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「珠はくだけず」 [映画]

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〔1955年/日本〕


小森家には母・(三益愛子)を中心に、
5人の兄妹がいる。
特に、次男の徹(菅原謙二)と三男の喬(根上淳)は、
同じ会社で働き、
柔道が趣味というのも同じで仲が良かった。


しかし、喬が突然会社を辞めると言い出し、
怒った徹と柔道場で争う。
勝負はつかぬまま、
喬は家を飛び出し、
バーでドラムを叩くようになるが、
やさぐれて、どうしようもない不良に成り下がってしまう。


2人が通っていた道場は、
炭鉱会社を経営する浅井(柳永二郎)が建てたもので、
浅井の一人娘・五月(若尾文子)も、
そこで稽古をしている。
実は、徹も喬も五月を愛しており、
しかし、五月の心は喬にあるため、
喬は苦しんでいるのだ。


浅井は、五月と同業の社長・竹山幸雄(船越英二)の結婚を
望んでいるが、
喬を忘れられない五月は、
その気になれない。


実は竹山は、喬たちの妹・きみ子(藤田佳子)と関係しており、
五月との結婚後も、
きみ子を愛人として囲おうと目論んでいる。
竹山を信じていたきみ子は、
大変なショックを受け・・・。





兄と弟の両方から愛され、悩む若尾さんのお話し・・・
かと思ったら、
若尾さんは全く悩んでいなかった(笑)。


なぜなら、菅原謙二演じる兄・徹は、
自分の気持ちを誰にも話さずにいるので、
そもそも問題になりようがない。
喬だけがそんな兄の気持ちに気付いて、
荒れてしまう。


しっかし、兄と同じ人を愛したというだけで、
あんなにやさぐれるものかね(笑)。
とにかく喬は夜の街で喧嘩三昧。
触れるもの全てに牙を向くって感じで、
その界隈で、彼を知らない者いないようだ。


兄を思い遣るのはいいけど、
結果、もっと家族に心配かけるようになってしまっている。
何のために家を出たのか分からない。
あんなになるくらいなら、
徹には気の毒だけれど、
彼の気持ちには気付かぬフリをして、
若尾さんと一緒になった方が、
まだ家族の平和が保たれるってもんだ(笑)。


若尾さんは喬を諦めようと、
船越英二扮する竹山って男と待合いに行っちゃうんだけど、
この竹山ってのがまた、いけ好かない男で(笑)。
そんな嫌な男、竹山が、
ある出来事をきっかけに、
びっくりするような改心をするんだな。
まさに急転直下。
現実の人生も、あんな風だったらいいわぁ(笑)。


こんな話でも、
川口浩様のお父さん・川口松太郎さん原作だから許しちゃう(馬鹿~)。


そして浩様のお母さんの三益愛子さんが出てくるたびに、
自分の姑さんが出ているような気分になって、
この人と仲良くしたいな、と思ってしまう(もっと馬鹿~)。
野添ひとみさんの本に、
浩様と野添さんが喧嘩した時、
三益さんに叱られたというくだりがあった事を
思い出しながら観る。


そうそう、
忘れちゃいけないのが、
若尾さんの柔道着姿。
まだ若い、可憐な若尾さんの柔道着って、
なんともミスマッチで、可愛くて。


さらに、彼女は道場で、
菅原謙二と柔道して、
何度も畳に叩きつけられるのよ。
今なら、何かのプレイ?って言われそう(笑)。
柔道が得意って設定だけど、
どう見ても未経験な感じで、
人気女優を相手に、菅原謙二も気を使っただろうなぁ、と、
勝手に心中察したりして(笑)。


評価 ★★★☆☆

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「ホット・ロック」 [映画]

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〔1971年/アメリカ〕


4年の刑期を終え、
出所してきたロバート・レッドフォードは、
早速、妹の夫・ジョージ・シーガルと組んで、
新しい「仕事」に着手する。


それは博物館に展示してある、
大きなダイヤモンド、「サファリストーン」を盗み出す事。
依頼人はアフリカ大使・モーゼス・ガン。
ガンの主張によれば、
「サファリストーン」は元々アフリカの宝で、
アメリカにあるのはおかしい、という理屈なのだ。


