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「世界から猫が消えたなら」 [映画]

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〔2016年/日本〕


平凡な郵便配達員の僕(佐藤健)は、
ある日突然、末期の脳腫瘍と診断されてしまう。
憔悴しきったまま家に帰ると、
なぜか部屋に、
僕にそっくりの男(佐藤健・二役)がおり、
自らを「悪魔のようなもの」だと言う。


その悪魔は、
「お前の命を1日延ばす代わりに、
世界から一つずつ何かを消す」と言い、
僕は了承する。


まずは電話。
世界中から電話がなくなる。
すると、なんという事か、
間違い電話がきっかけで知り合った、
元恋人(宮崎あおい)は、
最初から僕の事など知らないかのような様子だ。


次に映画。
映画がきっかけで知り合った親友(濱田岳)が働く
DVDレンタル店は本屋に変わり、
親友も、元恋人と同じように、
僕の事など全く知らないようだ。


次は時計。
僕の父は時計屋だ。
時計は僕が幼いころ、
一番身近にあった物だ。
そして次に「猫」と言われたとき、
僕は決断する・・・。





私も想像した事がある。
もしも映画がなくなってしまったら、って。


この映画のように、
世界中から映画がなくなるとは思わないけど、
例えば、私自身が何らかの病気で、
目や耳が不自由になったりして、
映画を観られなくなったら、どうなるんだろうって。


そんな時、
「いやいや、私は映画が好きだけど、
中毒でも依存症でもない。
映画が観られなくなったくらいで落ち込むことはない」って
思ってた。


でも、この映画を観ている流れの中で、
悪魔が「映画を消す」と言った瞬間、
想像以上のショックを感じた自分に驚いた。
涙が出た。
私は、私が思っている以上に映画が大好きで、
人生の一部であり、目標にもなっていることに
気付かせてもらったというわけで。


それ以外にも、
今、世界にあるもので、
無駄な物なんて一つもないんだなぁというのも思った。
自分にとっては不必要な物でも、
それを生き甲斐にしている人や、
大切にしている人や、
日々の糧にしている人がいる。
世界はそうやってできているのねと、あらためて思う。


濱田岳くんが、映画オタクの役で、
佐藤君に次々とDVDを貸すシーンが好き。
私も誰かから、
映画を薦められるの、大好き。
たとえそれが私の好みに合わない作品だとしても、
観て損した、なんて事は絶対に思わない。
観て損する映画なんて無い。


それから、
今までしつこいくらい書いているし、
これからも書くだろうけど、
もしも神様が私に、
あと1度しか海外旅行ができないと言ったとしたら、
絶対、南米に行く。


特に一番行きたいのはイグアスの滝で、
この映画は予告でもわかる通り、
佐藤くんと、宮崎あおいたんが、
一緒にアルゼンチンを旅し、
イグアスに行く場面がある。


いいなぁ。
ブエノスアイレスの町を
洋画でなく、日本人の映像で観られて感激。
ますます行ってみたくなる。
私の中に、色々な目標や夢があるけど、
これもその一つ。
いつか叶えられるといいのだけれど。


評価 ★★★☆☆

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「甦る熱球」 [映画]

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〔1949年/アメリカ〕


テキサスの田舎町で、
草野球に興じていたモンティ・ストラットン(ジェームズ・スチュワート)は、
偶然行き合わせた
元大リーガー・バーネー・ワイル(フランク・モーガン)に
声を掛けられる。


「ストラットンなら大リーグでも通用する」
その才能を見抜いたワイルは、
彼をカリフォルニアに連れ出し、
シカゴ・ホワイトソックスの監督に彼の投球を見せた。


それはワイルにとっても、
再起のチャンスだった。
ストラットンはホワイトソックスと契約し、
ワイルもトレーナーとして雇われる。


ストラットンは大リーガーとして、
めきめき頭角を現し、
さらに、美しい恋人・エセル(ジューン・アリソン)と結婚、
息子も生まれ、
人生、順風満帆。


ところが、里帰りした実家で、
うさぎ狩りに出掛けた彼は、
転んだはずみで、
自分の右脚を猟銃で撃ってしまい、
膝上から切断せざるを得なくなってしまう・・・。





1930年代に大リーグで活躍した、
実在の義足プレーヤー・モンティ・ストラットンの
人生を描いた物語。


このストラットンという人を、
私はよく知らないけれど、
この映画の通りの人だとするなら、
ジェームズ・スチュワートにピッタリの役柄だと思う。


映画の中のストラットンは、
真面目で愛妻家、
妻・エセルに「取材だ」と嘘を吐き、
「何で?浮気とか?」と観客を不安にさせておいて、
実は、妻を喜ばせる為に、
ダンス教室に通っていたなどというエピソードは、
とても可愛く、微笑ましい。


それを、「アメリカの良心」と呼ばれ、
ハリウッドスターにしては、
生涯一度もスキャンダルがなかったと言われる
ジェームズ・スチュワートが演じると、
説得力が増す(笑)。


