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「忘れえぬ慕情」 [映画]

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〔1956年/日本・フランス〕


フランスから長崎の造船所に赴任してきた
マルサック(ジャン・マレー)は、
呉服屋の娘・乃里子(岸惠子)と恋に落ちる。


マルサックは、
乃里子のフランス語の教師・リッテル(ゲルト・フルーベ)の
家に居を移す。
リッテルは大の親日家で、妻は乃里子の親友。
マルサックも日本の生活に馴染んでゆく。


ところが、ある日、
マルサックの昔の恋人・フランソワーズが、
長崎にやって来る。
乃里子を愛しつつも、
積極的なフランソワーズの誘いに抗いきれないマルサック。


乃里子の妹・冴子(野添ひとみ)の結婚式より、
フランソワーズとの逢い引きを選んだマルサックに、
乃里子は彼との別れを決意する。


そんな中、
長崎を巨大台風が襲った。
乃里子の身を案じたマルサックは、
フランソワーズが止めるのも聞かず、
彼女の家に行くのだが・・・。





岸恵子さんが、
フランス人の映画監督・イブ・シャンピと
結婚していたというのは、
有名な話だけれど、
これは、その2人が出会うきっかけとなった映画なのだそうだ。


小津安二郎監督は、
「日本の男がだらしないから、
フランス男なんかに彼女を持っていかれるんだ」と、
怒っておられたという。
小津監督の「東京暮色」の、あの妹役は、
岸さんをイメージして書かれた作品との事で、
それが事実なら、
怒りたくなる気持ちも、分からなくはない。
岸さんの「東京暮色」、観てみたかったな。


で、この映画。


日本人の今の恋人と、
フランス人の昔の恋人との間で揺れる男という、
まぁ、ストーリーは平凡。


危ない雰囲気は、マルサックが、
長崎から大阪へ出張する日の夜から始まる。


マルサックを駅に見送りに来た岸さん扮する乃里子だけど、
キスしようとしたマルサックを、
人が見ているからと避ける乃里子。
どうやら、2人は肉体的な接触は皆無らしい。


ところが、電車に乗ると、
彼の出張を知っていたフランソワーズが、
「来ちゃった♪ てへ♪」みたいに乗っていて、
何度もキスを。
これじゃ乃里子の分が悪いわ(笑)。


まぁ、それは仕方のない事。
1956年当時、
日本で、男女が人前でキスするなど
考えられなかったでしょうし、
乃里子は奥ゆかしい呉服屋の娘。
フランス女の情熱には勝てっこないものね。


結局、マルサックとフランソワーズは、
出張がえりの広島に泊まるんだけど、
乃里子は、あるルートから
その事をとっくに知っていて、
戻って来て、何事もなかったように振る舞うマルサックが
なんだか滑稽で。


あんな狭い町で、
バレないとでも思っていたのかしら(笑)。


そしてクライマックスの台風のシーンへ。
この映画は原題が、
「Typhoon over Nagasaki」というくらい
台風の場面が重要。


とにかく凄い暴風雨で、
家がバタバタ倒れてゆく。
そんな中、再会するマルサックと乃里子。
一度はフランソワーズに負けたと思ったけど、
やっぱり最後は乃里子の勝ち?と思ったわ。
その後の事は書かないけど。


台風以外にも、
小さな地震があって、
フランス人が怯えるシーンがある。
やっぱり日本は、災害の多い国というイメージが
昔からあるのだろうか。


評価 ★★★☆☆