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「ぼくたちの家族」 [映画]

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〔2014年/日本〕


平凡な専業主婦・原田美枝子は、
最近自分が物忘れが激しい事に気付く。


長男・妻夫木聡の嫁が妊娠し、
嫁の両親を交えての会食の席で、
突然、トンチンカンな事を口走る原田。
彼女の異常に気付いた夫・長塚京三と妻夫木は、
翌日病院に連れてゆく。


検査の結果、
原田の脳には大きな腫瘍ができており、
余命1週間と知らされる。


大学生で一人暮らしの次男・池松壮亮も駆け付け、
今後の事を話し合うが、
真面目な妻夫木と、
どこか軽い池松の会話は、
なかなか噛み合わない。


さらに、原田は、
池松は認識できるのに、
妻夫木を知らない人だと言い出し、
彼は衝撃を受ける・・・。





重く、
胃のあたりにズシッとくる。
原田美枝子の病気の宣告より、
八方塞な家族の有り方に。


原田の入院で、
家の中を調べていた池松壮亮は、
原田が金銭的にとてもだらしがない事を知る。
うーん・・・人にはそれぞれ事情があるだろうけど、
一家の主婦がそんな状態って・・・。
どうも私はこういう人が苦手で。


妻夫木聡は、中学時代引きこもりの過去があるという事で、
その設定が、いい意味でも悪い意味でも、
映画を重くするのに、
大変に効いている。


母の余命宣告という衝撃に、
そんな繊細な彼が耐えられるのかと、
観ているこちらが不安になってしまうし、
実際、池松壮亮も、
その不安を口にする場面がある。


妻夫木の妻は、
典型的な現代の若い嫁。
夫の実家の金のだらしなさを、
強い言葉で責める場面でも、
ハラハラのし通し。
そのキツい物言いに、妻夫木が倒れちゃいそうで。


そんな妻夫木と正反対な、
何とも軽いノリの池松。
けれど、その軽さが救いなんだな。


もし私の身内に万が一の事があったら、
何でも重く受け止めてしまう妻夫木より、
池松を見習いたい、と思うくらいに。
池松は、原田の口から、
知らない男の名前が出てきても、
「誰それ?元彼?」と笑ってしまえるような所があって。


妻夫木も、「お前の性格が羨ましい」みたいな事を言う。
長男と次男の違いで、
仕方ない事なんだろうけど。


でも、妻夫木も、昔の弱い彼じゃなかった。
「さすが長男」といった感じで、
池松に指示を出しながら、
原田の延命の為に動き出す。


さらに彼は、父が決断できずにいた事を、
さっと決めてやる。
結局、一番不甲斐ないのは父親。
1人では何も決められない様子に、
こちらのストレスが溜まったわ。


評価 ★★★☆☆

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「オー!ファーザー」 [映画]

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〔2014年/日本〕


大学教授の佐野史郎
体育教師の宮川大輔
元ホストの村上淳
ギャンブラーの河原雅彦


以上4人は全員、
高校生・岡田将生の父である。


岡田の母が岡田を妊娠した時、
4人のうちの、誰に子供か分からず、
4人も自分が父親だと言い張って譲らなかったため、
今でも6人で暮らしているのだ。


ある日、岡田はゲームセンターで、
床に置かれた鞄がすり替えられる場を目撃してしまう。
これは何かありそうだ。
鞄も持った男を追いかける岡田。


さらには、
街の市長選、
不登校の友人、
怪しげなバイトに寝坊し、
ヤバい立場になった友人、
町外れで発見された心中遺体など、
様々な出来事が一つの線で繋がってゆく・・・。





伊坂幸太郎さんの小説の映画化。


1人の高校生に父親が4人という、
まぁ、普通に考えたら有り得ない設定。


観る前は、4人にはそれぞれの立場があるんだと
思っていたけれど、
(実の父、育ての父、などのような)
そうではなく、
4人は全くの対等の立場。


女が妊娠して逃げ出す男の話はよくあるけど、
自分が父親だと譲らず、
別れずに生活するなんて、
どんだけ魅力的な女なんだと、
羨ましく思いながら観る。
(そこかよ!(笑))。


しっかし、そう広くもないリビングに、
もっさいおっさんが4人もひしめき合ってる絵は、
そう美しいものじゃなかったな(笑)。
たまにならいいけど、
毎日ああじゃ、ウザいでしょ。


って、この映画は、
そんな家族の日常を描いたものではなく、
一応、サスペンス。
映画の中の、あらゆる出来事が伏線となっていて、
後で繋がるという仕組み。


一番好きなのは、
ある事情から、佐野史郎がテレビのクイズ番組に
出る場面。
他の3人の父が応援団として来ていて、
カメラに向かってある事をするんだな。
ちょっと笑える。


