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「スタア誕生」 [映画]

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〔1937年/アメリカ〕


ノースダコタ州の片田舎に住むエスター・ブロジェット(ジャネット・ゲイナー)は、
映画が大好き。
特に、人気俳優ノーマン・メイン(フレドリック・マーチ)の大ファンだ。
いつしか彼女は、
自分も映画女優になりたいと思うようになる。


そんな夢を後押ししてくれる祖母から、
お金をもらった彼女は、ハリウッドにやって来る。
しかし、現実はそう甘くはなく、
女優デビューなど、夢のまた夢だ。


ところが、ある日、映画関係者のパーティで、
ウエイトレスとして働いていた彼女は、
憧れのノーマンの目に止まる。
ノーマンは、彼女の純粋さに惹かれ、
カメラテストを受ける手筈を整えてくれる。


デビューしたエスターは、
スターへの階段を駆け上がってゆき、
また、ノーマンと愛し合い結婚。
しかし、元々が酒飲みで、
周囲の者との軋轢が多かったノーマンは、
エスターの人気と反比例するように、
落ちぶれてゆく。


ついにエスターは、アカデミー賞主演女優賞を受賞する。
しかし、スピーチの途中で現れたノーマンのせいで、
舞台は台無し。
ノーマンは、アルコール依存症の矯正施設に入る事になるが・・・。





最近続けて観た、バーブラ・ストライザンドの「スター誕生」と、
ジュディ・ガーランドの「スタア誕生」の、
これがオリジナル版。


ラストがジーンと心に沁みて、
涙が出そうだった。
別に、古いものが何でもいいとは思わないけれど、
3作の中では、本作が一番感動だった。
他の2作が180分近くあるのに比べて、
これは110分と、スッキリしているのも良い。


エスターが田舎にいる頃からの場面があるので、
感情移入がしやすい。
彼女がどれだけ映画が好きで、
そして、どれだけノーマン・メインのファンかという事を、
観ている者は知っているから、
2人が出会った場面は、
ミーハー的な緊張でドキドキしてしまう(笑)。


それだけなら、
単なる軽いアメリカンドリームものだけれど、
憧れだったスターが、
実は、アルコール依存症に苦しんでいるというのが、
この映画の深い所だ。


華やかなものの裏側にある影、
ハリウッドの内情みたいなものを垣間見た気がして、
映画が好きな者にとっては、
大変な興味を覚える。


3作全てに言える事だけれど、
一人の女の成功物語と同時に、
ラブストーリーでもある。
3作とも、女は、愛する男を見捨てない。
どんなに落ちぶれても、
周囲の人間から忠告されても、
彼を見離す事はない。


ただ、その愛と甘やかしが、
逆に男を駄目にしているとも言えるのよ。
でも、他人はみんなそう思っていても、
当人は気付かない事ってあるから。


評価 ★★★★☆

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「デンジャラス・ラン」 [映画]

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〔2012年/アメリカ〕


南アフリカ・ケープタウンにある、
CIAのアフリカ支局。
新米のライアン・レイノルズは、
退屈な閑職に耐えられず、
上司に、転属を懇願するが、
願いは中々叶わない。


そんなある日、国際指名手配されている、
デンゼル・ワシントンが連行されてくる。
かつてワシントンは、CIA屈指の腕利きエージェントだったが、
今は裏切り者の大物犯罪者だ。


ワシントンが尋問されていると、
建物の中に武装集団が押し入ってくる。
ワシントンの命を狙っているらしい集団から彼を守る為、
レイノルズは、2人で脱出する。


ワシントンがここにいる事は、
一部の人間しか知らないはず。
内通者がいるのは明白で、
しかし、それが誰かは分からない。


また、逃げる途中、
ワシントンの姿を見失い、
サッカー場から、スラムまで、
彼を探しまくるレイノルズ・・・。





邦題の通り、
なんだか走ってばかりいる印象の映画(笑)。


デンゼル・ワシントンは、
言葉巧みに、相手の心に入り込むのが得意という設定だったが、
そういった場面はそれほど多くないのが残念だった。
彼はライアン・レイノルズに、
「上司は○○と言うだろう。それは裏切りの証だ」
みたいな事を言う。