なので、余計に、
猟銃の事故がショックで。


その事故は突然やって来る。
演出も、
「来るぞ来るぞ」といった不安がなく、
全くの自然な流れで、
観ているこちらも、「あ、やっちゃった!」と思ったくらい。
しかし、実際の怪我って確かにそんな感じだ。
「あ!」と思った時は既に遅く、
体は傷ついているのだものね。
そうならないように、なるべく気をつけて行動したいものだけれど。


彼は義足を付けて、
大リーグに復帰するのだけれど、
その陰に、妻・エセルの力があった事も大変に印象深い。
エセルがいなかったら、
彼はどうなっていたのだろうと思うくらい。
エセルを演じたジューン・アリソンの笑顔が素晴らしくて。


それから、一つ、
忘れちゃならないのが、
ストラットンの子供役の赤ちゃん!


この子は、揺り籠の中で、
天井を見つめている時、
ジューン・アリソンが近づくと、
本当に嬉しそうに、ニコっと笑う。
それがもう、本当のお母さんの顔を見た時の赤ちゃんみたいに、
可愛くて可愛くて、
巻き戻してもう一度観ちゃったくらい可愛くて。


さらに、右脚を失って、
自暴自棄になっているストラットンの前で、
尻もちをつきながら、
歩き始める様子を見せる。


これはもう、
無垢の赤ちゃんだから感動できる場面。
主役が食われてしまったような感じだった(笑)。


評価 ★★★★☆

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「愛すれど哀しく」 [映画]

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〔1971年/イタリア〕


イタリアの若い娘・ベルタ(オッタヴォア・ピッコロ)は、
パン職人のブブ(アントニオ・ファルジ)に夢中になり、
同棲する事になった。


しかし、最初は優しかったブブが次第に正体を現し、
彼はベルタに、
「街角に立って客を取れ」と
売春を強要するようになる。


ブブを愛するベルタは彼の言いなりになるが、
ある日、知り合った男・ピエロ(マッシモ・ラニエリ)が、
ベルタに恋し、
「足を洗って一緒になろう」と言ってくれる。


そんな中、ベルタが体調不良になる。
彼女は梅毒に罹ったのだ。
ベルタが入院したせいで、
ブブは金に困り、
盗みに入るが逮捕されてしまう。


退院したベルタはピエロの家に行き、
ブブが拘留されている今こそ、
真っ当になるチャンスだと、
出直しを決意するが・・・。





昨年の暮れに観て、
大変な衝撃を受けた「夜の片鱗」の
http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2015-12-22
元になった映画がこれだと、
どこかのサイトに書かれていたので借りて観てみた・・・


・・・と、ここまで書いて、
調べてみたら、
あれ?変だ。
「夜の片鱗」は1964年、
この「愛すれど哀しく」は1971年の映画じゃないか。
「夜の片鱗」の方が古い。


どこでそんな情報を見たのかと、
探してみたら、
確かに書いてあるサイトがある。
しかも、「原作者が同じ」とまで書かれている。
うーん、どういう事なんだろう。
「夜の~」の原作者は太田経子さんで、
「愛すれど~」の原作者はシャルル=ルイ・フィリップ。
そのサイトの方は、何か勘違いしてしまったのだろうか。
それとも、太田さんが、
シャルル=ルイ・フィリップの小説を翻案したのだろうか。


どんな情報でも、100%鵜呑みにしてはいけないね。
気を付けないと。


で、この映画。
「夜の片鱗」とはまるで別物とするなら、
女に客を取らせて、
自分は仕事をせずにのうのうと暮す男が、
どこの国にでもいるってのが興味深い。


この映画のブブの言い草が笑える。
「恋人ができた。これで自分も仕事を辞めて楽できる」って、あんた、
ヒモになる気、満々じゃん。
笑っちゃいけないけど、
イタリア男が言うと、なんだか可笑しい。


そんな男でも、
懸命に付いていこうとするベルタは、
とっても悲しい女で、
他に生きる術はないのかと思ってしまうけど、
まぁ、ないんでしょうな。


と言うのも、
彼女の姉も、彼女と全く同じ運命を辿っていて、
そうなるともう、
個人の資質もあるけど、
環境にも、そうなる一因があったのではないかと
思えるではないか。


タイトル通りの哀しい映画。


評価 ★★★☆☆

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「新・黄金の七人 7×7」 [映画]

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〔1968年/イタリア〕


イギリスのある刑務所で、
「サッカーの試合を見せろ!」と囚人たちがハンストを起こした。
しかし、当然取り合ってもらえず、
次々脱落する中、6人が最後まで残る。


空腹で倒れそうになった6人は、
刑務所内の病院に運ばれるが、
実はこれ、全てが作戦。
彼らは医者の助けを借り、
脱獄するつもりなのだ。


すると、仲間に入れる予定のなかった、
入院中の老囚人が1人、付いてきてしまう。
仕方ない、そやつも仲間に加え、
合計7人で、
なんとか脱獄に成功する。


彼らの目的は、造幣局に忍び込み、
紙幣を印刷する事。
猶予は、イギリス中の国民がサッカーを見ている時間。
計画は上手くいくのか・・・。





以前観て、めっちゃ面白かった、
「黄金の7人」。
http://aomikamica.blog.so-net.ne.jp/2013-09-12
以降、シリーズを公開順に観ていったけれど、
回が進むにつれて、
尻すぼみになっていったのを残念に思っていた。
しかし、シリーズ最後の本作は、
面白さが盛り返されている。


