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「江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間」 [映画]

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〔1969年/日本〕


医大生の人見広介(吉田輝雄)は、
理由もなく精神病院に入れられている。
なぜか彼には、幼い頃の記憶がない。


他の患者から殺されそうになった彼は、
逆に相手を殺してしまい、
病院を脱走、
サーカス団の少女と出会う。
少女が、広介が確かに子供の頃に聞いた、
子守唄を歌っていた為、
彼女の出身地を尋ねると、北陸だと言う。
しかし、会話の最中、少女は殺される。


北陸に向かった広介は、
新聞で、自分にソックリな男・菰田源三郎(吉田輝雄・二役)の
死亡記事に目を付け、
源三郎が蘇生したと見せかけ、
菰田家で暮らし始める。


源三郎の父・丈五郎(土方巽)は、体に障害があり、
今は、菰田家が所有する孤島で暮らしているという。
その島に向かった広介は、
信じられない光景を目の当りにする。
丈五郎は人間を改造して奇形にし、
自分だけの楽園を作っていたのだ・・・。





キング・オブ・カルトと言われる、
その道のマニアにはたまらない作品だという事だ。


このタイトルからして、
現代では、付けられるのかどうか。
粗筋を書くのにも、ちょっと気を使う。


で、楽しめたかというと、
・・・・・・うーん(笑)。
これを理解する能力が、
私には無いようだ(笑)。


別に倫理的にどうのとか言うわけではなく、
(実際、エログロ場面はそこまで凄くはない)
映画として面白くない。
劇場だと、笑い声が起こるらしいけれど、
自宅鑑賞だとそのような事にもならず、
黙って画面を見ているだけで。


タイトル通り、
江戸川乱歩の小説の要素が詰まってはいる。
「パノラマ島奇談」とか、「人間椅子」とか、「屋根裏の散歩者」とか。
乱歩は子どもの頃から大好きだし、
映像化した物を見たいとは思うけど、
これはちょっと、私の思い描く乱歩の世界とは違う気がする。
・・・って、まぁ、
この映画で、そんな事を真面目に考えても仕方ないけど。


事件の全容解明の殆どが、
島の洞窟内での、
丈五郎の説明なのも、つまらない。
回想シーンを絡めながらだけど、
とにかく彼が延々と話すだけ。


男女の背中を結合させて、
シャム双生児を作るとか、
人間の腐肉にたかった蟹をむさぼり食うとか、
大した事はないにせよ、
そのようなシーンもあるので、
そういったものが苦手なかたは観ない方が賢明かも(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「狂った果実」 [映画]

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〔1956年/日本〕


石原裕次郎と津川雅彦は、
仲の良い兄弟。
自由奔放で闊達な石原に対して、
津川はまだ幼いボクちゃん風情で、
その分、兄に対する憧れの気持ちも強い。


真夏のある日、津川は、
逗子駅の階段で擦れ違った美しい女・北原三枝に
心奪われる。
数日後、石原とボートで沖に出た彼は、
泳いでいる北原と遭遇、
彼女を岸まで送り届ける。


北原と親しくなった津川は、
友人たちのパーティに、
ドレスアップした彼女を連れてゆき、
石原を含む出席者たちを驚かせる。
津川の北原に対する思いは強まるばかりだった。


しかし、別の日、
石原は、ナイトクラブで外国人男性と踊る北原と遭遇。
実は彼女は、その男性の妻だと言うのだ。
驚く石原だが、
彼もまた、北原に強く惹かれる気持ちを抑えきれず、
津川に内緒で、
何度も逢瀬を重ねるようになる。


ある日、北原は、
津川との約束を反故にし、
石原とヨットで沖に出てしまう。
首をかしげる津川を気の毒に思った、
石原の友人・岡田真澄は、
2人の関係を津川に告げる。
激しいショックを受けた津川は・・・。





