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「狂った果実」 [映画]

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〔1956年/日本〕


石原裕次郎と津川雅彦は、
仲の良い兄弟。
自由奔放で闊達な石原に対して、
津川はまだ幼いボクちゃん風情で、
その分、兄に対する憧れの気持ちも強い。


真夏のある日、津川は、
逗子駅の階段で擦れ違った美しい女・北原三枝に
心奪われる。
数日後、石原とボートで沖に出た彼は、
泳いでいる北原と遭遇、
彼女を岸まで送り届ける。


北原と親しくなった津川は、
友人たちのパーティに、
ドレスアップした彼女を連れてゆき、
石原を含む出席者たちを驚かせる。
津川の北原に対する思いは強まるばかりだった。


しかし、別の日、
石原は、ナイトクラブで外国人男性と踊る北原と遭遇。
実は彼女は、その男性の妻だと言うのだ。
驚く石原だが、
彼もまた、北原に強く惹かれる気持ちを抑えきれず、
津川に内緒で、
何度も逢瀬を重ねるようになる。


ある日、北原は、
津川との約束を反故にし、
石原とヨットで沖に出てしまう。
首をかしげる津川を気の毒に思った、
石原の友人・岡田真澄は、
2人の関係を津川に告げる。
激しいショックを受けた津川は・・・。





以前ビデオで観た「太陽の季節」の
あまりの酷さに、
もしかして似たテイストなのかと、
ずっと手が出ずにいた、この「狂った果実」。


でも、「太陽~」とは全然違ってた。
想像以上に面白く、
人間関係の機微が上手く描かれた、
秀作だと思う。


純粋でまだ子供っぽい弟が恋い焦がれる女を、
強引に奪ってしまう兄。
2人が普段からいがみ合っているならともかく、
彼らはとても仲が良く、
互いの人生を邪魔してやろうなどという気持ちは、
微塵も感じられない。


だからこそショックである。
石原はなぜ、北原三枝に手を出したんだろう。
それはもう、言葉では説明ができないような、
複雑な心理。
「若いから」で、全てが済んでしまいそうな気もするし、
言葉を尽くして説明したくなるような気もするし。


もちろん、北原三枝が魅力的というのが、
絶対条件であるけれども。
彼女がおぼこな箱入り娘でも、
山の手の奥様風情でも、
救いようのないアバズレでも、
この話は成立しない。
彼女には、何にも囚われない不思議な魅力がある。
石原と津川という、
正反対の性格の兄弟から同時に愛される女という役が、
大変に上手くハマっている。


岡田真澄もとてもいい。
ハーフの彼は、
石原たち仲間と、
遊び呆けてはいるけれど、
どこか、人生を諦めているかのような所が見える。
知らずに兄に裏切られている津川を、
可哀相に思う心も持っている。


ラストにどんな出来事があるのかは、
観る前から知っていたけれど、
誰が誰に対して、それを行うのかは知らなかった。
激しさも若さゆえか。
最後まで魅せられた。


評価 ★★★★☆

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さつき

大先輩に石原裕次郎さんのファンの方がいて、青山さんが仰るように秀作☆☆☆とのこと。監督の中平康さんという方も、当時から斬新な映画をお作りになった方のようですね。
by さつき (2013-08-20 19:17) 

青山実花

さつきさん
コメントありがとうございます。

わぁ♪
やはりファンの方からも、
この作品は評価されているのですね。
本当に嬉しいです。

中平監督も、良い映画を沢山撮られているようですね。
私はまだ5本しか観ていないのですが、
これまた裕次郎さんの、
「あいつと私」は大変な秀作だと思いました。

by 青山実花 (2013-08-22 20:58) 

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