岡田将生くんが美しくて、
目の保養になる。
佐野さんが「徹子の部屋」で、
「岡田くんは本当にイケメンなのに、
 自分をイケメンと思っていなさそうなのが凄い」と
言っておられた。


なるほど、そっか、
私が感じる彼の魅力ってそこなのね。
カッコいいのに、スカしていないその様子。
ちょっと自信なさげな、半笑いな笑顔。
もちろん、彼の私生活までは知らないから、
イメージだけなんだけど。


評価 ★★★☆☆

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「青天の霹靂」 [映画]

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〔2014年/日本〕


マジックバーで働く、マジシャン轟晴夫(大泉洋)は、
もうとうに人生を捨てたような男。
母は、自分が生まれてすぐ、
父・正太郎(劇団ひとり)に愛想を尽かして出て行ったし、
その父とは、高校卒業以来会っていない。


ある日、警察から父が死んだとの連絡が入る。
父の骨壺を抱えた晴夫は、
父が生前住んでいたという河原の段ボールハウス行ってみる。
天涯孤独になった彼は、
生きる意味も見い出せず、その場で涙する。


すると、どうだろう。
天からの強い稲光が晴夫に当たり、
なぜか彼は、40年前の浅草にタイムスリップしてしてしまう。


浅草の演芸場で、
支配人(風間杜夫)にマジックを披露した晴夫は採用され、
助手に花村悦子(柴咲コウ)という女が付けられ舞台に立つ。
そして、同じ演芸場で働くマジシャンの男に会い、仰天する。
なんとそれは、40年前の父だったのだ。


正太郎と悦子は同棲しており、
悦子は妊娠しているという。
「つまり、悦子の腹の子は俺!?」
そう気付いた晴夫は、
自分を捨てて行った母と複雑な思いで接する。


悦子の妊娠により、
晴夫と正太郎がコンビでマジック漫才を始めた所、
それが大受け。
浅草で彼らの名前を知らない者はいなくなる。


悦子はもうすぐ出産を迎える。
そんな中、晴夫は、
母がいなくなった本当の理由を知る・・・。





劇団ひとり氏の原作小説を、
ご本人が監督し、
出演までしたという本作。


思っていたよりずっと良かった。
何より、無駄な場面が一つもなく、
96分という、短い時間に
描きたい部分だけをきっちり押さえている所に
なかなかの才能を感じる。


先日、ひとり氏が、
「徹子の部屋」でこの映画の宣伝をした際、
「96分という上映時間にはとても拘りがあった。
 なぜなら、自分はトイレがとても近く、
 これ以上の上映時間は苦痛だから」と言っておられた。


これは私も含め「ありがたい」と思う方も多い気がする。
もしかしたら、ひとり氏ご自身の性格も、
あれやこれやと欲張らない、
スッキリした方なのかなと思ったりもする。
彼の事はよく知らないし、
今まで、好きとも嫌いとも思った事がなかったけれど、
ちょっと好感を持ってしまった。


大泉洋演じる、売れないマジシャン・晴夫が過去へ行き、
まだ若い、自分の父と母に会う・・・
ちょっと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」と設定は似ているけれど、
まず、なぜ彼の頭の上に雷が落ちてきたのか、などの、
細かい説明は一つもない。
「とにかく落ちてきたんだよ、文句あるか」ってなもんである(笑)。


今まで一度も会った事のない母が目の前に・・・
本来なら深い感慨を覚える所であろうが、
晴夫の心は、反発でいっぱい。
母が父の生活態度を注意するのを見て、
「お前こそ、子供を捨てたじゃねーか、エラソーにするな」、とつぶやいたりする。


この母を演じる柴咲コウが素晴らしい。
美しく、強く、そして儚げで、
とても子供を捨てるような女とは思えない。
お腹の子供を大変に慈しんでいる様子が伝わってきて、
泣けてしまう。
母と息子の物語っていい。


そして分かる、母がいない本当の理由。
「もう、お父さんたら、息子にちゃんと説明してよ」
と言いたくなるけれど、
それを言わなかったのが、
父の思いやりであり、
また、父の適当さでもある(笑)。
さらには、父も、妻がいない現実を受け入れたくなかったのかもしれない。


母がこのまま出産すると、
1つの世界に2人の晴夫?
そこはどう折り合いをつけるのか、と、
心配していたけれど、
その場面も大変に上手い。
手堅くまとめてある。


晴夫と正太郎の、
舞台でのマジック漫才もなかなか楽しい。
あんなコンビが本当にいたら、
そこそこ笑ってしまいそう。


未来から来た晴夫は、
「これからはテレビの時代だ」と言い、
2人でオーディションを受ける。
浅草から出てきた2人組という話から、
北野武氏を連想してしまう。


評価 ★★★★☆

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◆浅水湾(リパルスベイ)の月◆ [本]


浅水湾(リパルスベイ)の月 (講談社文庫)

浅水湾(リパルスベイ)の月 (講談社文庫)

