「夜の蝶」 [映画]
〔1957年/日本〕
無数のバーがしのぎを削る夜の銀座。
この界隈でトップと言われる、
「フランソワ」を経営するマリ(京マチ子)は、
近いうちに京都から進出してくる、
おきく(山本富士子)の開店する店が、
気になって仕方がなかった。
元々、大阪道修町の薬問屋の奥様だったマリは、
夫を、芸子時代のおきくに奪われたという因縁があるのだ。
バー「おきく」が華々しく開店した。
銀座では珍しい、京風の店に、
お客の評判も上々。
偵察に行ったマリも、その雰囲気に圧倒される。
一方、関西で手広くデパート経営をしている白沢(山村聡)が、
東京進出を目指し、上京してきた。
マリは白沢に惚れていたが、
実は白沢はおきくのパトロンで、
おきくの銀座進出も、彼の力添えがあった。
しかし、おきくには本命の恋人・原田修(芥川比呂志)がいた。
医大で研究生活をする原田は貧しかったが、
おきくは彼との結婚を夢見ている。
白沢の東京進出が失敗に終わる。
弱っている彼に近付いたマリは・・・。
京マチ子と山本富士子が銀座で対決、と聞けば、
期待しないわけがない。
二人とも、顔はにこやかに笑いながら、
そりゃあもう、内心では火花バチバチで、
腹の内を知るこちらは、
それを面白がって観る。
どこか淫蕩な感じがするマリと、
どこまでもたおやかなおきくの対比が面白く、
でも、人当りのいいおきくの方が、
案外強かなのよね、なんて思ったり。
マリが夫を奪われたエピソードにしたって、
京と山本の役を入れ替えた方が、
普段の二人のイメージには合うと思うけれど、
その意外性が面白い。
おきくにも可愛い面が無いわけではない。
研究者の原田に、本気で惚れているようだ。
けれど原田は、どうみても及び腰。
私が見ても、釣り合いが取れていない。
まぁ、彼がおきくと一緒にならない理由は、
他にあるのだけれど。
ラストは壮絶。
そうきたかって感じで。
一箇所、残念に思ったのは、
ラスト近くの二人の対決のクライマックスが、
電話で行われた事。
目と目を見合わせての方が
良かった気がするんだけど、
どうなんでしょ。
評価 ★★★☆☆