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「伊豆の踊子」 [映画]

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〔1933年/日本〕


伊豆のある村で、
芸者が一人逃げ出したと、
大騒ぎになって、人々が探している。
そこへ通りかかった旅芸人の一座。
彼らは村人から、つまらない疑いをかけられ、
揉めている所へ、
通りかかった学生・水原(大日方伝)に助けられる。


水原は一座と一緒に旅する事にする。
彼は、一座の最年少の踊子・薫(田中絹代)の
愛らしさに惹かれ、
薫も水原を憎からず思うようになる。


薫の兄で一座の座長・栄吉は浪費家で、
親から受け継いだ山を売り払った過去がある。
ところがその山から金が出た事から、
売り払った相手・新井に、
金を寄越せと言いに行き、
逆に相手から、
だったら薫を差し出せと言われてしまう。


事情を聞いた水原が憤慨して、
新井の家に文句を言いに行くと、
新井は薫の事をきちんと考えてくれており、
さらに、息子の嫁にしてくれると言う。


自分がいたのでは、
薫は幸せになれない。
そう考えた水原は、
急に東京へ発つと、薫たちに告げる・・・。





先日の、「無法松の一生」に続いて、
映画化された「伊豆の踊子」も6作全部制覇した♪
やったね!(笑)


本作は、6作映画化された「伊豆の踊子」の
一番最初の作品。
踊子役は、田中絹代。
無声映画で、
私が借りたビデオは、
弁士さんの声入りだった。


しかし、これ、川端康成原作の「伊豆の踊子」とは違うものだと
考えて観た方がいいかも。
鰐淵晴子版も、ずいぶん違っているなぁと思ったけど、
こちらを観ると、
鰐淵版の設定の違いなど、可愛いものよ(笑)。


原作では有り得ないエピソードが盛り込まれている。
特に薫の兄のキャラ設定が酷い。
彼は、親の金を使い果たした放蕩者で、
薫の事など何も考えてやっていない。


ただ、原作の事を考えず、
独立した一本の映画だと思えば、
それはそれで面白い。
結構夢中になって観てしまう。


それに、映画化されたのが昭和8年、
原作が昭和初期の頃という設定だから、
時代がほぼリアル。
伊豆の山道の雰囲気などが、
私が頭で思い描く風景にピッタリで、
他のどの映画よりも、良かった。


田中絹代さんの地味な顔も、
「ああ、当時の伊豆の旅芸人の少女って、
 本当にこんな容貌だったのかも」と思わせ、
すんごく合っている気がして。


毎度書いてしつこいけど、
薫と水原の「映画に行く・行かない」問題のエピソードは
ちゃんとある。
ただ、本作では、
それを義母に阻止されるのではなく、
水原が自ら、それを断る。


それは、彼が薫をこれ以上好きになってはいけないとの
自分の心にブレーキをかけた結果であり、
なんとも悲しい。


別れのシーンも悲しかったなぁ。
今だったら、メールやLINEのアドレス交換していただろうに。
もちろん、
そんなものがない時代の男女だからこそ、
名作と言えるんだろうけど。


評価 ★★★☆☆

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