  • 作者: 森 瑶子
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1990/04
  • メディア: 文庫


森瑤子さんの小説の中でも、
特別に好きな「浅水湾(リパルスベイ)の月」。
何度も読み返して、本はもうボロボロ。


中国の貧民窟の叔母の家で暮らす、
13歳の少女・ロレッタ崔。
彼女は中国人とイギリス人の混血で、
誰もが驚嘆する美しさ。


彼女は、イギリス人・G.B.ムーアに「買われ」、
香港の彼の家に住み込む。
メイドとして、
いや、実は彼の慰み者として。


次の章は、
香港の“ペニンシュラホテル”のロビーに、
毎日やって来る謎の女・モニク李が主人公。


何の関係もなさそうなロレッタとモニクが、
章のラストで交差する。
涙が出る。


凄い、凄い本だ。
もし私が小説家だったら、
たった1つでもこんな本が書けた事に、
誇りに思ってしまうかもしれないと感じるくらいに。


私がここまでこの本に心惹かれる理由は、
おそらく、
男女の部分より、
中国や香港の描写がたまらなく好きだからだと思う。


何度か書いているけれど、
私は中国の貧民窟のような場所に、
なぜか強く強く心惹かれてしまう。
決して住みたいなんて思ってるわけじゃないのに。
前世は、
極貧生活をする中国人女だったのかもしれない(笑)。


映画化するとしたら、
ロレッタの役は、
昔なら宮沢りえ、
今なら沢尻エリカあたりが適当かと思う。
もちろん、セリフは全編英語で。

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「マッド・シティ」 [映画]

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〔1997年/アメリカ〕


ダスティン・ホフマンは、
元々はネットワークテレビ局の敏腕記者であったが、
アンカーマンを怒らせたせいで、
今は地方局に左遷されている。


ある日彼は、博物館へやる気の出ない取材に行くが、
トイレに入っている間に、
ライフルを持った男・ジョン・トラボルタが
押し入って来る場に遭遇する。


トラボルタは博物館の警備員だったが、
人員削減で解雇となった事が気に入らず、
館長に再雇用を頼みに来たのだ。


建物内には、小学生の団体がまだ残っており、
さらに、誤って引き金を引いたライフルの弾が、
運悪く、元同僚の警備員の腹に当たってしまうという、
最悪の事態となる。


ホフマンは、電話と通信機で、
トラボルタに隠れて現場の実況を始め、
テレビを観ていた市民や他のマスコミが、
博物館に大挙押し寄せる事態となる。


トラボルタに見つかってしまったホフマンは、
彼に独占インタビューを行い・・・。





シリアスなんだけど、ブラックな笑いが所々に見られる、
社会派ドラマ。
おそらく、この映画は、
ニュースで報道されている事の殆どは、
マスコミの操作され、
事実はどうにでも捻じ曲げられている、
良くも悪くも、
これが自分たちの生きている世界だ、と
言いたいのかなぁと思う。


ジョン・トラボルタは、
普段は真面目な男で、
家族を養うという責任感から、
自分の再雇用を頼みに来ただけ。
たしかに、単純で軽率な面は大いにあるけれども、
それは性格だから仕方あるまい。


そんなトラボルタを独占で取材するダスティン・ホフマンが、
私には、良い人なのか、ただの野心で動いているのかが、
よく分からなかった。


ホフマンはトラボルタに、
様々なアドバイスをする。
「人質を2人解放するなら、白人と黒人にしろ。
 白人主義者だと思われたら、お前が損だ」などと。


一見、彼を思い遣っての事のように見えるけれど、
本気で事件を解決したいなら、
何よりも投降を勧めるんじゃないのかなぁ。
投降を拒否するなら、
自分は残ってもいいから、せめて子供たち全員を解放しろ、とか。


まぁ、その子供たちも、
怯えている様子は殆どなく、
状況を楽しんでいる。
テレビで博物館の外の様子が映ると、
「うちのママ来てるかな♪」と、
みんなではしゃいだりして、
映画を観ているこちらは笑ってしまう。


他のテレビ局が、
トラボルタの家の前で、
彼の親友だという男を取材するのだけれど、
実はその男は、
トラボルタとは一面識もない奴で。
この映画を観た翌日、
何かの事件で関係者がインタビューされている様子をテレビで見た時、
「これ本物か?」と本気で思っちゃったわ(笑)。


これを真面目に見て、
「ニュースをそのまま鵜呑みにしてはいけない」云々と
書くこともできるけど、
私は、人の事は言えないかなぁ。


世の中が騒ぐような出来事が起こった時、
(最近で言えば、細胞問題、薬物問題など)
その報道内容が真実かそうでないかなんて実はどうでもよくて、
友人や職場の会話で、
お互いに仕入れた小ネタを交換しあって、
盛り上がったりすることがあるもの。


性格悪いと言われれば、
それまでなんだけど。


評価 ★★★☆☆

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