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「娘と私」 [映画]

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〔1962年/日本〕


大正14年。
売れない作家・岩谷士郎(山村聡)は、
フランスで結婚、
その後、妻・エレーヌ(フランソワーズ・モレシャン)は女の子を出産、
士郎は麻理と命名する。


エレーヌと麻理を伴って帰国した一家。
麻理はすくすくと育つが、
士郎の小説は中々売れず、生活は苦しい。
さらにエレーヌが重い病に罹ってしまい、
フランスで療養するため、
1人帰国する。


男手一つで麻理を抱え、途方に暮れた士郎は、
叔母の家に世話になる事に決め、移り住む。
麻理が近所の子どもたちから、
「合いの子」とはやされ、喧嘩ばかりしていると知った士郎は、
彼女を寄宿学校に入れる事を決める。


ある日、フランスから便りが届いた。
それはエレーヌの死を報せるもので、
士郎は悲しみにくれる。
また、麻理が肺炎に罹り、
やはり娘は手元に置いた方がいいと判断した士郎は、
寄宿学校を辞めさせる。


その後、周囲のすすめで、
何度か見合いした士郎は、
千鶴子(原節子)と気が合い、結婚を決める。


麻理も千鶴子によく懐き、
全てが上手くいくかに思えたが、
戦争の影が徐々にせまりつつあり・・・。




たしか中学時代かと思うのだけれど、
自宅にめちゃくちゃ古い本、
獅子文六の「娘と私」があり、
なんとなく手に取り、
読んだ記憶がある。
細部は忘れてしまったけれど、
フランス人とのハーフの娘を育てる作家のお話しとだけ覚えている。
映画化されているのは最近知って、
観たいと思っていたので、
願いが叶って嬉しい。


映画の方はといえば、
タイトルは「娘と私」だけれど、
娘の話というより、
岩谷士郎という作家の人生を描いた、
小さな大河ドラマといった風に受け取れた。
この岩谷は、獅子文六自身と考えていいのだろうと思う。


まず、こんな古い時代に、
日本人の売れない作家が、
フランスで、フランス人の娘と結婚した事に驚く(笑)。
妻・エレーヌは校長先生の娘だというから、
そう育ちも悪くないであろうし、
どんなきっかけで知り合ったのか、
東洋の男との結婚に、
周囲の反対はなかったのか、など、
つまらない事が気になる馬鹿な私(笑)。


エレーヌが亡くなったあと、
麻理を寄宿学校に入れると決めた士郎に、
「そりゃないよ」とちょっと思う。
色々あるだろうけれど、
やっぱり、父親一人では大変なのが一番の理由ではないかと、
そんな風に感じてしまう。


その後、士郎は再婚するわけだけど、
原節子演じる千鶴子とのやり取りが、
映画では結構長い。


千鶴子は一所懸命に、
士郎と麻理に尽くすのだけれど、
気を使い過ぎて、
士郎にウザがられて、
最初はしっくりいかない。
やっぱり、この士郎という人は、
何事にもドライなのだと再確認。
妻が寝ないで自分を待っているなんてのが、
耐えられないらしい。


夫婦の、少し生々しい会話もある。
こんな、家族を描いた映画で、
そこだけ浮き上がって感じられる場面。
やっぱりこれは、「娘と私」じゃないだろう(笑)。


それでも、時間をかけて、
夫婦らしく、家族らしくなってゆく士郎と千鶴子と麻理。
大人になった麻理を演じる星由里子が、とっても綺麗。


ただ、
戦前に、幸せに暮らす人々のお話しを観る度に、
「この幸せも、戦争で一度リセットされてしまうんだよなぁ」と
必ず考えてしまう。
戦争はこの映画の主題はではないけれど、
本当に馬鹿馬鹿しく、くだらなくて、
いい事なんて一つもないと実感する。
この先、永遠に、
日本に戦争が起こりませんようにと願うばかり。


評価 ★★★☆☆

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