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「滝の白糸」 [映画]

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〔1956年/日本〕


明治時代。
旅芸人一座、「滝の白糸」は、
水芸で人気を博し、
特に座長の滝の白糸太夫(若尾文子)の人気は絶大だった。


ある日、一座は、
乗合馬車に乗り、金沢へ向かうが、
他の旅芸人一座から嫌がらせを受け、
馬車が壊れてしまう。
早く行かなければと焦る太夫に、
馭者の村越欣弥(菅原謙二)は、
裸馬に太夫を乗せ、猛スピードで走り出し金沢に送った。


それ以来、なぜか太夫は心ここにあらずといった
様子を見せるようになった。
彼女は欣弥に恋してしまったのだ。
3日後の夜、彼女が川のほとりを散歩していると、
小舟で眠っている男に気付いた。
それは欣弥で、太夫の胸は高鳴る。


欣弥は、この間の一件で馬車屋の勤めを解雇されたと言う。
「東京に出て法律の勉強がしたいが金がない」と
聞かされた太夫は、
「自分が仕送りをするから、思う存分勉強してください」と申し出、
欣弥は驚くが、それを受け入れる。


その日から、2人の遠距離恋愛が始まった。
仕送りをする太夫の期待に応え、
欣弥は真面目によく勉強し、
法律家になれる日が目前に近付く。


しかし、昨今の不景気から、
一座の経済状態が思わしくなくなり、
太夫は、スポンサーの上林から金を借りる。
ところが、以前から太夫を狙っていた上林は、
太夫を手籠めにしようと襲い掛かり、
逃げようとした太夫は彼を刺殺してしまう・・・。





泉鏡花原作で、
6回も映画化されているという「滝の白糸」。


たった一度、一緒に馬に乗ったというだけで、
相手の男気に惚れ、
学費を出してやると申し出る滝の白糸太夫。


恋ってそういうものなんだろう。
相手が金に困っていたなら、
私が何とかするわ!って意気込み。
欣弥は不思議がって
なぜそこまでしてくれるのかと言うけれど、
察してほしいところだわ(笑)。


そんな恋する女を演じる若尾さんが
可愛くて。
彼女は旅芸人一座のスターだけれど、
とっても純情な所があって、
欣弥の事を考えてぼんやりしてしまうし、
誰かが雑踏の中で欣弥を見掛けたと言うと、
慌てて外へ飛び出すような、
一途な様子を見せる。


欣弥が太夫からもらったお金で、
遊び呆ける可能性もある・・・
とは、映画を観ていて全く不安はなかった。


彼はどう見ても真面目で、
一点の曇りもない男に感じられる。
実際、下宿先で女の子に誘惑される事もあるんだけど、
太夫を思い、きっぱり撥ね退ける。
なんとも理想的な男。


そして起こる事件。


上林を殺してしまった太夫は、
裁判を受ける事になるんだけど、
その時、検事を務めるのが偶然にも欣弥で。


しかし、昔は分からないけど、
現代では、そんな事ってあるんだろうか。
被告の金で学校に行っていた検事が、
その被告を法廷で裁くなんて。


それから、家に帰って、
調べてビックリ。
映画は原作と正反対のラスト。
泉鏡花もあの世でビックリだ(笑)。
映画化された他の作品はどうなんだろう。


評価 ★★★☆☆

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