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「傷だらけの山河」 [映画]

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〔1964年/日本〕


山村聡は、
不動産、鉄道など、大きな会社をいくつも経営する大実業家で、
その経営手腕は、
周囲の者をたじろがせるくらいの勢いを持つ。


また、彼のパワーは女性関係においても発揮され、
妻の他に3人の妾を持ち、
それぞれに子供を産ませ、
家を与え、
生活の不自由は全くさせていない。


ある日、彼は、自分の席に茶を運んできた
女子事務員・若尾文子に目を止め、
彼女の私生活を興信所で調べさせる。
彼女が、売れない画家・川崎敬三と同棲していると知った山村は、
川崎を、パリで絵の勉強をさせる資金を出すという名目で追い払い、
若尾を4人目の妾にする。


妾の生活に飽きた頃、
若尾は暇つぶしにゴルフに出掛けるが、
そこで一人の青年・高橋幸治と知り合い、懇意になる。
高橋は若尾との結婚を夢見るようになるが、
ある日、若尾の家を訪ねた所、
山村がいて驚く。
高橋は、山村の息子だったのだ。


山村のだらしない女関係にショックを受けた高橋は、
精神に異常をきたし、
入院する。
さらに、妾の息子もまた、
反乱を起こそうとしていた。
頑なに認知をしない山村に、
認知を求めて、裁判を起こしたのだ。


その一方、山村の事業の方は、
着々と進んでいた。
ライバル会社に勝ち、
土地を買占め、
学校を建てる計画も進み、
ついには、国から勲章を授けられる事にもなった。


しかし、その頃、高橋は病院を抜け出し・・・。



2時間半の長い映画だけれど、
飽きさせない。
山村聡演じる実業家の、
そのパワフルっぷりに圧倒される。


彼は疲れるという事を知らないみたいだ。
脳内で、アドレナリンだか、ドーパミンだかが、
過剰に分泌されてるんじゃないかと思うくらい。
驚くほどの先見の明で、
絶対の負け知らず。
皆は、今日明日の事しか考えていないが、
自分は30年先を見越しているのだ、と言う。


そして、女性関係。
これは笑っていいんだろうか。
だって、3人も妾がいる上に、
さらに、若尾さんを増やそうっていうのよ(笑)。
しかも、同棲相手と別れさせてまで。
3人の妾さんは、
もう中年になってるから、
ここらで、若いのを加えようって事?(笑)


そんな男だから、
彼は人の気持ちなんて、
まったくお構いなしなんだな。
仕事上のトラブルで、
自殺者が出ても、まるで意に介さない。
だからといって、馬鹿にするという事もなく、
なんというか、
細かい事はどうでもいいのよ、彼は。


どうでもいいと言えば、
彼は、自分の息子の名前を
何度も間違える。
まぁ、内にも外にも、何人も子供がいれば、
全部は覚えきれないのでしょうが(笑)、
彼にとっては、
名前なんて記号と同じで、
どうでもいいものなんでしょうね。
間違えられた方は、ショックを隠し切れなかった様子だけれど。


妾の息子たちの考え方が、
それぞれで興味深かった。
山村の会社に入れてもらい、
その恩恵を預かろうとする者や、
自分が母の面倒をみるから、
別れてほしいと言う者まで。
そういった事は、
一人一人が持っている気質の違いなんだろうと思う。


去年、
山村さんと若尾さんの、
舅と嫁の関係を描いた映画、
「瘋癲老人日記」の感想を書いたけれども、
嫁に振り回される、情けない老人だった山村さんが、
この映画の彼はまるで別人。
この映画を観て良かったわ。
「瘋癲~」が強烈すぎて、
山村さんのイメージが、あのままになってしまうところだった(笑)。


元々、石川達三さんの小説らしいけれど、
誰か実在のモデルがいるんだろうか。
ただ、多かれ少なかれ、
大事業を展開する人というのは、
こういった面があるのかもしれないなぁとは思う。
大企業の創業者の伝記なんか、
もっと凄いエピソードで溢れているんだろうと想像する。


評価 ★★★☆☆

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