以前ビデオで観た「太陽の季節」の
あまりの酷さに、
もしかして似たテイストなのかと、
ずっと手が出ずにいた、この「狂った果実」。


でも、「太陽~」とは全然違ってた。
想像以上に面白く、
人間関係の機微が上手く描かれた、
秀作だと思う。


純粋でまだ子供っぽい弟が恋い焦がれる女を、
強引に奪ってしまう兄。
2人が普段からいがみ合っているならともかく、
彼らはとても仲が良く、
互いの人生を邪魔してやろうなどという気持ちは、
微塵も感じられない。


だからこそショックである。
石原はなぜ、北原三枝に手を出したんだろう。
それはもう、言葉では説明ができないような、
複雑な心理。
「若いから」で、全てが済んでしまいそうな気もするし、
言葉を尽くして説明したくなるような気もするし。


もちろん、北原三枝が魅力的というのが、
絶対条件であるけれども。
彼女がおぼこな箱入り娘でも、
山の手の奥様風情でも、
救いようのないアバズレでも、
この話は成立しない。
彼女には、何にも囚われない不思議な魅力がある。
石原と津川という、
正反対の性格の兄弟から同時に愛される女という役が、
大変に上手くハマっている。


岡田真澄もとてもいい。
ハーフの彼は、
石原たち仲間と、
遊び呆けてはいるけれど、
どこか、人生を諦めているかのような所が見える。
知らずに兄に裏切られている津川を、
可哀相に思う心も持っている。


ラストにどんな出来事があるのかは、
観る前から知っていたけれど、
誰が誰に対して、それを行うのかは知らなかった。
激しさも若さゆえか。
最後まで魅せられた。


評価 ★★★★☆

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「八月十五夜の茶屋」 [映画]

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〔1956年/アメリカ〕


1946年。
終戦直後の沖縄に赴任してきたフィスビー大尉(グレン・フォード)は、
僻村・トビキ村に着いた。


通訳は日本人のサキニ(マーロン・ブランド)。
フィスビーの仕事は、
トビキ村に、民主主義を教える事と、
学校を建てる事。
村民たちは、フィスビーを大歓迎し、
たくさんの贈り物をくれる。


贈り物は、虫かごや茶碗など、
取るに足らない物ばかりであったが、
誰かが、ゲイシャをプレゼントすると言って、
ロータス・ブロッサム(京マチ子)を無理矢理置いてゆき、
真面目なフィスビーは大慌て。


しかし、村の人々の純朴さと、
居心地の良さにどっぷりつかったフィスビーは、
学校建設の為の建築資材を、
茶屋の建設に使ってしまう。


報告を受けた本部は驚き、
フィスビーの頭がおかしくなったと判断、
軍医のマクリーン大尉(エディ・アルバート)を送り込んで、
診察させるが、
マクリーンも、村を気に入り、
居着いてしまう始末。


フィスビーと村人たちは、
金の為、
芋から酒を造ると、これが評判になる。
しかし、それが本部に知られてしまい・・・。





マーロン・ブランドが日本人役をするという冒頭から、
トンデモ映画だと決め付けて見始めたのだけれど、
とてもいい映画だった。
そこまで悪くない。


もちろん、ブランドが日本人役というのは、
どう見ても無理があるけど(笑)。
一応、変なメイクをして、変な着物を着て、
日本人らしくしてあるけれど、
やはり、どう見ても白人。
ただ、普段の彼とはまるで別人という意味では、
成功と言えるかも。
公開時はアメリカでも、気付かない人が沢山いたそうだ。


沖縄の僻村に赴任してきた、フィスビー大尉が、
次第に村に馴染んでいく様子がとても良い。
別にフィスビーは、
王様のように君臨しているわけではなく、
村の人と同格で、普通に生活に溶け込んでいる。


村に慣れてゆくに従って、
窮屈な軍服を脱ぎ、
着物の代わりにバスローブを着、
靴の代わりに下駄を履く。
すんごく自然にそうなった、という格好だ。


フィスビーは、民主主義を教えに来たと言うけれど、
そんなものは、
村にはもうとっくにあって、
そのような事を考える必要などないくらい、
当たり前に暮らしているのがよく分かる。
日本のいい所が、とても上手く出ている。


