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「アンネの日記」 [映画]

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〔1959年/アメリカ〕


1942年、オランダ。
13歳のアンネ・フランク(ミリー・パーキンス)は、
お父さん、お母さん、お姉さんの4人で、
ヒットラーのユダヤ人狩りを逃れる為に、
ミープさんが経営するスパイス工場の屋根裏部屋に、
身を隠す事になった。


そこに一緒に入ったのは、
お父さんの友人のバン夫妻と、息子のペーター。
ペーターは16歳で、アンネとは喧嘩ばかり。


お父さんは、全員に、
階下の工員たちに気付かれぬよう、
日中は絶対足音を立ててはいけない、
それから、カーテンに触れてはいけない、
などの注意事項を言い渡す。


少し経った頃、
ミープさんが、デュッセル(エド・ウィン)という歯医者さんも
連れてきて、
屋根裏部屋は8人になる。


ミープさんは、アンネたちに、
希望の持てる、明るい話ししかしなかったが、
デュッセルさんによると、
状況は最悪らしい。
沢山のユダヤ人が連行され、
殺されているとの事だ。


外を、サイレンを鳴らす車が通る度に
怯える日々。
そんな中、アンネとペーターは、
互いに仄かな恋心を抱くようになる・・・。





「アンネの日記」が図書館や書店で、
大量に損壊されていたという、最近のニュースを見た時は、
おそらく、多くの方がそうだろうと思うけれど、
とても不快な気持ちになったものだ。


どんな理由にせよ、本を破くという行為が、
人をこれほど嫌な気持ちにさせるというのを
初めて知った。
何か深い理由があるのか、
意外と単純な愉快犯なのか、
それは私にはまったく分からないけれど、
早く解決してほしいと強く思っている。


こんな時に、「アンネの日記」の映画を観るのは、
ちょっとどうかと思ったりもしたけれど、
事件を聞いた時、
「そういえば、アンネの日記って映画化されているんだろうか」と
考えたのも事実で、
便乗と言われれば、それはそれで仕方がない。
まだ映像の損壊という話は無いようなので、
借りられるなら観ておこうという気持ちでレンタルした。


本作の中で、主人公はもちろんアンネ・フランクなのだけれど、
特にアンネに焦点が当たっているわけではなく、
屋根裏部屋に隠れた、
ユダヤ人家族の生活全体の物語となっている。


他人の家の狭い屋根裏で暮らす、
そのストレス。
しかも、自分たちの家族だけならまだしも、
もう一家族いるという、極限ともいえる状況。
何で自分たちがこんな目に、と、
体験した方々は思っただろうし、
観ているだけで息苦しくなる。


部屋を提供してくれた方への、
申し訳なさもある。
見つかれば、隠匿罪で連行は必至なのに、
命を賭けて、自分を助けてくれる人に、
何もお返しができない辛さ。


階下に泥棒が入る場面があるのだけれど、
それを分かっていながら、
追い払う事もできず、
息を潜めるばかりというのが、
どんなに心苦しい事であろうかと、
その気持ちを痛いほど感じた。


食糧難も大変なものだ。
差し入れられたケーキを切る手元を見つめる、
みんなの目は真剣だ。
誰もが、少しでも大きい物が欲しいという気持ち。
大人が、食べ物の大小であからさまに喧嘩するなんて、
今の自分には恥ずかしい事としか考えられないけれど、
あの状況では、そうなっても仕方ない。


しかし、そんな状況の中からも、
人間というものは、
なんらかの楽しみを見つけるんだなぁと、
人の心の順応性を思う。
ユダヤ人のお祝いの日に、
アンネは、全員にプレゼントを用意する。
束の間の幸せな時間。
みんな、全然笑わないわけじゃない。


結末を知っているから、余計に辛い。
一家が太陽の下を大手を振って歩く結末だったら、
どんなにか良かっただろうけれど。


評価 ★★★☆☆

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