囚人たちが脱獄し、
ある一定の時間内に犯罪を犯し、
また刑務所に戻るという設定が可笑しい。


その「一定の時間」というのがまた、
サッカーの試合だってんだから、笑える。
刑務所の看守も、警察も、工場の守衛さんも、
定期バスや船の運転手さんも、
全ての人がテレビに釘付けで、
その間、仕事がお留守になってしまうという設定が、
絶妙に生かされている。


囚人たちの計画が進むのと同時に、
サッカーの試合の場面が挟み込まれる。
その演出によって、
彼ら残り時間があとどれくらいかが分かる仕組み。
上手い。


「自分たちは、刑務所にいた事になっている。
これぞ最大のアリバイだ」って、確かにそうだ(笑)。
で、一仕事終えて、
石炭車に乗って、ムショに戻った時の、
守衛さんのセリフが笑える。
「中身の検査はしないよ。ここを出たい奴はいても入りたい奴はいないからな」
って、いるんだよ、この車の中に(笑)。


全国民が、仕事をほっぽり出してまで夢中になるスポーツって、
よその国の事は分からないけど、
今の日本で、あるのかと考えた。
うーん、ちょっと思い付かない。
それだけのイベントは今後あるのだろうか。
4年後のオリンピックはどうだろう。
いや、そこまで盛り上がるのかどうか、
今の状態では疑問(笑)。


評価 ★★★★☆

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「伊豆の踊子」 [映画]

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〔1933年/日本〕


伊豆のある村で、
芸者が一人逃げ出したと、
大騒ぎになって、人々が探している。
そこへ通りかかった旅芸人の一座。
彼らは村人から、つまらない疑いをかけられ、
揉めている所へ、
通りかかった学生・水原(大日方伝)に助けられる。


水原は一座と一緒に旅する事にする。
彼は、一座の最年少の踊子・薫(田中絹代)の
愛らしさに惹かれ、
薫も水原を憎からず思うようになる。


薫の兄で一座の座長・栄吉は浪費家で、
親から受け継いだ山を売り払った過去がある。
ところがその山から金が出た事から、
売り払った相手・新井に、
金を寄越せと言いに行き、
逆に相手から、
だったら薫を差し出せと言われてしまう。


事情を聞いた水原が憤慨して、
新井の家に文句を言いに行くと、
新井は薫の事をきちんと考えてくれており、
さらに、息子の嫁にしてくれると言う。


自分がいたのでは、
薫は幸せになれない。
そう考えた水原は、
急に東京へ発つと、薫たちに告げる・・・。





先日の、「無法松の一生」に続いて、
映画化された「伊豆の踊子」も6作全部制覇した♪
やったね!(笑)


本作は、6作映画化された「伊豆の踊子」の
一番最初の作品。
踊子役は、田中絹代。
無声映画で、
私が借りたビデオは、
弁士さんの声入りだった。


しかし、これ、川端康成原作の「伊豆の踊子」とは違うものだと
考えて観た方がいいかも。
鰐淵晴子版も、ずいぶん違っているなぁと思ったけど、
こちらを観ると、
鰐淵版の設定の違いなど、可愛いものよ(笑)。


原作では有り得ないエピソードが盛り込まれている。
特に薫の兄のキャラ設定が酷い。
彼は、親の金を使い果たした放蕩者で、
薫の事など何も考えてやっていない。


ただ、原作の事を考えず、
独立した一本の映画だと思えば、
それはそれで面白い。
結構夢中になって観てしまう。


それに、映画化されたのが昭和8年、
原作が昭和初期の頃という設定だから、
時代がほぼリアル。
伊豆の山道の雰囲気などが、
私が頭で思い描く風景にピッタリで、
他のどの映画よりも、良かった。


田中絹代さんの地味な顔も、
「ああ、当時の伊豆の旅芸人の少女って、
 本当にこんな容貌だったのかも」と思わせ、
すんごく合っている気がして。


毎度書いてしつこいけど、
薫と水原の「映画に行く・行かない」問題のエピソードは
ちゃんとある。
ただ、本作では、
それを義母に阻止されるのではなく、
水原が自ら、それを断る。


それは、彼が薫をこれ以上好きになってはいけないとの
自分の心にブレーキをかけた結果であり、
なんとも悲しい。


別れのシーンも悲しかったなぁ。
今だったら、メールやLINEのアドレス交換していただろうに。
もちろん、
そんなものがない時代の男女だからこそ、
名作と言えるんだろうけど。


評価 ★★★☆☆

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