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「獅子座」 [映画]

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〔1959年/フランス〕


自称作曲家の冴えない中年男・ピエールは、
ある朝、電報配達のベルで起こされる。


なんとそこには、
亡くなった叔母から莫大な遺産が入ると記されており、
彼は天にも昇る気持ちになる。


早速彼は、借りた金で友人たちを自室に招いて、
大盤振る舞い。
その席で彼は、
「獅子座の自分は40歳から運が開ける。今がその時だ」と話す。


ところが、数日後、
遺産の話は間違いだった事が判明。
一文無しで、
友人に金を借りようにも、
夏のバカンス時、街にいる者などいやしない。
さらにアパートを家賃滞納で追い出された彼は、
1人、パリの街を当てもなく彷徨う・・・。





全体の殆どが、
無一文で街を彷徨い歩く男の場面なのだけれど、
全く飽きる事がない。


逆に、
無一文で外で生活すると、
人は徐々にこうなる、という過程が描かれていて、
興味深く、真剣に観てしまう。


服が薄汚れてくる。
髭が伸びてくる。
靴の底が取れかかり、仕方ないので紐で固定する。
食べ物を拾う。
人はたった数日で、
誰が見てもホームレスのような様相になってしまうんだなぁ、と思う。


そんなピエールの目を通して見た街は、
今まで何も考えずに見てきた街とは全然違う。
人々は満たされ、
楽しそうで、
悩みなんて一つも無さそうだ。
みんな家族や恋人や友人と連れ立って歩き、
世界で1人なのは自分だけ・・・。


セリフは無くても、
彼のそんな気持ちが伝わってくるって、
凄い映画だ。


けれど、そんな状態なら状態なりに、
友達ができるのが、ちょっと楽しい。
ピエールは、ベビーカーのようなものを押している、
中年のホームレスと知り合って、
行動を共にするようになる。


そのホームレスは、
自分の方がベテラン(?)という意識のせいで、
ピエールとは、親分と子分みたいな関係になって、
ピエールも彼に従って歩く。
優しい所もあって、
ピエールを、ベビーカーに乗せて押してくれたりもする。
捨てる神あれば拾う神ありってところか。


万が一、私に大金が入る事になったとしても、
その金を実際に手にするまでは、
信じないようにしようと心に誓った(笑)。


評価 ★★★☆☆

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