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「はじまりのみち」 [映画]

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〔2013年/日本〕


映画監督・木下恵介(加瀬亮)は、
「花咲く港」でデビューし、
黒澤明と共に、山中貞雄賞を受賞するなど、
順調に歩み始める。


しかし政府は、
木下の4作目の映画、「陸軍」のラストシーンが女々しく、
国民の戦意高揚にならないと、
彼の次回作を作らせないとされてしまう。


そんな時代と、それを受け入れた映画会社に嫌気が差し、
浜松の実家に帰った木下。
その後、戦局は悪化し、
彼は、病気で寝たきりの母(田中裕子)を、
空襲の無い山間部に疎開させようと決意する。


しかし、母はバスでの移動が困難。
木下は、周囲の「無理だ」の声を押し切り、
兄(ユースケ・サンタマリア)、
雇った便利屋(濱田岳)と共に、
母をリヤカーに乗せて運ぶ事にする・・・。





良い映画だ、
良い映画なんだけど、
ちょっと反則な気もする(笑)。


加瀬亮が、巨匠・木下恵介監督を演じているこの映画の、
かなりの時間を割いて、
木下監督が撮られた作品が、
劇中で流れる。


特に「陸軍」は、
国から「女々しい」と言われたラストシーンが、
ほぼ丸ごと納められていて、
「陸軍」を観なくとも、その感動が分かってしまう作りになっている。
戦地に赴く行進の中に、
息子を探して追いかける母、という。
これだけで号泣しちゃったよ(笑)。


ラストには、木下監督が戦後に撮った
生き生きとした映画たちが、
歌でいうところのメドレーのように流れて、
古い映画が好きな私のような人間には、
「うわー☆ うわー☆」の連続。
嬉しくならないわけがない。


まぁ、いいや(笑)。
木下映画引用の場面が無かったとしても、
木下監督の思いは伝わってくるし、
それを引き出した濱田岳演じる便利屋の存在が
とてもいい。


便利屋濱田は、自分が話している相手が、
木下恵介だとは知らず、
「陸軍」の感想を語り出す。
それを聞いて、涙を流す木下。
良い場面だった。


全体を通してのテーマは、
母と息子。
母を思う息子を見るのは大好き。
それはマザコンとは全然違う。
マザコンでもなく、過干渉でもない
母と息子の情愛は、
ほどよい距離感と、互いを思い遣り、尊敬する心から
生まれるもののような気がする。


この映画では見事にそれが描かれていた。
田中裕子さんは、こういった役を演じるのが上手いなぁ。


もう絶対、「陸軍」を観ようと心に決める。
いや、確かに私は影響されやすいミーハーではあるけれど、
これを観て、「陸軍」に興味を持たない人がいるんだろうか。
そう考えると、
木下恵介宣伝映画みたいな気もするけど(誰得?(笑))。


評価 ★★★★☆

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