日本の描写に、
おかしな点が無いわけじゃないけど、
日本がとても好意的に描かれている映画を、
嫌いになれるわけがない。


村の女役の1人を清川虹子さんが演じておられるのだけれど、
清川さんが生前、テレビで、
「私はマーロン・ブランドと付き合っていた」と言っていたのが、
私の中で、強烈な記憶として残っていて、
2人が同じ画面にいると、
つい目線を追ったりしていた。


そのテレビで、清川さんが、
「マーロンがね♪ マーロンがね♪」と、
甘い声で何度も言っているのを見た時は、
「ホンマかいな」と思ったものだ。


でも、その後、マーロン・ブランドの事を知るうちに、
彼が、あの年代の人には珍しいくらい、大変な人種差別否定主義者で、
学校時代、黒人の友達がいる白人は彼一人、
大人になってからの恋人も、
非白人が多かった事が分かった。
清川さんの言っている事も、
あながちウソではないのかも、と、今では思う。
ブランドが、どれくらい真剣だったかは別としても、
2人の間に何かあった事だけは、間違いないのではないかと。


評価 ★★★☆☆

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「ペーパーボーイ 真夏の引力」 [映画]

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〔2013年/アメリカ〕


1969年。
大学を中退し、
フロリダの田舎町で、父の経営する新聞社の記者をして働く
ザック・エフロン。


ある日、エフロンの兄で、
大手新聞社に勤務する兄・マシュー・マコノヒーが
同僚の黒人青年・デヴィッド・オイェロウォを伴って帰郷する。


マコノヒー曰く、
4年前に起きた保安官殺人事件で逮捕され、
死刑判決を受けて収監中のジョン・キューザックに、
冤罪の可能性があるとの事で、
その調査に来たと言うのだ。


マコノヒーの仕事を手伝う事にしたエフロンは、
この調査の依頼人、ニコール・キッドマンと対面する。
キッドマンは、獄中のキューザックと文通しているうちに意気投合、
婚約までしてしまったという、
今まで会った事もないような、ビッチな女だ。


キッドマンの色香に惑わされたエフロンは、
さらに調査を進めるが、
思いもかけない事件が次々と起こり・・・。





「マジック・マイク」のあと、
連続してマシュー・マコノヒーと遭遇。
予備知識なしだったので、
「え!?また?」と思ってしまったよ(笑)。
なんで、こんな猛暑の中、
暑苦しい彼の顔を見なければならないのかと思ったけど、
(しかも、どちらもかなり特異な役柄)
まぁ、いい。
暑さで暑さを相殺だ。


そのマコノヒーも含めて、
この映画には、真っ当な人が出てこない印象。
いや、ザック・エフロンは、
それなりにまともには見えるけど、
驚くようなビッチのニコール・キッドマンに惹かれるあたり、
やっぱり普通じゃない気がする(笑)。


この映画のキッドマンには、
本当に驚かされる。
その化粧から、お洋服から、
「私はアバズレです」と、自ら世間にアピールして回っているような、
その風情。
死刑囚と文通して、婚約までする女性って、
日本だったら、ある種の真面目な人を想像するけれど、
彼女には、そんなイメージは微塵もない。


エフロンやマコノヒーと一緒に、
ジョン・キューザックに初めての面会に行った彼女は、
なんと、金網越しに、彼と性行為を始める。


互いに触れ合う事もなく、
言葉と表情だけで、
(特にキューザックは、鎖に繋がれて手も使わず)
激しく感じ合う2人に、劇場内は静まり返ってたわ(笑)。


別の日には、海でクラゲに刺されたエフロンの体に、
放尿するキッドマン。
(クラゲにはそれが効くというけど、本当か?(笑))
無名の女優ならともかく、
なんで大女優がそこまで体を張る!?と思うけれど、
きっと彼女は型にはまりたくないんだろうなぁと、
そう思いながらスクリーンを眺めていた。


