SSブログ

「イキガミ」 [映画]

ikigami.jpg
〔2008年/日本〕


「国家繁栄維持法」。
それは、国民に命の大切さを再認識させ、
死の恐怖を実感させる為の法律。


全国民は、小学校入学時に、
「国繁予防接種」が義務付けられ、
1000人に1人が
18歳から24歳の間に、
体内に入れられたカプセルにより、死亡するのだ。


カプセルを体内に持つ人間は、
死ぬ24時間前に、厚生保健省の職員から、
「逝紙(イキガミ)」と呼ばれる通告書が配達される。


宣告を受けた者は、
死亡までに飲食費や交通費がタダとなり、
遺族には遺族年金が支払われる。


映画は、「逝紙(イキガミ)」の配達を仕事とする、
厚生保健省の職員、松田翔太の目線で、
彼が配達する3人に死亡予定者の顛末が描かれる・・・。





もしこのような法律が本当にあったら、
死亡予定者による犯罪が起こるんじゃないかなと、
そう思っていたら、
案の定、冒頭からそういう展開。


しかし、「国家繁栄維持法」は、
もちろん、そんな事は想定の範囲内であり、
私が心配するまでもなく、
死亡予定者が犯罪を犯した場合はについても、
ちゃんと決まりがある。


「逝紙(イキガミ)」配達人の松田翔太は、
この法律に疑問を抱いており、
「逝紙(イキガミ)」を受け取った本人や家族のショックに接する度に、
その心は揺れ動く。


笑える場面ではないけれど、
配達した先の家で、
今まさに自殺しようとしている死亡予定者を、
必死に助けた場面に、
なんとも言えない皮肉なものを感じた。


どうせ24時間後には死ぬと分かっているのに、
人は人の死に直面した時、
本能的に助けずにはいられないものなのか。


もちろん、こんな法律は有り得ないけどね。
そもそも、入学式にニコニコした顔で、
門をくぐる親子という設定からして、
私には理解不能。


1000人に1人の確率で、
間違いなく死ぬ注射を、我が子が打たれるというのに、
笑っていられる親はいないだろう。


評価 ★★★☆☆

「続 新悪名」 [映画]

zokushinakumyo.jpg
〔1962年/日本〕


闇市がなくなり、
仕事を失った朝吉(勝新太郎)は、
親方から酷い目に遭わされている、
靴磨きの少女・ひろみ(赤城まり)を助ける。


追い払っても追い払っても付いてくるひろみを、
朝吉は仕方なく、自分の宿に連れ帰る。


宿には偶然、旧知のオカマ・おぎん(茶川一郎)が逗留していた。
おぎんは、旅回りの劇団で女形をしており、
美しい女座長・五月淳子を紹介される。


五月は、公演が明日に迫っているというのに、
地元の劇場の館長・玉島(遠藤辰雄)から許可が下りず、
困り果てていた。
話を聞いた朝吉は、玉島の事務所に乗り込む。


すると、事務所で用心棒をしている清次(田宮二郎)と
偶然再会する。
朝吉の交渉で、公演は無事行われ、
また、劇に子役として出演したひろみの、
歌の上手さに目をつけた清次は、
ひろみをのど自慢大会に出場させて、
賞金を狙おうと、画策する。


ところが、興行を仕切っていた大磯(杉田康)に、
金を持ち逃げされてしまい・・・。





シリーズ4作目。


物語は一応、前作から続いてはいるが、
続編というほどではないので、
これだけ単品で観たとしても、
それほど違和感はない気がする。


朝吉が面倒を見る、
旅回りの劇団というのも、
初めての登場だし、
子役がこれほどメインで活躍するのも初めてだ。


この、ひろみを演じる赤城まりという少女、
なんとも、おませで、大人顔負けのセリフを言う。
その様子や歌声は、
子供の頃の美空ひばりといった風情。
しかし、検索してみても、
この映画しか出ていないようだから、
これきりだったのだろうか。


