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「大菩薩峠」 [映画]

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〔1966年/日本〕


大菩薩峠を旅する老人と孫娘・お松(内藤洋子)。
お松が水を汲みに場を離れた隙に、
老人が理由もなく切り殺される。


殺ったのは、机竜之介(仲代達矢)。
いつも空しい心を抱え、
投げやりな生活を送っている。
そんな彼を、病床の父はいつも心配している。


家に帰った竜之介は、お浜(新珠三千代)という女から訪問を受ける。
お浜は、明日行われる奉納試合で、
竜之介が対戦する宇津木文之丞(中谷一郎)の妻で、
どうか明日の試合の勝ちを夫に譲ってほしいと、
願い出てきたのだ。


竜之介は、「剣の道は女の操と同じ」と言い、
裏山の水車小屋にお浜を呼び出し、手籠めにする。


それを知った宇津木の心は乱れ、
試合の際、死亡する。
行き場のなくなったお浜は、
竜之介に付いて、江戸へ出奔。


2年が経ち、子供までなした2人だが、
生活は荒れ、気持ちは冷め切っていた。
さらに、宇津木の弟・兵馬(加山雄三)が、
兄の仇を打つため、江戸で修行に励んでいた・・・。





市川雷蔵、片岡千恵蔵の「大菩薩峠」を、
以前、続けて観たが、
それならやはり、仲代達矢版も観なければ、
なんだか落ち着かないと、借りてきた。


仲代の登場シーンからゾッとする。
何かに憑りつかれたような、
物の怪のような目が大変に怖く、
上手いなぁと感じる。


お浜との関係も、
私の中でちょっと見方が変わった。
市川、片岡版で、
お浜は、竜之介から手籠めにされた被害者だと思っていたけれど、
こちらでは、お浜は自分で帯を解いている。


考えてみれば、
その場で押し倒されたのならともかく、
呼び出された水車小屋に出向いていくのだから、
そこで何が起こるかは、分かっているはずであろう。
夫を勝たせたい一心とはいえ、
行かなければ、後の苦しみは無かったはずなのだ。


お浜が竜之介に付いて、
江戸へ行くというのも、
自分を手籠めにした男に、普通付いていくか?と思ったものだが、
お浜は、試合前に、
宇津木から離縁状を叩きつけられているんだよね。
宇津木の家に居られなくなった彼女はもう、
竜之介に頼るしかなかったわけだ。
全部じゃないけど、半分くらい納得(笑)。


竜之介の父は、彼の身を大変に案じているのだけれど、
それは、彼が心配というより、
彼が他人に迷惑を掛けていやしないかと、
そちらが気になるようだ。
「あれが一日も早く死んでくれたら」などと言う。
実の父にそんな事を言わせるくらい、
竜之介とは、不気味な存在なのであろう。
もちろん、そんな風に親から言われる彼も、
可哀相といえば、可哀相だけれど。


この仲代版も、片岡版も、
DVDのジャケット写真は、
狂ったように御簾を切りつけている場面。
やはり、それが一番の見せ場であろう。
3本の中で、その場面が一番面白かったのは市川版。
仲代版は、全体は良かったけれど、
その場面では、わたし的にあまり緊迫感が感じられず、残念。


長い長いお話しで、
市川・片岡版は、3作まであるが、
仲代版これは1本だけ。
ラストも、続きがあるような感じがしなかったので、
最初からそのつもりだったのかもしれない。
原作も未完だそうだから、
どこで終わっても問題ないのであろう(笑)。


評価 ★★★☆☆

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