レッドフォードとシーガルは、
爆弾作りの名人・ポール・サンドと、
運転技術抜群のロン・リーブマンを仲間に引き入れ、
行動開始。


なんとかダイヤを盗み出すが、
逃げる途中、サンドが捕まってしまい、
彼が持っていたダイヤを飲み込んでしまう。


収監されたサンドを、
脱獄させる3人。
しかしサンドは、
ダイヤは最初に拘留された留置場に隠したと言う。


レッドフォードたちは、
留置場を襲撃するが・・・。





特に期待もなく、
ロバート・レッドフォードが出ているという理由だけで
観たのだけれど、
軽快で面白い犯罪映画だった。
こういう事があるから、映画はやめられない。


一つのダイヤを巡って、
男たちが右往左往。
やっと「見つけた!」と思えば、
そこにはなく、
また新たなステージへ(笑)。


場面は大きく分けて5つ。
博物館、
刑務所、
留置場、
廃屋、
銀行。


そのどれもが緊張感とコミカルな感じを合わせながら、
観る者を惹きつけて、
飽きさせない。
犯罪者のお話なのに、
本気で応援したくなる。


軽妙すぎて、
「あんな方法で脱獄できるなら、皆してる(笑)」と
思わないでもないけれど、
それはまぁ、ご愛嬌。


仲間の裏切りといった、
どうでもいい場面がないから、
安心して(?)犯罪だけを見守っていられるし、
イライラさせらる事もない。
女が絡んで、かき回される事もない。
(それ、重要(笑))


報酬もそれほど多くはなく、
それを4人で分けるのだから、
仕事に見合っていないとも思える。
私だったら、途中で抜けちゃいそう(笑)


タイトルが、ちょっと残念。
「ホット」も「ロック」も、
どっちも、映画に使われがちで、
少し経ったら、忘れるか、
他の映画と混同しそう。
こういう作品こそ、
印象に残る邦題を付ければいいのになぁ。


評価 ★★★★☆

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「女殺油地獄」 [映画]

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〔1992年/日本〕


大阪・天満町の油屋・河内屋の息子・与兵衛(堤真一)は、
手の付けられない放蕩者で、
周囲の者は困り果てていた。


特に、河内屋から暖簾分けされた、
同じく油屋の豊島屋の女房・お吉(樋口可南子)は、
与兵衛が赤ん坊の頃から面倒みてきている事もあって、
母のいない与兵衛に、母代りとして、
彼の行動を気にかけている。


与兵衛は、油屋の元締である、
小倉屋の一人娘・小菊(藤谷美和子)と出来上がっているのだが、
そんな事が小倉屋に知れたら、
河内屋は看板を下ろさねばならない。
お吉は、与兵衛に、小菊とはもう会わないと約束させる。


しかし、若い2人が簡単に別れられるはずもなく、
駆け落ちを画策するが、
結局失敗、
連れ戻された小菊は親が決めた男の元へ嫁いでゆく。


人妻になった小菊だが、
暇を見ては、与兵衛と逢引をするようになる。
それを知ったお吉は、小菊に注意するが、
小馬鹿にされたような態度を取られたことに腹を立て、
与兵衛と一線を越えてしまう・・・。





大好きな近松門左衛門原作の映画。


しかし、
ストーリーも、
登場人物の設定も、大幅に変えられているらしい。
そのせいなのか、
他の近松ものと比べて、
平凡な出来に感じた。


そもそも、お吉と与兵衛が男女の関係になってしまう事からして、
原作とは違うらしい。
それが分かって、
逆に少しホッとする。


だって、2人が関係する理由がなんだか希薄で、
唐突な感じが否めない。
一線を越える以前にも、
お吉は、自分の着物の胸元に、
与兵衛の手を取って触らせたりもしている。
利口な女将さんという設定なだけに、
その場面だけ、取って付けたようだ。