けれど、それって、
映画ではよく出てくる言葉で、
特別な感じがしない。
レイノルズの態度も、
「せ、洗脳なんかされないぞ、ボクは」
みたいな感じで(笑)、
なんだか頼りない


内通者というのが、
もう、まるでそのまんまというのが逆に可笑しい。
観る者にそう思わせておいて、
実は別の人、というのが大抵の映画のパターンだと思うのだけれど、
その人は、最初から怪しいうえに、
やっぱりそうで(笑)。


おそらくは、生涯行く事はないであろう、
南アフリカの街が沢山映ったのは良かった。
南アフリカというと、
「第9地区」とか「ツォツィ」とか「インビクタス」を思い出すけど、
ワシントンたちが走り回る分だけ、
景色も沢山見られた気がして。
(気がしただけかも(笑))。


サッカーの試合会場を、
追いかけっこする場面も良かったな。
あの試合が、
何か大きな大会なのか、
日常行われているレベルのものなのかは、
サッカーに詳しくないので、分からないけれど。


評価 ★★★☆☆

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「夢売るふたり」 [映画]

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〔2012年/日本〕


都内で小さな小料理屋を営む、
阿部サダヲと松たか子夫妻。
店は順調に5周年を迎えたが、
火事を出してしまい、全焼する。


全てを失い、失意のどん底の阿部は無気力になってしまうが、
ある日、店の常連だった女と関係し、
その女から金を貰った事がきっかけで、
松はある事を思い付く。


それは、小金を持っていそうな女を
結婚を餌に阿部が騙し、
金を巻き上げるという手口。
そう、2人は結婚詐欺で、
新しい店の軍資金を稼ごうと決めるのだ。


高級料理店で働き出した2人は、
カモになりそうな女性客を物色する。
ターゲットになりそうな女は沢山いて、
阿部は一人一人から、百万単位の金をせしめてゆく。


しかし、悪人になり切れない阿部と、
冷静な松との間には、
意見の相違が生まれ・・・。





女からすると、
とても意地悪な目線で女を見る映画だった。
「そうなんだよね、女ってそういう事考えるよね」って、
人には知られたくない本音が
表面に出ている感じ。


一番顕著だったのは、
松たか子が、重量挙げの選手・江原由夏を
次のターゲットにし、
阿部に会わせる場面。


もう本当に、この時の松の言った事は意地悪で、
さすがの阿部も松の言葉に怒る。
女の持つ精神の醜悪な部分がモロに出てしまっていて、
女の私にしたら、恥ずかしいような場面。


しかし、だからといって、
阿部が松に愛想を尽かして別れるわけでもなく、
その後も、2人は普通に暮らしている。
男と女ってそんなものなんだよねと
なんか分かるような流れ。


犯罪物の映画を観ていると、
時に、「完全犯罪が成立しますように」と
願ってしまう場合があるけれど、
この映画に関しては、
なんだろう、
「この2人が何とかして御用になりますように」と
思っている自分が不思議だった。


その心理は自分でもよく分からない。
物凄い極悪人でも肩入れしてしまう場合もあるのに、
めちゃくちゃ悪人ではない阿部には、
成功を望まなかった。


被害者の女性が可哀想だからとか、
阿部が根はいい人だからとか、
そんな風な具体的な理由が頭に浮かんだわけではなく、
ただなんとなく、自然に湧いてきた感情。


長いせいか、焦点が絞り切れてしないのが、
ちょっと残念。


評価 ★★★☆☆

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「ミックマック」 [映画]

