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「父ありき」 [映画]

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〔1942年/日本〕


金沢に住む教師・笠智衆は、
妻を亡くし、
男手一つで息子を育てている。


修学旅行先で起こった事故で、
生徒を亡くしてしまった笠は、
その責任を重く受け止め、
教師を辞め、息子と信州の実家に帰る。


息子は中学に進学し、寄宿舎生活となる。
それを機会に、笠は東京に出てサラリーマンとなる。


立派に成長した息子・佐野周二は、
秋田で教師の仕事に就く。
しかし、小学校卒業以来、
一度も笠と一緒に暮らしていない佐野は、
父と暮らしたいという思いが強く、
仕事を辞めて、自分も東京に出てこようかと、
笠に相談する。


しかし、笠はそれを認めなかった。
「一度就いた仕事を、天職だと思ってやり遂げなさい」と。
その諭しの言葉に、佐野は深くうなずく・・・。





小津安二郎監督の名作。


小津監督の映画というと、
父と娘という組み合わせの印象が強いと、
勝手に思っていたのだけれど、
父と息子というのも、それはそれで味わい深い。


佐野周二がとにかく「いい子」だ。
思春期に父と離れて暮らしたせいもあるのか、
笠の意見に素直に従う。
笠も自分の意見を押し付けるのでなく、
穏やかに話すので、
私まで諭されているような気持ちになる(笑)。


昔の子供って、みんなあんな感じだったのだろうか。
子供たちは皆、
友達のお父さんに会うと、
ピッと正座して、きちんと挨拶する。
年長者が全て偉いとは思わないけれど、
自然に身に付いたような、
大人に対する姿勢は素晴らしいものがある。


笠は佐野に、結婚も勧める。
友人の娘さんにいい子がいるから、
彼女と結婚してはどうかと。
佐野は、照れながら、「お父さんにお任せします」って。


ここはちょっと茶化したくなる場面(笑)。
だって、今では考えられない。
そんな人生の重大事まで、
「親の意見なら間違いない」と言わんばかりに従う、
息子の従順さ。
最近、結婚しない人が増えてきたのも、
こういう親子関係が無くなったのが、
原因の一つかも。


笠さんはこの映画の撮影時、38歳で、
息子役の佐野さんとは8歳差だそうだ。
けれど、観ていても違和感はない。
ちゃんと親子に見えた。
それから、ちょっとイチローに似ている気がした。


評価 ★★★★☆

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