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「二十一歳の父」 [映画]

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〔1961年/日本〕


21歳の大学生・山本圭は、
裕福な家に育ったが、
東大卒で日銀に勤める兄と、
幼い頃から比較されてきた事に嫌気が差し、
家を出る。


父・山形勲が山本のアパートを訪ねると、
そこに若い全盲の女・倍賞千恵子がいて驚く。
なんと山本は、もう既に倍賞と籍を入れ、
夫婦として暮らしているのだと言う。


そんな中、母・風見章子が末期がんで、
余命いくばくもない事が分かる。
山本と倍賞は、風見が亡くなるまで実家に泊まり込み、
看病する。
特に倍賞はマッサージ師な為、
風見に施術し、喜ばれる。


倍賞に妊娠の兆しがみられ、
風見が亡くなったあと、女の子を出産する。
貧しい夫婦は、
生まれた子供に希望を託すのだが・・・。





曽野綾子さん原作小説の映画化。
曽野さんらしいお話だと思う。


センセーショナルな雰囲気を煽るようなタイトルだけど、
主人公の山本圭が、
「二十一歳の父」として動く場面は一箇所しかない。


それは、彼が就職試験の会場に、
生まれた子供を連れてゆく場面。
ただ、いくら古い時代の話とはいえ、
そのような場に子供を連れてゆく人とは非常識だろうと思うし、
もしいたら、めっちゃ好奇の目で見られると思うんだけど。


原作は分からないけど、
この映画に関しては、
若い父親の話というより、
一人の青年の人生の物語というように見受けられる。


山本は、人生に諦念しているように見える。
まだ二十一歳だというのに。
愛する女を得、
子供も生まれて、これからだというのに、
どこか淋しげだ。


それは彼が育ってきた家庭と過程にあるのだろうけれど、
映画で観る限り、彼の両親は、
とても理解があって素敵に見える。


父・山形勲は紳士で、
決して声を荒げず、山本にも倍賞千恵子にも、
それなりの節度を持って接してくれている。
母・風見章子だって、めっちゃ穏やかで優しい。


一番の問題は、兄なんだろうな。
弟の嫁の家柄がどうのとか、
全盲だから親戚に会わせられないとか、
親より口を出してくる。
きっと山本は、幼い頃から、
この兄から重圧を受けてきたんだろうと察する。


人の性格って、
親はもちろんだけど、
兄弟関係によっても、
大きく変わるものなんだとあらためて思う。


途中で「えっ!?」と驚く事件が起こり、
それがまた、山本の運命を決定づける。
詳しくは書かないけれども。


評価 ★★★☆☆

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