オカマのおぎんも大好き。
おぎんは朝吉に惚れていて、
とっても可愛い。
朝吉は、もちろんおぎんとどうこうなりはしないが、
特に差別なく、彼と接する。
朝吉のそういう所が、人々から愛される所以であろう。


この先のシリーズはどうなっていくのだろう。
こんな風に、
続きでありながら、
一話完結みたいな感じなんだろうか。
それはそれで、結構面白いけれど。


評価 ★★★☆☆

「私が、生きる肌」 [映画]

watashigaikiruhada.jpg
〔2011年・スペイン〕


人工皮膚開発の権威・ロベル・レガル(アントニオ・バンデラス)は、
美しい女・ベラ(エレナ・アナヤ)を、
自宅の豪邸に監禁している。


12年前、ロベルの妻は、
炎上する車の中から助けられたが、
全身に火傷を負い、
そのショックから非業の死を遂げていた。


以来、ロベルは、「完璧な肌」を作り出す為の執念に燃え、
その為に、ベラを誘拐し、
彼女を人体実験の被験者にしているのだ。


ベラの身の回りの世話する、
初老の家政婦・マリリア(マリサ・パレデス)に、
ある日、彼女の息子・セカ(ロベルト・アラモ)が訪ねてくる。
野卑な悪党のセカは、
ベラの姿をみて驚愕する。
ベラの容姿が、ロベルの妻にソックリだったのだ。


話は過去へと遡り、
ベラが屋敷に監禁される経緯が明らかになってゆく・・・。





やっぱり一筋縄ではいかなかった、
ペドロ・アルモドバル監督。


原作があるというから、
ストーリーそのものは、
監督の発案ではないのかもしれないけれど、
その驚きの展開の見せ方が上手く、
途中までは、普通に観ていたのだけれど、
中盤から明らかになる驚愕の事実に仰け反ってしまう。


「トーク・トゥ・ハー」でも感じた事だけれど、
「倫理的に、それは絶対駄目でしょ」と思われるテーマを扱うのが、
この監督はめっちゃ上手い。
だって、普通の発想では有り得ない。
詳しくは書けないのだけれど。


アントニオ・バンデラスがいい感じ。
今までは、フェロモン男というイメージが強かったけど、
ちゃんと、世界的権威のある医者に見える。
さらに裏の顔は、変態という、
そんな面も、ちゃんと演じている。
結構好きな俳優さんだから、
上手く年を重ねられて、
私も嬉しい(笑)。


観終わった後、
何か考えさせられるとか、
私の人生に少しでも影響があったとか、
そんな事が一つもないのもいい(褒め言葉です)。
描き方によっては、
単なる変態ドクターの偏執狂日記みたいな内容を、
B級感を感じさせずに描いてあるのが凄い。


評価 ★★★★☆

「愛と誠」 [映画]

aitomakoto.jpg
〔2012年/日本〕


きゃ~☆、妻夫木く~ん☆
と、
昨日の私は、妻夫木くん一色の一日でありました。


なぜなら、
この「愛と誠」の初日舞台挨拶の、
なんと最前列が取れ、
もう自分でもビックリで。
先週の一週間、
私の脳内には星が飛んでいたと思う(馬鹿~)。


生で妻夫木くんを見るのは、「ノーボーイズ、ノークライ」の舞台挨拶以来、
2度目なのだけれど、
「ノーボーイズ~」の時は、一番後ろの席だったので、
今回は、気合いも入るってもんだ(笑)。


有楽町の角川シネマは、
特にステージのような物はないので、
登壇者さんたちは、設えられた長方形の台に乗るわけだけれど、
足元には、立ち位置を示す、
名前が書かれたテープが貼られている事に、
始まる前に気付いて、
「妻夫木様」なんて文字を見て、ますます興奮。


そして妻夫木くん、その他の皆さまが登場。
至近距離で見た妻夫木くんは、
それはもう、カッコ良くて、可愛くて、
視線釘づけでした。
「スラムダンク」でいうなら、
流川楓を見つめる、赤木晴子の、
あの「晴子ビジョン」と全く同じ状態(笑)。