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〔2009年/フランス〕


主人公・バジル(ダニー・ブーン)は、
幼い頃、父親を地雷で亡くしてしまう。


大人になり、レンタルビデオ屋で働くようになった彼は、
店の前で起こった銃撃戦のせいで、
流れ弾が額に当たり、
その銃弾が頭に埋まったまま生きていく事になる。


仕事を失い、途方に暮れたバジルは、
ギロチン男と呼ばれるホームレス・プラカール(ジャン・ピエール・マリエル)に、
拾われ、彼の住処に連れていかれる。


そこには個性溢れた7人の人間が、
廃品回収をしながら、共同生活をしていた。
人間大砲、軟体女、
計算機女、民族史学者などなど。


ある日バジルは、
父を殺した地雷を製造した会社と、
頭の中に埋まっている銃弾を製造した会社が、
偶然向かい合わせのビルである事を知る。


バジルは7人の仲間たちの協力で、
この二つの会社へ、復讐を企てるが・・・。





先日観た、「最強のふたり」で、
スラム出身の介護者を演じた、
黒人俳優オマール・シー。


彼が他にどんな映画に出ているのか興味を持ち、
調べてみたら、
ある程度ちゃんとしたセリフがあるのは、
この「ミックマック」だけのようであった。


「ミックマック」といえば、
私が大大大好きな「アメリ」のジャン・ピエール・ジュネ監督の
作品じゃないか。
いつか絶対観ようと思っていたので、
いい機会だと思い、借りてきた。


この映画でのシーは、民族史学者で言語オタクという、
「最強の~」とはまるで違う役を演じていた。
眼鏡をかけて、言葉を操る彼は、
頭が良さげで、知的な青年。


映画そのものも、
「アメリ」の監督が作った作品らしさに溢れていて、
グリーンを基調にした画面が本当に綺麗。


全体の雰囲気も「アメリ」に似ていて、
あの不思議な雰囲気もそのまま。
アメリが通行人として歩いていても、
全く違和感なく、溶け込んでしまいそうな感じ。


バジルと7人の仲間たちがする「復讐」というのも、
復讐というより、イタズラに近く、
これもアメリがしていた事の延長のような感じで、笑える。
騙しが基本なので、
全ての場面が伏線となっていて、少しも目が離せない。


武器証人たちへの痛烈な批判が込められているようだけれど、
オチは、現在のネット社会を利用した形になっていて、
そこに今までとの違う新しさを感じた。


評価 ★★★☆☆

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「蝶々・雄二の夫婦善哉」 [映画]

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〔1965年/日本〕


法善寺の近くでぜんざい屋を営んでいる、
ミヤコ蝶々と南都雄二夫妻。


蝶々は商売熱心で、
懸命に店を切り盛りしていたが、
南都は、蝶々の父に言われて彼女と結婚したという、
引け目から抜け出せず、
頭の上がらぬ毎日。


しかも彼は、
無類の女好き。
店の店員から、配達先のお客にまで手を出す始末で、
蝶々は気の休まる時がない。


ある時、南都は、飲み屋を営む女・綾子から、
洋食屋を開きたいとの希望を聞かされ、
自分も一緒にと、料理学校に通い出す。


急に商売に熱心になったと勘違いした蝶々は、
南都を応援するが、
ついに綾子の存在に気付き、修羅場となる。


蝶々は南都を許さず、
南都も、若い綾子と生きてゆく事を決め、
家を出てゆくのだが・・・。





大阪を舞台にした、
コテコテのコメディだと思っていたけれど、
とても哀しい。
ラストは切なすぎるくらい、切ない。


笑いの中にある悲しみとでも言おうか、
ミヤコ蝶々がどんなに懸命に南都雄二を愛しても、
おそらくは、南都が蝶々の気持ちを理解した事は一度もない。


南都は、
「蝶々の父親に言われて、仕方なく一緒になった」みたいな
事を言う。
さらに、「一度でも妻を“お前”と呼んでみたかったけれど、
蝶々だと怖くてそれが言えない」とも言う。


そんな風に言われてしまうと、
女ももう、何も言えないね。
もっと別の形で出会っていればと、
運命を恨むしかない。


蝶々さんと南都さんは、
実生活でも夫婦だっと、観終わってから知った。
けれど映画と同じで、
南都さんの浮気が原因で、58年には別れたそうだ。


つまりは、この映画は、
離婚後に作ったという事で、
その仕事に対するプロ根性には感心する。


私だったら、別れた男と一緒に仕事できるだろうかと
考えてみたけれど、
相手をまだ好きだったら、
他の女性と一緒にいる姿は、
見るのも辛いだろうし、
逆に大嫌いだったら、
顔を見るのも嫌であろうし、
いずれにしても、一緒にいるのは難しそうだ。


もちろん、そんなシチュエーションになった事がないから、
想像でしかないんだけど(笑)。


評価 ★★★☆☆

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