上手く言えないけど、
この映画を観ながら、
「アメリカらしい」という気持ちが自然に頭に浮かんできた。


華やかな都会やビジネスやエンターテイメントもアメリカなら、
この映画のように、
ワニが生息する南部の湿地帯で、
治外法権のように暮らす人がいるのもアメリカ。
上っ面な旅行では、
絶対分からない深い部分。
フィクションとはいえ、
映画があって本当に良かった。


評価 ★★★☆☆

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「マジック・マイク」 [映画]

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〔2013年/アメリカ〕


将来はインテリアデザインの仕事をしたいとの夢を持ち、
金を貯める為、
様々な仕事を掛け持ちしているマイク(チャニング・テイタム)。


そんな彼の夜の顔は、
男性ストリップ劇場“エクスクイジット”での
看板ダンサー・通称「マジック・マイク」。
鍛え上げられた彼の肉体とダンスは、
毎夜、女たちを魅了している。


ある日、彼は、
建築現場で知り合った、
19歳のアダム(アレックス・ペティファー)とクラブに行く。
アダムの中に、女を引き付ける才能を見い出したマイクは、
“エクスクイジット”のオーナー・ダラス(マシュー・マコノヒー)に
彼を紹介、アダムもストリッパーとして働くようになる。


内気だったアダムは、
次第に水商売の色に染まってゆき、
いっぱしのダンサー風情となってゆく。
しかし、彼の真面目な姉・ブルック(コディ・ホーン)は、
そんなアダムを心配し、
また、マイクは、今まで付き合った事のないタイプの
ブルックに惹かれ、
「アダムの面倒は自分がみる」と約束する。


ところが、ある日アダムは、
出張ストリップの先で、大きなトラブルを起こしてしまう・・・。





お恥ずかしい話なのだけれど、
数年前、私は一度だけ、
この映画のような外国人男性によるストリップに行った事があって(笑)。


とにかく楽しかった。
なぜ、そのような所に行く事になったのか、
きっかけは、今となっては思い出せないけれど、
「何か面白い事したい。話のタネに行ってみたい」という、
そんなノリだったのだと思う。


女12人くらいで繰り出したのだけれど、
今思えば、その中に一人も、
「私は行かない」という人がいなかった(笑)。
もう、あんな風に、10人以上の女が、
同じ方向を向くって事は、
この先の私の人生で、無い気がする。
そういう意味でも、とても懐かしい。


とは言え、都内なので、
観客は、本国に比べたら、
大人し目だと思うし、
ステージの規模も小さかったと思う。
やはり本場のショーを観なくちゃ駄目ね(笑)。


・・・と、私の体験はどうでもよろしい。


この映画の主演のチャニング・テイタムは、
今、世界で一番セクシーと言われる男。
最初から、全裸でご登場。
別にマッチョ好きじゃない私でも、
「いい体してる」と自然に思ってしまう。
(まるでおっさん(笑))


しかも、彼は売れる前は、
本当にストリッパーをしていたと言うじゃないの。
つまり、ステージでのパフォーマンスも、
付け焼刃じゃない、
経験者によるそれだものだから、
ミョ~にリアル(笑)。


しかも、彼、
そんな仕事をしているにも関わらず、
ちゃんと将来を見据えて貯金してるっていう堅実ぶり。
遊んではいるけれど、実は結構真面目という、
女の子が惹かれる要素たっぷり。
悪いとこ無しじゃん(笑)。


彼が、出張ストリップに行く場面が好き。
女の子たちは全員、大喜びの大ハシャギ。
日本じゃそうはいかないだろうなぁ。
第一、住宅事情が、
そんなものを呼べる風にはなっていない(笑)。
そんなものが来て、大騒ぎしたら、
苦情が来るか、
もしくは翌日から白い目で見られそうだ(笑)。


マシュー・マコノヒーが笑える。
そういえば彼も、
以前に、「最もセクシーな男」に選ばれた事があったよね。
この手の映画に、
その栄冠は必須なのか?(笑)


評価 ★★★☆☆

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