ばす事ができる。


評価 ★★★★☆

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「地獄の夜は真紅だぜ」 [映画]

jigokunoyoruhamakkadaze.jpg
〔1962年/日本〕


佐渡で興行中のあるサーカス団。
メインの出し物である、
バイク曲芸「地獄の夜」の最中、
運転者が射殺される。


このサーカスでは、
以前から麻薬の取引が噂されており、
また、1年前には他の団員が不審な死を遂げている事から、
当局が動きだす。


一方、佐渡から新潟に戻る船に乗っていた、
流れ者の伸二(小林旭)は、
自分を売り込み、サーカスに入団する。


その頃、沖の大型貨物船では、
中国人が麻薬密輸の相談をしており・・・。





凄いタイトルだよ。
「だぜ」って言われてもなぁ(笑)。


小林旭氏の映画は、
今一つ、食指が動かないというか、
観る気がしないというか。
ストーリー重視の私にとって、
物語に深みが無い事が、
観なくても想定できるというのが、
一番の理由なんだろうけど。


でも、これは観ちゃった(笑)。
理由はないけど、なんとなく。
やっぱり想定通りだった(笑)。


流れ者がいきなりサーカスに入団。
清純そうなヒロイン・松原智恵子に惚れられるも、
もう一人のちょっとやさぐれた女団員に嫉妬されるというのも
予定調和。


サーカスに突然入ったのに、
いきなりバイクの曲芸ができるというのも、
想像通り(笑)。


とはいえ、
観る前は予想していない事もあった。
それは小林氏が、突然歌い出す事。
ミュージカルでもないのに、
彼だけが突然歌う。
あの甲高い声で(笑)。
ファンの方ならたまらないんでしょうけれど、
私にとってはどうでもよく、
ひたすら歌が終わるのを待つ(笑)。


ラスト近くに、
意外な人物が味方だったりして、
その辺りは、そこそこ楽しめる。


評価 ★★★☆☆

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