ちなみに、友人は、
斎藤工さんの方がカッコいいと言っておりました(笑)。


さらに、映画が終わって、
会場を出た所で、
「ぴあ」さんから、出口インタビューまで受けてしまった。
(写真はお断りしました(笑))


まったくいい年して何やってんだか(笑)。
先日書いた映画レビュー「ガール」じゃないけれど、
こういう時、私は、大人になりきれない自分を思う。
でもミーハーだけはどうしてもやめられない。
こういう事に興奮しないのが大人なら、
私は一生大人にならなくてもいいわ。





映画の方はといえば、
まぁ、予告で全てが分かるというか(笑)。
原作とは別物と考えた方がいいかも。


それから、大きくデフォルメしてある。
特に、早乙女愛と岩清水弘の、
ストーカー気質のデフォルメが凄い(笑)。
特に愛なんか、誠の言う事全てを、
自分の都合のいいように解釈しちゃってる(笑)。


誠が何度も言う、
「お前たちが、かえって事をややこしくしている」ってセリフに、
私もハッと目が覚めたよ(笑)。
確かにそうだ。
愛や岩清水が、余計な事さえしなければ、
事態はそこまで大事にはならないんだよね(笑)。


清楚なふりして、実は出たがりで、
空気の読めない早乙女愛という解釈は、
新鮮だった(笑)。


以前にも書いたけれど、
 ↓
http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2011-05-30
「愛と誠」は、私が今まで読んだコミックの中で、
人生のベスト5に入るくらい大好きな作品。
西城秀樹さんの「激しい恋」を、
妻夫木君が歌ったのは、
最初に誠を演じた西城さんに、
敬意を表してなのかと、
勝手に思っているのだけれど。


評価 ★★★☆☆

「新 悪名」 [映画]

shinakumyo.jpg
〔1962年/日本〕


復員してきた朝吉(勝新太郎)は、
田舎に帰ると、自分が死んだことになっていて、
墓まで建てられている事に驚く。
けれど、家族や村の人たちは、
彼が生きていた事を喜んでくれる。


妻のお絹(中村玉緒)を訪ねた朝吉は、
お絹が別の男と結婚し、
子供までなしていた事にショックを受ける。
しかし、ショックはお絹も同じ事。
死んだと思っていた朝吉が生きていたなら、
ずっと待っていたのにと、後悔の涙を流す。


朝吉の舎弟だった貞(田宮二郎)の弟・清次が、
釜ヶ崎にいると知った朝吉は、
貞の母親を伴って、弟を探しに行く。


やっと見つけた貞そっくりの清次(田宮二郎・二役)は、
怪しげな英語を操り、
闇市の土地を買い取るという野心に燃えた男だった。


闇市で雑炊屋を始めた朝吉だが、
清次のボスから立ち退きの嫌がらせに遭う。
清次は、稼いだ金を、
土地購入の為、ボスに渡していたが、
ボスは清次の事など眼中になかった。


騙されたと知った清次は、
朝吉の側に付き、
大騒ぎとなる・・・。





シリーズ3作目。


これは、本当に「新」だ(笑)。
というのも、2作目の終わりで、
ある事件が起こり、
お話は完全にリセットされているのだ。


なので、3作目以降は一体どうなるのかと、
一人心配していたのだが、
そうか、そうきたかという展開。


しかも、1・2作目より、
こちらの方がずっと面白い。
ストーリーもしっかりしているし、
コミカルな面もある。
やっと軌道に乗って来たという感じ。


戦後の闇市を巡っての、
ヤクザの組と、店を出す人々の攻防が、
大変に興味深い。
勝新太郎は、
まるで「兵隊やくざ」の大宮貴三郎の
復員後の姿のようで、
懐かしい気さえする。


これからの展開が楽しみだ。


評価 ★★★★☆