与兵衛も与兵衛だ。
あれだけ小菊に入れあげ、
駆け落ち騒ぎまで起こしているのに、
お吉と関係した途端、
小菊の事なんかどっか行っちゃって、
お吉に、ストーカーのように付き纏う。
女なら誰でもよかったんかい!と言いたくなるわ(笑)。


そんな与兵衛を持て余すお吉も勝手。
そんな身近な男を誘惑すれば、
人々の口にのぼるのは時間の問題。
それくらいの事、
あの賢い女なら、
分からないはずはあるまい。


この作品は6度も映画化されているそうで、
一番最近のは、
今何かと話題の、
坂上忍氏が監督したらしい。


坂上氏のはともかくも、
もっと古い、
中村雁治郎版や、
志村喬版は、ぜひ観てみたいなぁ。
名画座でかかるのを待つしかないかな。


それからNHKのドラマにもなっていて、
与兵衛を演じるのは松田優作。
これはすぐにビデオが借りられそうだ。
映画版がないから、
とりあえず、これで我慢しようかな(笑)。
NHKだから、
原作に近いと期待して。


評価 ★★★☆☆

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「傷だらけの栄光」 [映画]

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〔1956年/アメリカ〕


スラム街で育ったロッキー・バルベラ(ポール・ニューマン)は、
札付きの不良で、
3度も少年院に入れられたが、その度に脱走、
母は心労のあまり、病気になる始末だった。


彼は大人になり、軍隊に入るが、
ここでも上官を殴って脱走、
軍刑務所送りとなる。


しかし、彼は自分の腕力の強さを知り、
また周囲の勧めもあって、
ボクシングへの道を進む事になる。


彼は自分にロッキー・グラジアノというリングネームを付け、
勝ちを重ね、有名になってゆく。
さらに、姉の友人・ノーマ(ピア・アンジェリ)と知り合い、結婚。
娘も生まれ、やっと落ち着くかに思えた。


ところが、昔の悪仲間から、
八百長試合を持ち込まれ、
それを断ると、彼の前科が暴露されてしまう。


落ち込むロッキーをノーマは励まし続け、
彼は世界選手権に出場、
チャンピオンに挑戦する・・・。





実在するボクサー・ロッキー・グラジアノの
生涯を描いた作品なのだそうだ。
ただ、もしこれがフィクションだとしても、
それはそれで、映画として面白い。


ロッキーの、何事にも物怖じしない様子が半端なくて、
不良とはいえ、感心してしまう(笑)。
特に軍隊での場面は驚くくらい。
軍隊では、上官の命令と規律が絶対であろうが、
彼はそれにさえ従おうとはしない。
「なんで俺が?」って感じで(笑)。
刑務所も駄目、軍隊も駄目なら、
一体彼はどこへ行けばいいんだと、こちらが心配してしまう。


けれど彼にも弱いものがある。
それは女(笑)。
ノーマと知り合った頃のロッキーは、
まともに彼女を目を合わせる事もできず、
その様子は可愛いくらい(笑)。
彼がどんなに不良でも、
女性絡みの犯罪の場面がないので、
不快にならずに観ていられるのかもしれない。


そして、ノーマと少しずつ打ち解け、
映画館でデートする場面で、
声をあげて笑ってしまった。


「愛してるるわ」とか「キスして」などの場面に、
「2時間あればっかり」と、席を立つロッキー。
その表情は怒っているわけではなく、
なんだか恥ずかしそうで。
彼は映画の中の男女問題も不得意らしい(笑)。
ノーマは、「観ていたかったのに」と不満そうだけど、
そりゃそうだよね、
途中まで観た映画を強制終了させられたら、
私だったらもっと怒るわ(笑)。


それから、ノーマがロッキーの練習風景を見に来る場面も爆笑。
ボクシングでの怪我を心配するノーマが来た途端、
ロッキーは、なんというか、
「馬鹿にしてるのか?」と言いたくなるような、
軽い打ち合いも見せる。
あぁ、上手く書けないのがもどかしい。
とくかくその場面は必見。


ラストの試合のシーンは、
やはり観ているこちらも力が入る。
本気で応援してしまう。
結果は書かないけれども。


これはポール・ニューマンの実質的なデビュー作で、
ジェームズ・ディーンが急逝したため、
役がまわってきたらしい。
それから、スティーブ・マックイーンが端役で出ているそうだけど、
気付かなかった。
今日、そこだけ確認してみようと思う。
「タワーリング・インフェルノ」で2トップとして出ていた2人だけど、
無名の頃から共演していたのね。
お互い成功できて良かった良かった。


評価 ★★★★☆

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「瀧の白糸」 [映画]

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〔1933年/日本〕


明治26年。
旅芸人一座の乗った乗り合い馬車が人力車に抜かれ、
乗客者たちから「遅い」と煽られた馭者の村越欣也(岡田時彦)は、
猛スピードで馬を走らせるが、
そのせいで馬車が壊れてしまう。


欣弥は馬車を捨て、
裸馬に一座の座長・瀧の白糸太夫(入江たか子)を乗せ、
金沢に送る。


瀧の白糸太夫は、水芸で人気の、
美しい看板スターだ。
金沢に着いた3日目の夜、
太夫が散歩に出ると、
橋の上で眠っている男がいる。
よく見ると、彼はあの日の馭者の欣弥ではないか。


欣弥は、馬車を壊した事で馭者の仕事を解雇されたと言う。
そして、自分は東京で法律の勉強をしたいが、
その為の金が無い、とも。
欣弥を好きになりかけていた太夫は、
自分が学費を出すから、
東京へ行けと欣弥に言う。
驚いた欣弥だったが、結局申し出を受ける事にする。


太夫の仕送りは、最初は実行できていたが、
欣弥の学校の終わりが近づいた頃、
苦しい状況になってくる。


思い余った太夫は、高利貸しの岩淵に金を借りに行くが、
岩淵が、別の旅芸人一座の男と組んで、
太夫を騙した事を知り、
岩淵を刺し殺してしまう・・・。





昨日は若尾文子さんの「滝の白糸」のレビューを書いたけれど、
こちらは若尾さん版より23年も古い、
入江たか子さんが主演の作品。


味わいの違いを楽しみたくて、
連続して観てみたけれど、
比べてみると、
若尾さん版は、アイドル映画だったんだなぁと分かる。


出演時の年齢は2人共、同じくらいのようだけれど、
若尾さんは、おぼこな娘のような描かれ方をしているように感じる。
たとえば、太夫が欣弥に学資を出すと申し出た夜、
若尾さん版の欣弥は、
彼女の指一本触れずに、すぐ東京に旅立つけれども、
入江さん版では、一夜を共にする、といったように。


1933年の映画で、弁士さんが、
「2人はその夜、結ばれたのであります」などと、
大真面目に語っているがなんだか面白くて、
でも、その流れの方が自然だなと感じる。
翌朝、欣弥に寄り添うように人力車に乗っている太夫の表情は、
とても幸せそうで、分かるなぁとも思ったり。


太夫が、金に頓着しない女だというもの分かる。
彼女は欣弥に送るつもりの金を、
座員の女の母が危篤だと聞かされ、
渡してやったり、
駆け落ちするという男女にカンパしてやったりと、
他人が困っていると放っておけない性格なんだな。
そもそも、いくら惚れたとはいえ、
2度しか会った事のない男の学費を出してやる事自体、
人がいいとも言えるけれども(笑)。


それにしても、昔の話って、高利貸しがよく出てくる(笑)。
それだけ困っていた人が多かったんだろうし、
あと、おそらく法律もそれほど厳しくなかったんでしょうね。
物語の悪役としては、
とてもいい職業だけれども(笑)。


今、とっても観たいのが、
京マチ子さん版の「瀧の白糸」。
あの妖艶な京さんは、
どんな太夫を演じるのだろう。


大映は、京さんの「瀧の白糸」のあと、
4年しか経ってしないのに、若尾さんでまた同じ映画と作るって、
なんでなんだろう。
昔のアイドルが通過した「伊豆の踊子」みたいなもの?
もちろん、それだけお話しが面白いという事なんだろうけど。


評価 ★★★★☆

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